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一章 悲報、国存続に必須の巫女を召喚3日目で拉致ることに
19話 生き甲斐
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「兄、さん・・・?」
覚束ない足取りでフェイの妹が近づく。
「ねえ、兄さんは眠っているだけだよね?この赤黒い液体は、飛び散ったのが付着しているだけだよね?」
首を横に振り、否定する。フェイの服をはだけさせて、小さいくて深い傷口を彼女に見せる。そして、その傷の中には鏃が入っていた。
「何となくだけど、この鏃からはあんまりよくない気配を感じるんだ。この世界の住人である君なら分かるんじゃないかな?」
「・・・・・・呪いだと思い、ます」
思い返せば乗馬して俺を助けに来た時から様子がおかしかった。俺への返答が遅かったり、脱出した後も発言がネガティブ寄りだった。
「傷が癒えない呪い・・・目にかけられた呪いと同じモノがかけられていたんだと思います」
どうして気づかなかった?最初から様子がおかしかったというのに、成功の方に視線が行ってフェイをまるで見ようとしなかった。
いや、そもそも俺に何が出来た?武術しか取り柄のない俺が、フェイに刺さった呪いの鏃を知った所で何が出来たというんだ?
気づけていたら何かが変わっていたかもしれない。フェイは一命を取り留める事が出来たかもしれない。彼が死んだのは俺のせいだ。
「すまん、フェイ・・・俺が、もっとしっかりしていればこんな事には・・・」
「わたしのせいだ・・・わたしが巫女じゃなかったら、兄さんは死ななかった。わたしさえいなければ・・・」
フェイの妹の1人ごとを聞いて我に返る。フェイが死んでしまったのは俺のせいだ。しかし、罪悪感に押しつぶされている場合ではない。
フェイが死んでしまった今、やるべき事はただ1つ。フェイの妹をこの国から出さなければならない。
俺が捕まれば、フェイの妹はまたあの地下教会の秘密の密室で食われるまで暮らす事になる。俺が捕まるという事はフェイの死を無駄にする事と同義。
フェイの死を無駄にしない為にも彼女を必ずこの国から出さなければならない。
雷太の意思は固まった。フェイの妹を見ると、ハイライトが消えた目からぽろぽろと涙をこぼしている。
「フェイの妹。お前をこの国から出す。フェイがやりたかった事を俺が代わりに引き継ぐ。文句はあるか?」
声も出さず、首も振らないフェイの妹。
「聴こえてたか?もう一度言うぞ、これから────」
「兄さんの助っ人なら、知ってますよね?わたしの家族の話」
「ああ、聞かせてもらった」
「・・・兄さんはわたしの全てだった。どんなに貧乏でも、どんなに辛くても兄さんがいれば幸せだった」
「・・・・・・」
「わたしはこれから何の為に生きていけばいいんですか?」
フェイが最後に残した焚火に涙が落ちる。涙は煙となって空高くへと飛んでいく。俺は彼女の問いかけにどうこたえれば良いか分からなかった。
覚束ない足取りでフェイの妹が近づく。
「ねえ、兄さんは眠っているだけだよね?この赤黒い液体は、飛び散ったのが付着しているだけだよね?」
首を横に振り、否定する。フェイの服をはだけさせて、小さいくて深い傷口を彼女に見せる。そして、その傷の中には鏃が入っていた。
「何となくだけど、この鏃からはあんまりよくない気配を感じるんだ。この世界の住人である君なら分かるんじゃないかな?」
「・・・・・・呪いだと思い、ます」
思い返せば乗馬して俺を助けに来た時から様子がおかしかった。俺への返答が遅かったり、脱出した後も発言がネガティブ寄りだった。
「傷が癒えない呪い・・・目にかけられた呪いと同じモノがかけられていたんだと思います」
どうして気づかなかった?最初から様子がおかしかったというのに、成功の方に視線が行ってフェイをまるで見ようとしなかった。
いや、そもそも俺に何が出来た?武術しか取り柄のない俺が、フェイに刺さった呪いの鏃を知った所で何が出来たというんだ?
気づけていたら何かが変わっていたかもしれない。フェイは一命を取り留める事が出来たかもしれない。彼が死んだのは俺のせいだ。
「すまん、フェイ・・・俺が、もっとしっかりしていればこんな事には・・・」
「わたしのせいだ・・・わたしが巫女じゃなかったら、兄さんは死ななかった。わたしさえいなければ・・・」
フェイの妹の1人ごとを聞いて我に返る。フェイが死んでしまったのは俺のせいだ。しかし、罪悪感に押しつぶされている場合ではない。
フェイが死んでしまった今、やるべき事はただ1つ。フェイの妹をこの国から出さなければならない。
俺が捕まれば、フェイの妹はまたあの地下教会の秘密の密室で食われるまで暮らす事になる。俺が捕まるという事はフェイの死を無駄にする事と同義。
フェイの死を無駄にしない為にも彼女を必ずこの国から出さなければならない。
雷太の意思は固まった。フェイの妹を見ると、ハイライトが消えた目からぽろぽろと涙をこぼしている。
「フェイの妹。お前をこの国から出す。フェイがやりたかった事を俺が代わりに引き継ぐ。文句はあるか?」
声も出さず、首も振らないフェイの妹。
「聴こえてたか?もう一度言うぞ、これから────」
「兄さんの助っ人なら、知ってますよね?わたしの家族の話」
「ああ、聞かせてもらった」
「・・・兄さんはわたしの全てだった。どんなに貧乏でも、どんなに辛くても兄さんがいれば幸せだった」
「・・・・・・」
「わたしはこれから何の為に生きていけばいいんですか?」
フェイが最後に残した焚火に涙が落ちる。涙は煙となって空高くへと飛んでいく。俺は彼女の問いかけにどうこたえれば良いか分からなかった。
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