天才武闘家は異世界に転移しても持ち前の強さとスキル「一撃必殺」で無双を続けるそうです

終章 未来へ導く光

152話 時が来た

　イリス女王が宣戦布告してから2週間が経過した。怪我を負っていたほとんどの兵士の傷が癒え、戦線復帰できるようになっていた。

　そして、魔法部隊はその優秀な頭脳と技術によって移動魔法の解明と発展をすることに成功した。

　成人男性1人分の大きさしかなかったワープホールを更に大きくして一度に50人通れるようにしたらしい。

　50倍にまで拡大しておりすごいと思ったのだが、魔法部隊曰く、元ができていたからこそこんなに短い期間で進化させる事ができたとのことだ。

　ティナはというと、スキル『巫女』をかなり扱えるようになった。しかし、浄化の光が強くなる事はなかった。

　ティナはそのことを出発直前まで気にしていた。今回の戦争は自分が力を発揮できるかにかかっていると理解しているからだろう。

「何が足りないんでしょうか・・・」

「いやぁ～分からん！俺覚醒タイプじゃないから」

「覚醒タイプのスキルは滅多にいない。勇者が覚醒タイプらしい」

「聞きたい所だが、生憎今ここにいない上に連絡が取れないらしいからな」

　ゴルムが攻めてくる前に、単身船でゴルムに乗り込んだ勇者ジュリエットは音信不通となってしまった。もしかしたら俺達のように漂流。最悪の場合、波に飲まれて死亡している可能性もあるらしい。

　ここまで悪いニュースばかりだが、良い話もある。なんと今回の戦争にバンジグ軍も参加してくれるそうだ。あのムサシだけでなく、数千人の武士達が味方についてくれるのは頼もしい以外の何者でもない。

　仕立て直してもらった新しい道着に袖を通す。今までは元の世界から持ってきていた生地が厚い道着を着ていたが、さらに動きやすい薄手の物に変更。色も白から黒に変え、肌触りもサラサラでとても着心地が良い。

「ちなみにその服のお代は自分で稼いだのか？依頼を一つ二つこなした程度では払えない学だぞ？」

「いや、イリス女王から貰ったんだけど、なんの素材？」

「お前があの時港で倒したベヒーモスの毛を使って作られた布だ。その服の大きさだと王都に一軒家が3つぐらい建てられるな」

「マジかよ・・・大切に使わないとな」

　戦う時に着る道着を大事に扱うというのも少しおかしいが。

　着替え終わったタイミングでコンパス騎士が俺達を迎えにきてくれた。

「皆様！お待たせしました！たった今、準備が完了しました！！」

「サンキュー！それじゃあ、行くか！ティナ」

「・・・はいっ！因縁は自分の手で断ち切って見せます！！」

　元気よく宣言するティナの顔は、2ヶ月前の囚われの少女とは思えないくらい別人だった。