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町島航太

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勇者part1

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 凄すぎる。
 その一言に限った。
 何なのだこの恐ろしい程の魔力は!ビリビリと肌に伝わってくる!
 これが、魔王軍の力なのか?
 人間とは比べ物にならない魔力に、私は驚いていた。
 ダリスから放たれる魔法の威力は人間を遥かに超えている事が放っていない今の状況でも分かる。
「フレイムゥゥゥゥ!!」
 ダリスが叫んだのは炎の魔法、フレイムだ。
 前に突き出したダリスの手の平に魔法陣が浮かび上がり、そこから小さな手の平サイズの火の玉が飛んでくる───はずだった。
 魔法陣から出てきたのは手の平サイズの火の玉には程遠い10倍、いや、20倍もの大きさの火の玉が飛び出してきたのだ。
 スピードも申し分なく、火の玉はまっすぐジンさんの方へと飛んでいき、ぶつかると爆発した。
「凄い───って!ジンさーん!!」
 あまりに凄いフレイムだった為忘れてしまっていた。あんなのを真っ正面からモロに喰らったら全身やけどはおろか、灰になってしまう。
 それを分かっているはずなのに彼は避けようとせずに、真っ正面から受けたのだろう。
 そして、彼は大丈夫なのか。
「凄いなぁ、やっぱり君他の魔族と比べると魔力が高いね。ちょっと感心したよホントに」
 何とジンさんの体には火傷のひとつもなく、ピンピンしていた。
 一瞬驚いたが、彼の前に半透明の緑の壁があることに気づきなるほどと納得する。
 彼を守るように前にある緑の壁は完全防御魔法と呼ばれているパーフェクトバリアだ。
 パーフェクトバリアさえあれば、どんな攻撃も防ぐ事ができる。
 パーフェクトバリアはトランスフォームほど難しい魔法ではないが、覚えるのはそれなりの努力が必要な魔法である。
「き、きたねぇぞパーフェクトバリアなんか使いやがって!このクズ!」
「人さらいをする奴にクズ扱いされたくないね。それに君はこの戦いにルールを立てなかった。明らかに君の落ち度だよ」
 ぐうの音も出ないとはまさにこのこと。ダリスは正論を叩きつけられて表情が歪んでいる。
「くそ!ならこれならどうだ!カナシバリ!」
「何!?──ぐっ!!」
 聞いたこともない魔法をダリスが唱えると、ジンさんは苦しそうな表情でその場から動かなくなってしまう。
 いや、これは魔法ではなく呪術だ。呪術の本を読んだことはあまりないので分からないが、あれは恐らく相手の動きを止める事が出来る呪術なのだろう。
「バカめ!──フレイム!」
 動けなくなったジンさんに向かってもう一度巨大な火の玉を打ち込む。
 不味い!このままじゃ───。
 と思った刹那、誰かが動けなくなっているジンさんを持ち上げ、火の玉が届かない場所まで飛んでいった。
 間一髪の所で助けたのはジンさんの友人の騎士のアグネスさんだった。
「ちょっとジン、気を付けてよね。貴方呪術耐性低いんだから」
「アハハ、ごめんごめん。今度あげておくよ」
「絶対よ?──呪術解除」
 呪術解除と囁いたと同時にジンさんの表情は苦から楽に変わり、体も自由に動くようになる。
 どうやらアグネスさんも呪術師のようだ。
「な、仲間をつれてくるなんて・・・貴様どこまで腐っているんだ!?」
「だからお前だけには言われたくないッツーの!大体お前だってモンスターを俺らに差し向けてたじゃないか!」
 「ぐうっ・・・」
 あ、この人もしかしてあんまり頭良くないんじゃないか?
 考えてみれば逃げ場のない地下水路なんてところを戦いの場所にしてるし。
 そんな奴に捕まったと思うと恥ずかしい。
「おーい、ガーディアン家のお嬢様」
「あれ?この声は・・・?」
「俺俺、リンタロウ。騎士団の隊長だよ」
 確かジンさんと同じ和の国の人だ。
 リンタロウさんは私の前に立つと、握られたハンマーで、
「ふんっ!」
 檻の南京錠を破壊して檻の中へと入り、私を縛っている縄をほどいてくれた。
「ありがとうございます」
「いや、ゆーて大した事はしてない。それよりも魔法は使えるか?」
「魔法?はい、使えますよ?それがどうかしたんですか?」
「ちょっと手伝ってほしいことがあるんだ。それにはガーディアン家の魔導士の力が必要なんだ。手伝ってくれるか?」 
 私の家にしか出来ないこと・・・?
 なんだろう?まあ、とにかくやってみよう。
「わ、私に出来ることがあるんなら・・・」
「よし!じゃあこっちに来て!今から始めるから」
 私はリンタロウさんに手を引っ張られ何処かへと連れていかれた。

「サモンズ!ソード!」
 と叫ぶとダリスの前に剣が現れ、ダリスはその剣を装備する。
 召喚魔法サモンズ。
 自分の血をつけたものならどこにいても自分の目の前へと召喚することの出来る最上級魔法。
 俺もまだ使えない最上級魔法だ。
「やっぱりお前大物だな。今まで戦ってきた魔族の中で2番目に強い」
「2番目?1番目は誰だ?」
「お前の主だよ。魔力は俺の2倍近く強かったし、剣術も素晴らしかった」
「ほう、それは光栄だ。まさか私が魔王様の次に強いとはな」
「ただ剣術はどうなのか分かんないけどな」
「フフフ、なめるな私の剣術は魔王様のお墨付きだ。簡単にはやられはせん!!」
 台詞を言い終えたダリスは俺に急接近し、斬りかかってくる。
 あまりのスピードに少し驚いたが、防げない事はない。すぐさま剣を抜いてダリスの剣と鍔迫り合いになった。
「流石は勇者だ。急な攻撃にも対応出来るとは」
「魔王を倒してからも剣術は怠らなかったからね。多分魔王を倒した時より強くなってると思うぜ」
 決してホラではない。魔王を倒してからも次なる災害の為に剣術や魔法のトレーニングは毎日やっている。
 それを聞いたダリスは不適な笑みを浮かべた。
「だったら本気を出さなきゃなぁ!!」
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