32 / 82
第4章 竜と思ったらトカゲだった
11-1 3匹目がやってきた
しおりを挟む「何だ!?」
突然の振動に、窓から外の様子を確認する。
「なっ……」
目に入った光景に絶句する。
隣の部屋が、砲弾でも撃ち込まれたように陥没していた。
バサッ、と鳥にしては大き過ぎる羽ばたきが聞こえた。
「竜?! こんな街の中に……」
見ると、灰色の竜がアパートの上空を飛んでいた。
優雅とすらいえる仕草で羽ばたく度に、大小の瓦礫や粉塵が地上に降り注ぐ。
今の衝撃は、この大きな獣が隣の部屋に体当たりを仕掛けたに違いない。
一歩間違えれば、命はなかった。
一気に冷や汗が滝のように背中を伝う。
曇天のような灰色の鱗を持つドラゴンが、青々しい両眼を動かした。
誰かを捜している。
(カルマか……?)
昼の一件を思うとその可能性が高い。
アパートの正面上空に停止するドラゴンの視界に入らないよう身を低くして窓の外を窺う。一発目のアタリが外れたのは不幸中の幸いだ。
「ありゃあアンタの知り合いか?」
「知り合いかどうかは知らんが、おそらくは聖域の……」
言いながら、同じように身を低くして窓から竜を見上げた青年の表情が凍り付く。
「貴様は……あの時の!」
「お、おい! 待てって、そこ、窓……!」
声を上げ、ドラゴンの浮かぶ通りへと飛び出そうとするダークナイトを止めに入る。
だが予想外の怪力で引っ張られ、そのまま窓から引きずり出された。ここは2階だ。
「うおっ?!」
「むぎゅ」
当たり前だが着地の体勢が悪く、鈍い音を立てて落ちたデュークの下敷きになり竜の化身が呻いた。
「痛ってぇ~……くそっ。てめ、もっと後先考えて行動……」
「どけ。重い」
クッション代わりになった青年が不機嫌に命じる。
「あんた、まだ兄貴のほうか?」
「だからなんだ」
立ち上がり、割れた眼鏡を胸ポケットにしまい込んだ兄竜は一顧だにせず答えた。
「いつまでも占領して、弟の許可は取ったのかよ?」
「これは私の器でもある。危険な局面をあんなどんくさい男に任せていられるか!」
「……ごもっとも」
ぎんっと睨みつけられ、デュークは大人しく賛同した。
元の造作が綺麗すぎる分、本気で睨まれるとやたら迫力がある。
「避けろ」
「うわっ?!」
唐突に胸を突き飛ばされ、デュークは道脇のゴミ箱に背中からダイブした。さっきから散々だ。
先ほどまでいた場所を竜の吐息が直撃する。
炎の残滓が服を掠め、皮膚の露出した部分に焼けるような熱さを感じた。
デュークを突き飛ばしたと同時に反対方向に飛んで避けたダークナイトが立ち上がり、攻撃を仕掛けてきた灰竜を睨みつける。
ボゥ、とその身体が白い輝きを帯びた。
「待て! こんな街中で竜になるな!」
察し、慌てて制止する。それでなくとも白竜の身体は桁外れに大きい。あの姿で暴れられたら、街の一角が潰れてしまう。
「知るか! そんなもの……」
振り払おうとしたダークナイトの声が途切れる。
その間にも、灰竜は大きく翼を羽ばたかせ上空へと逃亡した。
「ふん、仕方があるまい」
どうやら弟に説得されたらしい。しぶしぶ頷いた兄は、進路を変更しデュークへと駆け寄った。
「来い人間」
「何で!?」
襟首を掴み、強引に引きずっていくダークナイトに抗議する。
「ヤツの狙いは貴様かもしれないからだ」
「何で俺がドラゴンに狙われるんだよ!?」
「貴様がシグルドの末裔だからだ」
「……っ」
嫌な言葉だ。デュークの感情などお構いなしに、川辺まで走ったダークナイトが空を見上げ告げた。
「飛ぶぞ」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話
須宮りんこ
BL
【あらすじ】
高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。
二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。
そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。
青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。
けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――?
※本編完結済み。後日談連載中。
僕たち、結婚することになりました
リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった!
後輩はモテモテな25歳。
俺は37歳。
笑えるBL。ラブコメディ💛
fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる