天才武闘家は異世界に転移しても持ち前の強さとスキル「一撃必殺」で無双を続けるそうです

町島航太

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二章 漂流先は獣の国

43話 タコ殴り

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 ロープを取ってきてくれたのは船長だった。それを俺の腹にくくりつけてもらう。

「お前正気か!?ほぼ自殺するようなもんだぞ!こんな荒波に飛び込みクラーケンを倒すだなんて!」

「それしか方法がないから仕方ないだろ!ここで死んだらダチの約束を果たせなくなる!良いから黙って協力しろ!」

「どのみちこのままだと全員海の藻屑だ!手伝ってやる!」

 俺の体にロープを縛り付けると、船長含めた十数名の船員がロープを掴んでくれた。

「なにが起きても引っ張り上げてやる!だから思い切って行ってこい!」

「ああ!男として信用するぜ船長さん!」

 荒波に目掛けて飛び込む。飛び込んだ瞬間に荒波にもみくちゃにされるが、そんなのお構いなしに強引にクラーケンの元へと向かう。

 肉体スペックが段違いに上がった今ならゴリ押しで泳ぐことができる。

 波で視界がしっかりとしない中、泳ぎ進めていると、クラーケンの姿が見えてくる。

 まだ茹でられていないのに真っ赤な体をしていてとても分かりやすい。逆に茹でたらどんな感じになるのだろうか。気になるところだが、今はそんな余裕はない。

 泳ぐのをやめ、クラーケンに狙いを定め、正拳突きの構えをとる。

 スキルの使い方は初めて使用した時に感覚を掴んだ。昔から持っていたかのように使うことができる。

 拳を放つ右手が光り始める。流石にクラーケンもこちらに気づいたようだ。何か危機感のようなものを感じたのだろう。触手を慌ててこちらに向かって放ってくる。

「破ァッ!!」

 触手がこちらに向かってくると同時に雷太の拳が突き出され、拳から衝撃波が放たれる。

 水中ということで多少威力は落ちたものの、拳が放たれた方向には水中竜巻が生まれる。

 発生した水中竜巻はまっすぐクラーケンの方まで飛んでいき、雷太に向かっていた職種はもちろん、脳天を貫通する事に成功した。

(良し!成功だ!!)

 水中でもこんなに威力があるとは・・・しかも、水中の魔物相手にこれは素晴らしい。

 頭を損傷したクラーケンは持ち上げていた船を手放し、荒波にのまれてクラーケンの体はどこかへと行ってしまった。

 ロープを軽く引っ張り、引き上げるように指示を送る。すると、船にイタズラしていたクラーケンがいなくなったからか、俺の体は簡単に引き上げられた。

「プハァッ!成功だ!!」

「ああ!倒した所は見れなかったが、凄まじい波と流されていくクラーケンで分かったぞ!よくぞやってくれた!俺達はクラーケンに勝ったんだぁ!!」

「「「「「うぉおおおおお!!」」」」」

 出くわしたら死亡がほぼ確定する魔物を倒した船員達は狂喜乱舞する。これは全員で勝ち取った勝利だと雷太は宣言した。

 バカみたいに喜び叫んでいると騒ぎを聞きつけたティナがシャルロットを連れて甲板にやってくる。

「おぉ!聞いてくれティナ!難を逃れたぞ!俺達は助かったんだ!!」

「・・・そ、そうなんですね」

 ティナはあまり喜んでいない様子。シャルロットに関しては顔面蒼白状態。船酔いしてしまったのだろうか?

「どうした?見てなかったか実感が湧かないのか?そりゃ仕方ないよなぁ!見せてやりたかったぜ!俺の勇姿を─────」

「いえ!そうではなく。その・・・それよりも目の前のトルネードの方が気になっちゃって・・・」

「「「「「「へっ?」」」」」」

 前方を見ると、向かっている方角から恐ろしく巨大なトルネードが船へと向かっていた。
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