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最終章 勝利の為なら手段は選ばず

158話 最終決戦の場へ向かわん

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 丸1日という長い眠りから覚め、体調を完全に戻したアルは、バールに呼ばれて、彼女の部屋に向かった。

 向かった先で待っていたのは、謎の柄の服を持つバール。その服にはかすかではあるが、魔力が織り込まれていた。

「君用に作っておいた戦闘服だ。とても薄くて軽いが、驚く程頑丈。一般的なプレートアーマーと同じくらいの硬度を誇っているから、機動性重視の君でも、防御力を大幅に上げる事が出来るはずさ」

「そんな良い物貰って良いんですか?僕なんかが」

「何言ってんだい。君は今までわたし達の為に尽くしてきてくれたじゃないか。これくらい貰って当然だって顔くらいしな?いいや、それをしないのが、君の美学か。いやはや失敬失敬」

 袖を通してみると、驚く程にピッタリでびっくりする。まるで、僕の体のサイズを測ったかのようにピッタリだ。

「因みに、それ一着作るのに、かなりお金をつぎ込んでしまったから大事に使ってくれ給えよ?」

「それは研究費って事ですよね?」

「+製作費だ。それで、今年の研究費は全て使い切ってしまった。それはわたしの給与から捻りだした物だ」

「・・・マジですか?」

「マジだよ。君には極力死んでほしくないからねぇ。このくらいの出費は大した事はないさ」

「大事に使います!!」

「ああ、大事につかってくれたまえよ?アル」

 バールからは、防具を貰い、スネイクからは武器を貰った。アルの準備は万端。では、軍の準備はどうなのかというと────。

「どうしたんだい?魔族の武器を見に来たのかい?」

「剣がどんな切れ味かは試したんですが、他の武器はどうなのかなって」

「斧重さも加わって、厚さ5㎝くらいの鉄の盾なら楽勝で切れるようになっている。弓は、腕力サポートがあるから、通常の二倍の力で矢を放てる。正直言って反則だと思うくらいには強いさ」

 100年前に勇者が徹底的に破壊したのも分かる技術。しかも、切りかかる際に刃に薄い魔力の膜が張られるので、刃毀れする心配もない。恐ろしい技術だ。

「これが、ほぼ全員に支給される。これで、天使にも怖い物なしでしょ」

「だと良いんですけどね・・・」

「おや?何か不安でも?ミシェルことミカエルさんの事は覚えてますか?あの人のような特殊能力を持った天使がいたら大変だなと思いまして・・・」

「けど、人の手でも殺せた。そうだろう?それに、だ。こちらには勇者がいる。簡単にはやられないさ。それにだ・・・」

「まだ、秘策があるんですか?」

「君に上げた剣『デネブリス』あるだろう?ピンチになったらあの剣に魔力を注ぎ込んでみな?物凄い事が起きるよ?」

 その物凄い事を聞いても、スネイクさんの事だから教えてはくれないだろう。僕はそのとっておきをピンチの時の楽しみにする事にした。
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