Dのカルマ

猫目化月

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第4章 竜と思ったらトカゲだった

10-3 1匹だと思ったら2匹いた

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 デュークが雨の中拾い、飯を食わせてやったグズでノロマなカメは、カルマ=Dディー=スノーホワイトというらしい。

 2人は双子の兄弟だ。

「1つの身体に兄弟が2人とも入ってると?」

 いまいち信じられないが、本人がそうだというのならそれでいいのだろう。
 今更凝った演技をする器用さが、この馬鹿正直にあるとは思えない。

「元は別々の身体だったんです。色々あって兄の身体を失ってしまって、今は私の身体を借宿にしています。この旅も兄の身体を探すことが目的で――」
「何の手がかりもなしにか?」
「まぁ、はい……手がかりは、ないこともないんですが」

 部屋に上がることを許され、正座で事情を説明したカルマがじっとデュークを見つめる。

「なんだ?」
「兄はあなたのことが大嫌いだそうですが、あなたの存在が身体を探す手がかりに繋がるかもしれないので、一緒にいることを許してやる、だそうです」
「分かった。俺もお前の兄貴が大嫌いだと伝えとけ。ついでに身体が見つかったらぶん殴るって」

 どうにも気が合うらしいカルマ兄に青筋を立てる。身体が見つかったらと言わず、今度出てきたら一発殴っておこう。

「しかし、俺と一緒にいたら手がかりになる、ってのが解せねえな」
「それは――あなたがシグルドの血を引いているからです」
「…………」

 真面目な顔で答えたカルマに無言になる。そういえば、先ほどの兄の言葉も聞き流していたが――

「……なんで、俺がブルークラウンの人間だって分かった?」
「へっ? それは……」

 低音で問うたデュークに、カルマが慌てて顔を上げる。

Dディーの魔方陣だ」

 答えた声はどこまでも偉そうで、すぐに兄にチェンジしたのだと分かった。多分無理矢理だろうが。

「その忌々しい魔方陣を操れるのはシグルドの一族しかいない」
「俺はお前らのややこしさのほうが忌々しいよ」

 一体どちらとしゃべっているのか混乱する。

「おまけに青い髪だと? 不愉快過ぎて脳天から噛み砕いてやりたいくらいだ」
「お前がシグルドが大嫌いなのはよーく分かったよ。俺も嫌いだけどな」

 ベッドサイドに腰掛けたまま、デュークは脳裏に魔方陣のイメージを描いた。
 右の掌が熱を持ち、ぽぅ……とデュークとダークナイトの間に青白い魔方陣が浮かび上がる。

 昔は勝手についたり消えたりしていたのだが、今は大分意識して操れるようになった。
 デュークの人生にケチがついたのは、そもそもコレが元凶だ。

 もっとも、生まれた時からあるものだから、始めからケチがついていたということだが。

Dディーの魔方陣か……小癪なものを使う。誰に教えられた?」

 言葉通り忌々しげに目の前の魔方陣を見やるダークナイト。

「とうに失われたものと思っていたが、シグルドの血と共に人知れず継承されていたか」
「別に好きで覚えたわけじゃねーよ。生まれた時からつきまとってただけだ。母親の話じゃ、産声を上げた瞬間から気味の悪い魔方陣が浮き上がっていたらしい」

 正直に答えると、ダークナイトの眉が神経質そうに跳ねた。

  魔方陣はデュークの感情が昂ぶる度、自然発生的に浮き上がった。
 それで何かが起こるわけでもなかったが、右手の不気味な痣と合わせて『呪われた子供』と敬遠されたのは事実だ。

 魔方陣を出さないように感情を抑えるようになったのはその頃からだろう。笑わなくなったのも。

「生まれた時から……? 魔法剣もか?」
「ああ、これは1度死にかけたことがあって――無我夢中で、気がつけば相手を切ってた。それからはコツを掴めば、結構簡単だ。手加減ができねぇから、滅多に出すことはないけどな」

 魔方陣を内と外を繋ぐ『扉』として、内にあるイメージを現実世界に具現化させる。
 デュークは魔法には詳しくないが、経験から学んだ『作法』はだいたいそんなものだ。

 掌に魔方陣の光が収束し剣の形を象った途端、ダークナイトが目を見開きデュークの右手を掴んだ。

「アブねっ」

 慌てて剣を消す。ダークナイトはデュークの掌の痣を凝視したまま、唇を震わせた。

「そういうことか……ッ」

 わなわなと肩を震わせ、痛いほどに爪を食い込ませる。

「お、おいっ?」
「シグルド……ッ貴様はまた……!」

 顔を上げた先でぶつかった視線が、今までにないほど憎悪に染まっていた。
 蒼銀の瞳に、怯えと怒りをない交ぜたような色が宿る。

(怯え……?)

 その感情に違和感を感じた時、轟音と共に部屋全体が大きく揺れた。





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