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4章 最終防衛戦門
2話 賢者の名は
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「はっ!はっはっ!!!」
「うん・・・これは酷いね。体が毒と呪いで侵食されてる、もってあと5分って所かな?」
「えぇっ!!なななんとかして下さい!ヒスイが死んじゃうのは嫌だ!それだけは絶対に!!」
「私からもどうか。今の私の生きがいはヒスイ様のみ!彼がいなくなったら私死んでしまいます!」
「分かった、分かった。ちょっと待ってなさい。今治してあげるから・・・と言っても、まず空気が良くないね。新鮮な空気をすって、毒と呪いを浄化しようと頑張ってるのに、ここら辺の空気自体が汚染されてるから過呼吸になっちゃってる」
<災害>は死んだが、毒呪液はまだそこらじゅうに残っている。その毒呪液が気化し、空気を害あるものへと変え、呼吸を邪魔をしていたのだ。
「まずは掃除から・・・『浄化魔術』」
紳士な賢者の手の平から放たれた爽やかで清らかな空気は、宙を舞い、草原の大気の清浄だけでなく、草原に飛び散った毒呪液まで洗浄。生命に害しかない液体を、透き通るような純水へと変身させた。
証明するように、戦士達の咳と吐血がピタリと止まった。シャープ達の肺にも爽やかかつ新鮮な空気が入ってくる。
「すぅーー・・・空気ってこんなに美味しかったんだ!」
「改めて空気に感謝するわ・・・勿論、賢者さん。アンタもね」
「それはどうも・・・さて、肝心の君はどうかな?」
環境を清浄化したのが功を奏したのだろう。先程まで酷かった翡翠の過呼吸は普通の呼吸へと変化。表情も穏やかとなった。
「良し!後は解毒魔術を使いたい所だけど・・・使わない方が良いかな?」
「なっ!?どうしてですか!まだ、ヒスイ様の体には毒と呪いが残っているんですよ!微小とはいえ、健康の為に排除すべきです!」
「その通りだね。しかし、それでは彼・・・ヒスイ君の為にならないんじゃないかな?」
「どういう事?十分ヒスイの為じゃん!」
「まあまあ、落ち着いて聞きなさい。免疫は知っているね?体を害あるモノから守る肉体のシステム。免疫は、免疫細胞が経験を積む事によって生まれる」
「成程・・・死なない程度の毒と呪いはわざと残しておいて、免疫を育てるって魂胆ね!」
「その通りだね。流石は、魔族の王女様だね。しばらく彼は疲労で起き上がれないだろうから、誰か運んではくれないかな?他の残る怪我人はわしが何とかしておくから」
「・・・良いのでしょうか?」
シュエリが今、行った確認は、『そんな大変な仕事を関係の無い貴方に頼んでも良いのですか?』という意味と、『関係の無い貴方を信じてもよろしいのですか?』という2つの意味を含んでいる。
全く素性の知らない者の善意はどうしてもまず最初に疑ってしまう。戦いが終わったタイミングも相まって、疑心はいつもより強め。
そんなシュエリの心情を察したのか、足を紳士な賢者によって再生されて動けるようになったシャイ団長が近づいて来て説明してくれた。
「彼は信用しても大丈夫です。私が保証します」
「シャイ団長。もう歩いても大丈夫なんです?」
「ええ、足が溶けていた以外は外傷などはございませんでしたので。話を戻させていただくと、彼はシャープ・フリップの言う通り、3人の賢者の1人。純粋なヒューマンでありながら、齢200を超える大長寿の賢者リャオです」
「ご説明ありがとうございます、シャイ団長。前にお会いしたのはいつでしたかね?」
「20年前だな。相変わらず見た目に気を遣ってるな」
「老耄も、少しは若いのに見栄を張りたいんです」
ここ2日間の間、長寿の人種エルフに囲まれていたからか、200歳と聞こえた。20歳の聞き間違えだろうか?
だとしたら、老けすぎだろ。僕と同い年でこんなに老けてるわけがないじゃないか!という事は本当にこの人は200歳。
「ち、長寿のコツは?」
「早寝早起き、運動、慈善活動かの?」
200歳を超えている割にはお茶目な人だ。賢者といえば、聡明かつ偉大で、人の身でありながら世界の真理に近づいた人で厳しそうなイメージがあったけど、割とそうでもないかもしれない。
「これは随分とやられたの・・・もっとわしに力があればあんな化け物になる前に仕留めていたんじゃが・・・」
「もう済んだ事だ。お前が世界に十分貢献してる事は知っている」
「そう言ってもらえると自尊心が保たれます。何かわしにできる事はありますかな?」
「ヒスイ王子の治療・・・は他の魔術師に任せるので、リャオはこの荒れてしまった土地と、弱ってしまった魔物達の元気を取り戻してはくれないか?」
「そのぐらいの事でしたらお安いご用で。3日もあればすぐに治せますよ」
「そうか・・・感謝する」
「いえいえ、お気になさらず」
ナチュレ軍vs滅国の魔物カースドラゴンスライム、通称〈災害〉。
勝者ナチュレ軍。被害、死者1258人、重軽傷者2547人。
戦いに消費された時間。たったの20分。
多くの殉死者だけでなく、国土にも甚大な被害が出たが、この戦いにより、地に落ちていたナチュレの評価は大きく上昇したという。
世界全体だけでなく、ナチュレの名誉にも大いに意味のある戦いとなった。
「うん・・・これは酷いね。体が毒と呪いで侵食されてる、もってあと5分って所かな?」
「えぇっ!!なななんとかして下さい!ヒスイが死んじゃうのは嫌だ!それだけは絶対に!!」
「私からもどうか。今の私の生きがいはヒスイ様のみ!彼がいなくなったら私死んでしまいます!」
「分かった、分かった。ちょっと待ってなさい。今治してあげるから・・・と言っても、まず空気が良くないね。新鮮な空気をすって、毒と呪いを浄化しようと頑張ってるのに、ここら辺の空気自体が汚染されてるから過呼吸になっちゃってる」
<災害>は死んだが、毒呪液はまだそこらじゅうに残っている。その毒呪液が気化し、空気を害あるものへと変え、呼吸を邪魔をしていたのだ。
「まずは掃除から・・・『浄化魔術』」
紳士な賢者の手の平から放たれた爽やかで清らかな空気は、宙を舞い、草原の大気の清浄だけでなく、草原に飛び散った毒呪液まで洗浄。生命に害しかない液体を、透き通るような純水へと変身させた。
証明するように、戦士達の咳と吐血がピタリと止まった。シャープ達の肺にも爽やかかつ新鮮な空気が入ってくる。
「すぅーー・・・空気ってこんなに美味しかったんだ!」
「改めて空気に感謝するわ・・・勿論、賢者さん。アンタもね」
「それはどうも・・・さて、肝心の君はどうかな?」
環境を清浄化したのが功を奏したのだろう。先程まで酷かった翡翠の過呼吸は普通の呼吸へと変化。表情も穏やかとなった。
「良し!後は解毒魔術を使いたい所だけど・・・使わない方が良いかな?」
「なっ!?どうしてですか!まだ、ヒスイ様の体には毒と呪いが残っているんですよ!微小とはいえ、健康の為に排除すべきです!」
「その通りだね。しかし、それでは彼・・・ヒスイ君の為にならないんじゃないかな?」
「どういう事?十分ヒスイの為じゃん!」
「まあまあ、落ち着いて聞きなさい。免疫は知っているね?体を害あるモノから守る肉体のシステム。免疫は、免疫細胞が経験を積む事によって生まれる」
「成程・・・死なない程度の毒と呪いはわざと残しておいて、免疫を育てるって魂胆ね!」
「その通りだね。流石は、魔族の王女様だね。しばらく彼は疲労で起き上がれないだろうから、誰か運んではくれないかな?他の残る怪我人はわしが何とかしておくから」
「・・・良いのでしょうか?」
シュエリが今、行った確認は、『そんな大変な仕事を関係の無い貴方に頼んでも良いのですか?』という意味と、『関係の無い貴方を信じてもよろしいのですか?』という2つの意味を含んでいる。
全く素性の知らない者の善意はどうしてもまず最初に疑ってしまう。戦いが終わったタイミングも相まって、疑心はいつもより強め。
そんなシュエリの心情を察したのか、足を紳士な賢者によって再生されて動けるようになったシャイ団長が近づいて来て説明してくれた。
「彼は信用しても大丈夫です。私が保証します」
「シャイ団長。もう歩いても大丈夫なんです?」
「ええ、足が溶けていた以外は外傷などはございませんでしたので。話を戻させていただくと、彼はシャープ・フリップの言う通り、3人の賢者の1人。純粋なヒューマンでありながら、齢200を超える大長寿の賢者リャオです」
「ご説明ありがとうございます、シャイ団長。前にお会いしたのはいつでしたかね?」
「20年前だな。相変わらず見た目に気を遣ってるな」
「老耄も、少しは若いのに見栄を張りたいんです」
ここ2日間の間、長寿の人種エルフに囲まれていたからか、200歳と聞こえた。20歳の聞き間違えだろうか?
だとしたら、老けすぎだろ。僕と同い年でこんなに老けてるわけがないじゃないか!という事は本当にこの人は200歳。
「ち、長寿のコツは?」
「早寝早起き、運動、慈善活動かの?」
200歳を超えている割にはお茶目な人だ。賢者といえば、聡明かつ偉大で、人の身でありながら世界の真理に近づいた人で厳しそうなイメージがあったけど、割とそうでもないかもしれない。
「これは随分とやられたの・・・もっとわしに力があればあんな化け物になる前に仕留めていたんじゃが・・・」
「もう済んだ事だ。お前が世界に十分貢献してる事は知っている」
「そう言ってもらえると自尊心が保たれます。何かわしにできる事はありますかな?」
「ヒスイ王子の治療・・・は他の魔術師に任せるので、リャオはこの荒れてしまった土地と、弱ってしまった魔物達の元気を取り戻してはくれないか?」
「そのぐらいの事でしたらお安いご用で。3日もあればすぐに治せますよ」
「そうか・・・感謝する」
「いえいえ、お気になさらず」
ナチュレ軍vs滅国の魔物カースドラゴンスライム、通称〈災害〉。
勝者ナチュレ軍。被害、死者1258人、重軽傷者2547人。
戦いに消費された時間。たったの20分。
多くの殉死者だけでなく、国土にも甚大な被害が出たが、この戦いにより、地に落ちていたナチュレの評価は大きく上昇したという。
世界全体だけでなく、ナチュレの名誉にも大いに意味のある戦いとなった。
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