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5章 望まれていない勇者

90話 魔物好きの国王様

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 僕とシームさんは一旦宿に戻ってゴップを檻ごと回収してから、城に向かって歩き始めた。

 町行く人の視線が集まるが、すぐに消える。この町では檻に入った魔物は大して珍しいものでは無いらしい。それだけ、国王が魔物を求めている証拠でもある。

 城前に着くと、兵士に止められる。だが、檻に入ったゴップを見た途端、表情から警戒というものが消えていくのが分かる。

「ああ、なんだ。そのゴブリンを献上しにきたのか?」

「甘いな。そんな何処にでもいる魔物で国王が喜ぶとでも?」

「分かってますよ。ただのゴブリンではありませんから。見た目は普通のゴブリンですけど、まだ個体数の少ない超レアなゴブリンですから」

「具体的にどのような所が珍しいんだ?言わないとここは通さないぞ」

「オイラ・・・ここで暮らすの?」

「「っっ!?な、喋った!?」」

「ああ、そうだ。ゴブリンのお前でも役に立てる所があったって事だ。感謝しな」

 演技中のゴップとの関係はあくまで、魔物を捕まえた旅人と捕まった魔物の関係。友人関係を疑われないようにぞんざいに扱う。

「通してもらっても良いか?早く遊ぶ金が欲しいんだ」

「あ、ああ。通って良いぞ」

「檻から出すとか馬鹿な行為は控えろよ?」

 兵士は若干驚きを隠せない状態で僕らの入城を許してくれた。やはり、まだ喋れるゴブリンは珍しいみたいだ。

 城に入り、階段を登る。檻を使っている為、階段を登るのは一苦労だったが、謁見の間に到着する。

「既に国王様がお見えになっている」

「通れ。だが、変な事はするなよ?」

 釘を刺され、謁見の間に入ると、少し先にある玉座に王と呼ぶには少し若い男性が、足を組んで待っていた。

「へぇ・・・それが、喋るゴブリンか・・・指示通りの言葉しか喋らないんじゃ、欲しくはないかな?」

「もちろん、会話も可能ですよ。おい、ゴブリン。お前に役目を与えてくれる王様だ。挨拶しろ」

「こん、にちは・・・」

「ほう、名前はなんという?」

「ゴップです・・・この人達につけられました」

「これはまた、安直な名前だな。お前のようなゴブリンは他にもいるのか?」

「おいらが知る限り、いません。人の言葉が話せるから、嫌われて、巣から追い出されました」

「成る程。会話はできるみたいだな。非常に面白い。お前らの言い値で払ってやろう」

 ここは、控えめに言わずに大胆に。謙虚さなんて出したら、疑われる事間違いなしだ。

「ほう・・・強欲だな。まあ、良いだろう。そのくらいの価値がコイツにはある。モンスタールームへ連れて行け。あと、この者達に金を渡せ」

「「ありがとうございます・・・」」

 ひとまず、作戦第一段階はクリアだ。
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