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1章 不幸な死と2度目の不幸な人生

プロローグⅡ

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「そして、雨宮良太さん、貴方は死にました。ゆっくりと深い刺し傷に苦しみながら。もう一度確認しますが、痛みはありませんよね?」

「ええ、全く。だって、もう死んでますもん」

 通り魔に刺された僕は今、天国でも地獄でもなく、女神様の前だった。何で女神様だって分かったかって?

 まず、人間が出せる威厳を超えていたし、そもそも自分で名乗っていた。女神ダネスと。

「あの、死んだら皆ここに連れてこられるんですか?」

「いいえ、ある特定の条件を満たした方のみとなります。そして、貴方はその条件を満たしていまいました」

?その、条件っていうのは何です?」

「不幸と幸せの天秤が不幸側に大きく傾いている方です。人は人生で同じくらいの不幸と幸せを体験します。多少の誤差はあれど、大体の人はそうなんです」

「でも、僕は別に不幸だと思った事は一度もありませんよ?それに、別に釣り合っていなくても良いのでは?」

「そのようですが、それでも貴方の不幸と幸せの天秤は、大きく不幸の方に傾いています。それはもう酷いくらいに」

 どうしてだろう?心のどこかで、自分の人生を呪ってもいたのだろうか?

「それと、問題は大いにあります。不幸と幸せの天秤があまりにも不幸に傾いていると、次の人生で、人格が歪み、貴方が忌避する犯罪者となってしまう可能性があるんです」

「そ、それだけは嫌だな・・・」

 どういう理屈かは分からないが、僕が人から笑顔を奪う側になるのだけは嫌だな・・・なら、どうすれば良いのだろうか?僕はもう既に死んでいる。

 もう、幸せを掴む事は不可能なのではないか?

「その為に私がいるのです。申し遅れましたが、私は転生の女神。貴方には、前世の記憶を引き継いだ状態で新たな人生を歩んでもらい、幸せを掴んでほしいのです」

「その為に僕をここに連れてきたんですね。分かりました!じゃあ、お願いします!!」

「随分とお早い決心ですね」

「ええ、だってもう一度人生がやり直せるんでしょう?因みにどこの国に生まれるんですか?日本ですか?それとも、アメリカ?」

「いえ、貴方が元いた世界ではなく、別の世界へと転生してもらいます。つまりは異世界です」

「異世界?」

「はい。貴方が今から向かうのは、魔法の存在する世界。魔族と人間の戦争が終わり、平和そのものの世界のとある貴族の子供として産まれてもらいます」

「ええっ!?良いんですか?そんな好条件で生き返って!」

「はい、大丈夫ですよ。貴方には幸せになってもらわなくてはいけないので」

 生き返らせてもらえるだけじゃなくて、そんな良い条件の元で第ニの人生が送れるなんて。まるで夢のようだ。

「それでは、転生を開始しますね」

 視界が、キラキラとした光に溢れてくる。どうやら、転生が始まったみたいだ。

 完全に転生しきる前にあれを聞かなくては・・・!!

「女神様!僕が助けた女の子はどうなりましたか?」

「ご心配なく。大丈夫ですよ。肉体的にも、精神的にも回復中です」

 そっか、それなら、良かった・・・・。

 人助けの結果に満足しながら、良太は第二の人生へと旅立っていった。

「どうか、お幸せに。この先何があろうとも貴方の幸運を心から願っています・・・どんな結末になろうとも、ね?」

 女神ダクネも、微笑みを浮かべながら良太の魂を見送った。
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