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勇者part2
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「あ~あ、おっぱじめちゃったよあいつら・・・」
戦いを始めた二人を見て呑気そうにリンタロウさんはしゃべる。
「た、助けにいかなくていいんですか?」
「俺らが手を出せるような領域じゃないんだよあいつの戦いは。それに手伝ったとしても『男同志の戦いを邪魔するな!』って怒鳴られるだけだよ」
「私の知ってるジンさんと全然性格が違う気がするんですが──」
さっきから感じていたが、ジンさんもしかして戦いになったら性格が変わってしまう人なのだろうか。
いつも僕と自分の事を言っているのに今は俺になってるし。
「実は言うとあれが本当のジンの性格なんだ。人を殺める者を絶対に許さないザ・ヒーロー性格」
「そ、そうなんですか・・・」
それにしてもダリスという魔族の青年も中々のものだ。ジンさんの目で捕らえるのにやっとな攻撃を上手く弾いて攻撃までこなしている。
彼も勇者であるジンさんに勝つために相当の特訓をしてきている事が分かる。
「ほお、ダリスって奴もやるな。ジンとあそこまで渡り合えるなんて」
顎に蓄えた髭を触りながらリンタロウさんは語り続ける。
「でも、ダリスはこのままじゃジンに負けるな。確実に」
「ええ!?決めつけちゃっていいんですか!?」
「うん、見てみなよジンの表情」
リンタロウさんに言われた通りにダリスと剣を交えているジンさんの顔を見てみるとその顔には何処か余裕があった。今にでも口笛を吹きそうなくらいの。
「あの表情から分かる通りジンは本気を出しちゃいない。せいぜい10パーセントぐらいしか出してないよ」
「じゅ、10パーセント!?あのスピードで!?」
「なめちゃいけないよ。勇者の力を」
リンタロウさんの声は何処か余裕があった。
「おらおらおらおら!!」
確かに素晴らしい剣術だ。これならそこらへんの騎士は簡単に倒すことが出来るだろう。
「どうしたんだ?勇者というのはそんなものかぁ!?」
更にスピードが上がる。
どうやらこいつは俺に勝てると勘違いしているようで、顔から笑みがこぼれている。
少し、本気を出してやろう───。
ほんの、少しだけ───。
「何!?」
余裕がダリスの顔から消える。
さっきまで攻め体制だったダリスの戦闘スタイルが防御体制に変わる。
「どうした?魔族って言うのはそんなもんなのか!?」
「舐めんなぁ!!」
挑発がかなり効いたようで更にスピードが上がる。俺もそれにつられてどんどんスピードを上げる。
ダリスの顔からは一切の余裕がなくなり、変わりに焦りが表れる。
「くそ!くそ!くそ!くそ!くそぉおおおお!!」
さっきまでみとれるほど素晴らしかったダリスの剣術は素人のような雑な剣術へと変わる。もうそれは剣術とは言えないくらいだ。
「甘いわ!!」
ダリスの剣を思いっきり弾くと、剣は吹っ飛んでいった。
すかさず、がら空きになった胴体を剣で斬る。
「ぐはぁ──」
血が噴水のように吹き出して俺の装備している鉄の鎧にベットリと付着する。
「き、貴様──何故・・・」
「言っただろう。俺は魔王を討伐してからも剣術の鍛練は怠らなかったって。だから今の俺は魔王を倒した時の俺よりも強いってわけ。ちなみに俺、本気の15パーセントしか出してなかったぜ」
「そ、そんな・・・バカな・・・バカなぁああああああああ!!」
絶叫と共に瞳からぽたりぽたりと大粒の涙があふれでてくる。
相当の特訓をしていたのだろう。少し罪悪感が生まれてくる。
「うわぁああああああああああ!!」
最後の力を振り絞り、両手を使って立ち上がる。
立ち上がっても彼の体からはかなりの血が出てしまった為、足元がおぼつかない。
「ならばぁ、私はなんとしてでもお前に勝つ!!」
ポケットから紫色に怪しく輝く石を取り出す。
魔晶石だ。しかも、かなり大きなサイズだ。
「ヒヒヒ、見てて下さい魔王様ァ!勇者が惨めな姿になる瞬間を!!」
その魔晶石を胸に苦しみながら突き刺す。
しかし、彼は笑っていた。嫌な予感しかしない。
「これがァ!魔族のォ!力だぁああああああああ!!」
体はどんどん大きくなっていき、筋肉が膨張していき、服を破く。
元から生えていた角は禍禍しいフォルムへと変化し、肌は紫へと変色する。
その姿は昔魔王城で、倒したミノタウロスに酷似している。
しかし、魔王城でみたミノタウロスよりも、遥かに禍禍しい姿をしている。
「オォオオオオオオ!!」
目は白目を向いており、正気がないことが分かる。
ミノタウロスへも変化したダリスは俺を目で捕らえると、俺に向かって猛突進してくる。
距離と腕のリーチからして耐えられない事が分かるので、冷静に剣でガードを取ることにする。
ある程度の距離まで近づくと、ミノタウロスは大砲の弾以上に巨大な拳を真っ正面から撃ってくる。
パキン!
ミノタウロスのパンチを受けた俺の剣は衝撃に耐えられず、粉々になって宙を舞った。
ミノタウロスのパンチの威力は収まらず、無防備になってしまった俺の腹に直撃する。
「がはぁっ!」
パンチの力で端まで吹き飛ばされ、壁に衝突してしまう。
「こいつは、面倒な事になっちまった・・・」
第2ラウンドの始まりだ。
戦いを始めた二人を見て呑気そうにリンタロウさんはしゃべる。
「た、助けにいかなくていいんですか?」
「俺らが手を出せるような領域じゃないんだよあいつの戦いは。それに手伝ったとしても『男同志の戦いを邪魔するな!』って怒鳴られるだけだよ」
「私の知ってるジンさんと全然性格が違う気がするんですが──」
さっきから感じていたが、ジンさんもしかして戦いになったら性格が変わってしまう人なのだろうか。
いつも僕と自分の事を言っているのに今は俺になってるし。
「実は言うとあれが本当のジンの性格なんだ。人を殺める者を絶対に許さないザ・ヒーロー性格」
「そ、そうなんですか・・・」
それにしてもダリスという魔族の青年も中々のものだ。ジンさんの目で捕らえるのにやっとな攻撃を上手く弾いて攻撃までこなしている。
彼も勇者であるジンさんに勝つために相当の特訓をしてきている事が分かる。
「ほお、ダリスって奴もやるな。ジンとあそこまで渡り合えるなんて」
顎に蓄えた髭を触りながらリンタロウさんは語り続ける。
「でも、ダリスはこのままじゃジンに負けるな。確実に」
「ええ!?決めつけちゃっていいんですか!?」
「うん、見てみなよジンの表情」
リンタロウさんに言われた通りにダリスと剣を交えているジンさんの顔を見てみるとその顔には何処か余裕があった。今にでも口笛を吹きそうなくらいの。
「あの表情から分かる通りジンは本気を出しちゃいない。せいぜい10パーセントぐらいしか出してないよ」
「じゅ、10パーセント!?あのスピードで!?」
「なめちゃいけないよ。勇者の力を」
リンタロウさんの声は何処か余裕があった。
「おらおらおらおら!!」
確かに素晴らしい剣術だ。これならそこらへんの騎士は簡単に倒すことが出来るだろう。
「どうしたんだ?勇者というのはそんなものかぁ!?」
更にスピードが上がる。
どうやらこいつは俺に勝てると勘違いしているようで、顔から笑みがこぼれている。
少し、本気を出してやろう───。
ほんの、少しだけ───。
「何!?」
余裕がダリスの顔から消える。
さっきまで攻め体制だったダリスの戦闘スタイルが防御体制に変わる。
「どうした?魔族って言うのはそんなもんなのか!?」
「舐めんなぁ!!」
挑発がかなり効いたようで更にスピードが上がる。俺もそれにつられてどんどんスピードを上げる。
ダリスの顔からは一切の余裕がなくなり、変わりに焦りが表れる。
「くそ!くそ!くそ!くそ!くそぉおおおお!!」
さっきまでみとれるほど素晴らしかったダリスの剣術は素人のような雑な剣術へと変わる。もうそれは剣術とは言えないくらいだ。
「甘いわ!!」
ダリスの剣を思いっきり弾くと、剣は吹っ飛んでいった。
すかさず、がら空きになった胴体を剣で斬る。
「ぐはぁ──」
血が噴水のように吹き出して俺の装備している鉄の鎧にベットリと付着する。
「き、貴様──何故・・・」
「言っただろう。俺は魔王を討伐してからも剣術の鍛練は怠らなかったって。だから今の俺は魔王を倒した時の俺よりも強いってわけ。ちなみに俺、本気の15パーセントしか出してなかったぜ」
「そ、そんな・・・バカな・・・バカなぁああああああああ!!」
絶叫と共に瞳からぽたりぽたりと大粒の涙があふれでてくる。
相当の特訓をしていたのだろう。少し罪悪感が生まれてくる。
「うわぁああああああああああ!!」
最後の力を振り絞り、両手を使って立ち上がる。
立ち上がっても彼の体からはかなりの血が出てしまった為、足元がおぼつかない。
「ならばぁ、私はなんとしてでもお前に勝つ!!」
ポケットから紫色に怪しく輝く石を取り出す。
魔晶石だ。しかも、かなり大きなサイズだ。
「ヒヒヒ、見てて下さい魔王様ァ!勇者が惨めな姿になる瞬間を!!」
その魔晶石を胸に苦しみながら突き刺す。
しかし、彼は笑っていた。嫌な予感しかしない。
「これがァ!魔族のォ!力だぁああああああああ!!」
体はどんどん大きくなっていき、筋肉が膨張していき、服を破く。
元から生えていた角は禍禍しいフォルムへと変化し、肌は紫へと変色する。
その姿は昔魔王城で、倒したミノタウロスに酷似している。
しかし、魔王城でみたミノタウロスよりも、遥かに禍禍しい姿をしている。
「オォオオオオオオ!!」
目は白目を向いており、正気がないことが分かる。
ミノタウロスへも変化したダリスは俺を目で捕らえると、俺に向かって猛突進してくる。
距離と腕のリーチからして耐えられない事が分かるので、冷静に剣でガードを取ることにする。
ある程度の距離まで近づくと、ミノタウロスは大砲の弾以上に巨大な拳を真っ正面から撃ってくる。
パキン!
ミノタウロスのパンチを受けた俺の剣は衝撃に耐えられず、粉々になって宙を舞った。
ミノタウロスのパンチの威力は収まらず、無防備になってしまった俺の腹に直撃する。
「がはぁっ!」
パンチの力で端まで吹き飛ばされ、壁に衝突してしまう。
「こいつは、面倒な事になっちまった・・・」
第2ラウンドの始まりだ。
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