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4章 魔王の肩書きを持つ少女

70話 突然の不意打ち

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「さて・・・腹も膨れた所でそろそろ自室に・・・おっとっと・・・」

 アルコールの影響か、アスタロト様は千鳥足になってしまっている。酔わせたのは紛れもなく僕だ。責任をもって部屋へと送ろう。

「肩貸しますよ?」

「わ、悪いな・・・」

 アスタロト様に肩を貸して部屋の外に出ると、既に日が暮れ、太陽が沈みかかっていた。

「ああ・・・凄いなぁ・・・辺り一帯が、あの野菜の一色に染まっているじゃないか・・・そういえば、あの野菜yはなんていうんだ?」

「・・・キャロットって言いますよ」

 この世界での正式な名称はまだない。ならば、前世の名前でも付けておこう。別名付ける方が面倒くさいし。

「キャロット!キャロットか!!それはまた、良い名前だ。ケンタウロス部隊にも食べさせてやろう」

「何なら、栽培も始めましょう」

「それは最高だな」

 ここ最近で、一番平和な会話だろう。心の底からなごんでいると、左の肩甲骨に思わず顔を引きつらせてしまうような酷い痛みが走る。

「痛っ!?・・・え?」

 左胸に視線を流すと、鋭い刃物が飛び出ていた。

「なん、で・・・?」

 状況が理解できないまま、僕は前のめりに倒れた。

「アルフォース?・・・ッッ!!アルフォース!!しっかりしろ!!大丈夫か!?何故、お前の背中に槍が刺さっている!」

 突然のアルの負傷に、アスタロトの酔いが醒める。槍を刺した犯人がいるであろう後ろを向くが、メイドすらいない。すぐに隠れたのだろう。槍は刺さっているが、まだ他に武器を持っているだろう。

 となると、次に狙われるのは余だとアスタロトは瞬時に理解。しかし、今現在彼の手には武器と呼べる物は存在しない。全て、自分の部屋に置いて来てしまった。

「魔法は・・・ここでは無理だ」

 アスタロトの魔法属性は土。他の属性の魔法は、弓矢で事足りると言って学んでこなかった。今いる場所は、辺りがレンガで囲まれた魔王城。土はまるで存在しない。

「こんな事になるんだったら、他の魔法も学んでおくべきだった・・・!!」

 まだ、少し足がふらつくが、そんな事気にしている場合ではない。アルフォースを担いでこの場から逃げなければ。

「しかし、何処に逃げる?」

 アルフォースは現在、大怪我をして、あまりの痛みに気絶している。ならば、向かう場所はカルーの娘だという癒しの魔法属性の娘の所だ。

「部屋は何処だ・・・?」

 何処にいるのか、いつ襲ってくるのか分からない謎の襲撃者に恐れながら、アルフォースを救うべく、アスタロトは動き出した。
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