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4章 魔王の肩書きを持つ少女

66話 幹部と腕試し

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「その驚いた表情からして、本当に知らなかったみたいだな。てっきり、報復にでも来たのかと思ったぞ」

「報復?何故、そんな事をする必要があるのです?」

「余は、お前の故郷である土地を陵辱し、手中に収めた。種族関係無しに、憎き対象であろう?」

 確かに、そう言われれば、そうかもしれない。しかし、僕自身あの地にはトラウマしか抱えていない為、まるで恨みは感じていない。

 その旨を伝えると、アスタロト様は豪快に笑った。

「ブワハハハハハハハハハハ!!!面白い奴だな、お前は!!久々に笑わせてくれたな!!」

「どうも・・・仮にもし、『お命!お覚悟!!』とか言ってたらどうしていたんですか?」

「それは勿論、あの木のようにしてやったさ」

 先程、的と共に撃ち貫いた木を指差す。あんな一撃、掠っただけでも致命傷になりかねない。到底敵に回したくない相手だ。なのだけれども─────。

「おぉ?構えるか。やはり、恨んでいるのか?それとも・・・闘争心が燃えたのか?」

 心が躍っているのは何故だろう?日本という平和な国で最初の生を受けた僕が戦いに心を踊らせるだなんて、夢にも思っていなかった。

「良いだろう。これも何か縁だ。一試合してやろう。来い!!」

 アスタロト様も、やる気になってくれたようで、大弓に矢を番える。体格上、ヒュームでは到底引くことは出来ないであろう大弓。それを力強く引くと、剣を構えるアルに狙いを定め、放った。

「危ないっ!」

 しっかりと視認したからだろう。アルは難なく一撃は避けてみせた。代わりに地面に深く突き刺さる。

「流石に今のは避けるか。では、これではどうかな?」

 次は、3本の矢を番えて構える。一本でも、放つには力と技術が必要なのに、特に問題なく放ってきた。

 3本放つ事によって、横に回避する手段を絶ったのか。なら、後ろに退くか?いや、違う!

「前に行くっ!!」

 迫ってくる3本の矢を前転して避けて見せると、その勢いのまま、前へと走り出した。

「進んでくるか!面白い!!ならば!!これで行こう!!」

 再び矢を番えると、詠唱を口ずさみ始めた。

「我が意志抱いて、追跡せよ『チェイス』!!」

 バール様から聞いたことがある。追跡の魔法だ。僕を貫くまで追ってくるぞ・・・!!

「追跡する矢だけで終わると思うな!!」

 矢は自動で追跡してくる。となると、当然アスタロトには暇ができる。その暇を、矢を放つ事で埋める。そうする事で、敵は追跡してくる矢と、放たれる矢の2つに注目しなければならない。

 この場合の最適解は何か?そう、前へ進む事だ。

 ただ、馬鹿みたいに前へと進む。2種類の攻撃から逃げて、相手に向かう事が出来る。

「獲った!!」

「と思ったか!油断するな!!」

 矢は弓に番えて放つ事で真価を発揮する。だが、放たなくても、短い槍として活用することができる。

 アスタロトは、矢を番えるのを止めると、握っている矢で剣を弾き飛ばし、鏃をアルの喉仏を突っ付いた。

「余の勝ちだ」

 勝利宣言と共に、追跡する矢を止める。アルは敗北を受け入れて、笑みを浮かべた。

「負けを認めたならば、その腹を治してこい。さもないと死ぬぞ」

 アドレナリンが出ていた影響で指摘されるまで気づかなかったが、右脇腹に矢が掠ったようで、若干肉を抉られていた。

 気づくと同時に痛みを感じ始めた。
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