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4章 魔王の肩書きを持つ少女

51話 魔王様が来る

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 2人をバール様の研究室から帰らせた後、バール様は一旦研究の手を止め、僕を椅子に座らせた。

「シフォンヌ領で何があったのかを教えてもらえるかな?何故、あの領主が殺されたのかが良く分からないんだ」

 バール様が求めたのは、手紙にはない情報の開示。黙っておくわけにはいかないのでしっかりと説明する。

「イヴ・シフォンヌの夫アダム・シフォンヌの正体が、スネイク・ウィーマンでイヴ・シフォンヌを騙していた!?これは傑作だねぇ!女傑と言われた領主も恋愛が混じると話が変わってくるわけだ!!それで、何故彼はそんな事を?」

「絶望する顔が見たいからだそうです」

「成程、そういう性癖の持ち主か。わたしと同じで大分難ありだが、かなりの実力者と見た。これはに合わせたら面白い事になりそうだ」

「彼女?・・・まさか!?」

「ルシフェルだよ♪」

 手紙は、バール様と、地下で待機する魔王様に向けて送った。恐らく、シフォンヌ領を攻める為にやってきたのだろう。ロール騎士団を倒しても、シフォンヌ領は強い。全戦力を持ってくるはず。

 しかし、魔王様がいると思っているイヴ領主はもういないし、シフォンヌ兵もほんのわずかしか存在しない。はっきり言って、僕らバール軍でも十分に勝てる戦力しか持っていない。

「あの・・・今の状況ってかなりマズイですかね?」

「ルシフェルは見た目に反して割と性格は大人だから、キレる事はないけど、拍子抜けしてすねると思う」

 頭の中で想像できちゃう所がまた可愛い。

「わたしが考えてるのはもっと別の事さ。アル、新魔王軍の幹部の数を言ってみてくれないかな?」

「バール様含めて3人ですよね」

「その通り!だが、本来は4人なんだ。枠が埋まっていないだけでね」

 書物によると、旧魔王軍の幹部は4人いたらしい。新魔王軍もそれに倣って4人にしたいのか。

「でも、残念ながら幹部に相応しい人材がいない!そんな時に現れたのが、スネイク・ウィーマンさ」

「つまり、スネイク・ウィーマンを幹部にするというわけですか?」

「彼はそれなりの地位を求めていた。幹部クラスを与えれば十分だろう。それとも、君は新参者であるスネイクを幹部にするのは嫌な年功序列タイプの人間かい?」

「いえ、地位は実力で決められるべきだと僕は思います。僕が危惧しているのは、彼の裏切りです。さっきの話を聞いてどう思いました?」

「実に頼もしそうだなと」

「裏切りそうだとは思わなかったんですか!?」

 僕がスネイクさんを信じきれないのは、彼の行動理念とシフォンヌ領の出来事にある。彼は自分の欲を満たす為なら、何年もかけて裏切りの準備をする男だ。

 しかも、その欲は限りなく性欲に近く、またいつ欲求不満になって、裏切るか分からない。魔王様の手足である幹部の地位を与えるには些か危険ではないだろうか?

「大丈夫じゃないかな?彼は多分裏切らないよ♪」

 僕の心配はよそに、バール様はあまり心配していないようだ。どこからそんな自信が湧いてくるのかまるで分からない。

「じゃあ、これで話はおしまい!今日は片づけが終わったら帰って良いよ。それと、服の選択もよろしく頼むよ」

 僕のような考えの人間は、魔王軍の中ではごく僅かなのだろうか?
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