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6章 アルフォース・ディナスという異端

134話 地下の神殿を目指す

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「妾も実際には見たことはない。そもそも、女神ダネスは父が勇者に負け、魔族が激減した際に信仰が薄れてしまったからな」

「わたしはおとぎ話かと思っていたよ。魔族に味方する物好きな神なんて存在しない!!ってね」

 100年程前に起きた勇者による魔族の虐殺。単なる人口の激減だけでなく、技術や文明が破壊された。一体どんな理由でそこまでの行為を行ったのかは未だに明らかとなっていない。

 小説や伝記では、勇者の強さは頻繁に描写しているが、人格はあまり描写されていない。もしかしたら、他のエンデ人同様にヒューム史上主義者だったのかも。

「そんな勇者一向だが、流石に女神の神殿を壊すのは躊躇したはず!だから、まだ多分神殿が存在しているはずだ!!」

「場所の心当たりはあるのかい?」

「妾の領地が手に入るまで使用していた地下の町。あの町は、勇者による虐殺の後に更に地下に作られた町だ。あの洞窟を探索すれば確実に見つかるはずだ!!」

「バール様は知らないんですか?その頃のバール様は110歳くらいだから知ってると思うんですけど・・・」

「わたしは親が地上に出てる時に生まれたから、先代魔王時代の町には詳しくないんだよ。知ってるのはついこの間まで使われてた地下の町だけさ」

 つまり、誰も知らないと。まだ猶予は13日ほど残っている。神殿を探すには十分だろう。

「でも、あの洞窟はわたし達でも全ては把握していない。推測だが、10%くらいしか構造を把握していない。残りの90%から神殿を探すのは困難だろうねぇ」

「更に、あの洞窟は、そこらにある迷宮よりも迷いやすい!迷って餓死したという話も聞くからな!!妾が知らない所は更に複雑な迷路となっていると思われる!」

 だから地下の町まで、洞窟の壁に矢印が描かれていたのか。

「アルよ、どうする?行くか?行くから妾もついて行くぞ」

「ええっ!?魔王様も!?それは申し訳ないです。それに、迷って餓死なんかしたら、これまでの魔族の戦いが全て水の泡になりますよ!」

「そんな事、覚悟の上だ!それに、いつまでも我々を見守ってくださっていた女神ダネスの神殿を人知れない場所に置いておくわけには行かない。神殿を直で見て地上に再建しなければならない!!」

 魔王様は、失われた魔族の文化や技術を取り戻したがっていた。それが、地上への進軍理由の1つとして挙げられる程だ。

 神殿の再建は、魔王様にとって、大きな意味があるのだろう。僕らが見て伝えると言っても恐らくは聞いてはくれない。今の魔王様はテコでも動かせないだろう。

「分かりました・・・でも、迷子にならないで下さいね」

「うん!!・・・って、妾は子供か!!」

 魔族的には子供でしょと言いたくなったけど、それを言ったら本気で怒られそうなので、胸に秘めておく事にした。
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