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二章 漂流先は獣の国
67話 サラマンダーの群れ
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助けを呼ぶ声に雷太とムサシの腕の力がほぼ同時に緩み、戦闘体勢が解かれる。
雷太とムサシは互いを見つめ合うと頷き、悲鳴が聞こえてきた方向へと向かう。
「父上!これを!」
「ジン!助かる!」
息子から得物である刀を受け取ったムサシは走りながら装備し、雷太に追いつく。
全速力で悲鳴が聞こえてきた方向に走る雷太であったが、急ブレーキをかけて制止する。
「な、なんだあれ!?」
緑の草に覆われた訓練場に赤が攻め寄せてくる。土煙をあげてこちらへと向かってくる赤色の物体の正体はトカゲの魔物の群れだった。
「一体どこから侵入してきたんだ!?」
「いや、あれは家畜として育ててるサラマンダーだ。肉の弾力がクセになって美味いからパンジグで養殖してる特産物だ」
「魔物って食えるんだ。ただ、家畜として育てたにしちゃあ、めちゃくちゃ暴れてないか?」
「ああ、こんなの初めてだ。なんとしてでも止めて原因を突き止めなくては・・・!」
「止めるって・・・一体につき何キロぐらいあるんだ!?」
「200kgだ!」
「いやいやいや!」
一体や二体なら止める事ができるだろうが、向かってきているのは数十体。2人で止められる数ではない。
「流石に無理があるぞ!俺たち2人でどうやって止めるんだ!」
「誰が2人なんて言った?後ろを見てみろ!」
振り返ると、訓練していた兵士と侍達がこちらへと向かってきていた。
彼等は俺達よりも前に出ると、大声で呪文を唱え始めた。
「『我が身を守る盾よ!出現せよ!』」
兵士や侍達の前に半透明の青い盾が出現する。現れた半透明の盾を掴むと、兵士と侍達は密集して大きな壁を作り出した。
「パンジグ軍はいついかなる場合でも対処できるよう訓練している!想定外の事が起きようとも、対応は完璧だ!」
「すごい!これなら・・・」
サラマンダーの群れが魔法の壁に衝突する。すると、壁を作っていた兵士達の体が5mほど押されてしまった。
「力不足だ!雷太!手伝え!!」
「だよな!了解!」
一体につき200キロある魔物が数十体突進してきているんだ。押し負けないわけがない。
「うぉおおおおおおおおおおお!!!!」
腕の血管が浮き出るくらい力を込める。雷太とムサシの加勢でそれ以上押し込まれる事は無くなったが、サラマンダー達は止まらない。
疲れたら止まるのが普通だが、サラマンダー達はそのまま疲労で死んでいく。明らかにおかしい状態だ。
「絶対おかしいって!!」
「しかし、今はこうするしかない・・・!!」
力の込めすぎで頭に血が昇っているのが分かる。このま
まではこちらと保たない。なんとかしなければならないのに、方法が分からない。
脳の回転が低下していく中、なんとか打開策考えていると、訓練場の上空を何かが通りすぎていく。何かは分からなかったが、影だけは見る事ができた。5mはある大きな影だ。
巨大な影の正体を見るべく雲ひとつない空を見上げると、そこには赤黒い体をした竜がパンジグの中心目掛けて飛んでいた。
「あれは竜?・・・ってうわぁ!」
サラマンダー達の突進する力が強くなる。俺達はなんとか押し勝とうとしたが、種族の違いと数の暴力を覆す事ができず、サラマンダー達に壁を破られてしまった。
壁を破ったサラマンダー達は、赤黒い竜を追って訓練場を出て行った。
雷太とムサシは互いを見つめ合うと頷き、悲鳴が聞こえてきた方向へと向かう。
「父上!これを!」
「ジン!助かる!」
息子から得物である刀を受け取ったムサシは走りながら装備し、雷太に追いつく。
全速力で悲鳴が聞こえてきた方向に走る雷太であったが、急ブレーキをかけて制止する。
「な、なんだあれ!?」
緑の草に覆われた訓練場に赤が攻め寄せてくる。土煙をあげてこちらへと向かってくる赤色の物体の正体はトカゲの魔物の群れだった。
「一体どこから侵入してきたんだ!?」
「いや、あれは家畜として育ててるサラマンダーだ。肉の弾力がクセになって美味いからパンジグで養殖してる特産物だ」
「魔物って食えるんだ。ただ、家畜として育てたにしちゃあ、めちゃくちゃ暴れてないか?」
「ああ、こんなの初めてだ。なんとしてでも止めて原因を突き止めなくては・・・!」
「止めるって・・・一体につき何キロぐらいあるんだ!?」
「200kgだ!」
「いやいやいや!」
一体や二体なら止める事ができるだろうが、向かってきているのは数十体。2人で止められる数ではない。
「流石に無理があるぞ!俺たち2人でどうやって止めるんだ!」
「誰が2人なんて言った?後ろを見てみろ!」
振り返ると、訓練していた兵士と侍達がこちらへと向かってきていた。
彼等は俺達よりも前に出ると、大声で呪文を唱え始めた。
「『我が身を守る盾よ!出現せよ!』」
兵士や侍達の前に半透明の青い盾が出現する。現れた半透明の盾を掴むと、兵士と侍達は密集して大きな壁を作り出した。
「パンジグ軍はいついかなる場合でも対処できるよう訓練している!想定外の事が起きようとも、対応は完璧だ!」
「すごい!これなら・・・」
サラマンダーの群れが魔法の壁に衝突する。すると、壁を作っていた兵士達の体が5mほど押されてしまった。
「力不足だ!雷太!手伝え!!」
「だよな!了解!」
一体につき200キロある魔物が数十体突進してきているんだ。押し負けないわけがない。
「うぉおおおおおおおおおおお!!!!」
腕の血管が浮き出るくらい力を込める。雷太とムサシの加勢でそれ以上押し込まれる事は無くなったが、サラマンダー達は止まらない。
疲れたら止まるのが普通だが、サラマンダー達はそのまま疲労で死んでいく。明らかにおかしい状態だ。
「絶対おかしいって!!」
「しかし、今はこうするしかない・・・!!」
力の込めすぎで頭に血が昇っているのが分かる。このま
まではこちらと保たない。なんとかしなければならないのに、方法が分からない。
脳の回転が低下していく中、なんとか打開策考えていると、訓練場の上空を何かが通りすぎていく。何かは分からなかったが、影だけは見る事ができた。5mはある大きな影だ。
巨大な影の正体を見るべく雲ひとつない空を見上げると、そこには赤黒い体をした竜がパンジグの中心目掛けて飛んでいた。
「あれは竜?・・・ってうわぁ!」
サラマンダー達の突進する力が強くなる。俺達はなんとか押し勝とうとしたが、種族の違いと数の暴力を覆す事ができず、サラマンダー達に壁を破られてしまった。
壁を破ったサラマンダー達は、赤黒い竜を追って訓練場を出て行った。
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