Dのカルマ

猫目化月

文字の大きさ
43 / 82
第5章 ある奇術師の忠告

13-3 怪我をしたので手当てした

しおりを挟む


「それで?」
「それで、ですね――」

 本題から逸れ、先を促してくるミスター・スラングに、カルマが続きを話そうと顔を上げる。

「私が妙な人間の男に連れ去られ、黒竜の身体うつわを奪われた。そいつの正体も、目的も分からん。ただ分かるのはそいつが竜を使役していたということ、それだけだ」

 自ら眼鏡をはずし、急に雰囲気の変わったカルマに2人の奇術師が目を瞬かせた。

「だから私は、犯人はエルトシャンの手の者だと検討をつけた。たまたまディーの魔方陣を操るシグルドの末裔を見つけたから同行し、エルトシャンが尻尾を見せるのを待った。以上。――その手を退けろ、愚民が」
「お前、急に出てくんなよ……」

 乱暴にデュークの手をはたき落とし、憮然と睨みつけてくる青年を呆れて見やる。兄貴の方だ。

「カルマに任せていると余計なことまでしゃべるからな。特にその者達は信用ならん。エルトシャンと馴れ合うつもりは毛頭ない」

 どうもあまり弟にしゃべらせたくはない内容だったらしい。
 胸を張るカルマ兄を、エルトシャンの男が面白そうに見下ろした。

「だがその竜使いドラグーンはエルトシャンじゃなかった。なぜならエルトシャンも、その竜使いを追っているからね」

 対して、黒竜が面白くなさそうに鼻を鳴らした。

「まあいいじゃないか。図らずも、君と俺たちは同じ敵を狙っている。ここは共同戦線を張るのが賢い判断だと思わない?」
「ヤツを八つ裂きにするのはこの私だ」

 エルトシャンの共闘申請に、黒竜は許諾の代わりに物騒なことを口にした。

「器を取り戻した後、魂すら転生できないよう、あの竜共々黒き炎で焼き払ってくれるわ」

 破壊の化身と呼ばれるに相応しい台詞を吐き捨て、横柄な態度でデュークを振り返る。

青髪あおがみ、貴様の小屋に帰るぞ。エルトシャンの手先などといつまでもいられるか」
「あん?」

 小屋だと? 失礼な物言いに反論する前に、黒竜は身体中包帯まみれの状態で勢いよく起き上がろうとして、全身に走った激痛にうずくまった。

「おい、痛いぞ肩を貸せ」
「ぜってーぶっ飛ばす」

 当たり前のように命令してくる男に青筋を立てながら、デュークは素直に肩を貸してやった。
 ダークナイトが無茶な使い方をしているが、元はカルマの身体だ。

 悪態を吐きながら部屋を出て行こうとする2人の背中に、ミスター・スラングの声がかかる。

「大きな獣を飼うつもりなら、早く契約した方がいい」
「なんだって?」

 ダークナイトに肩を貸したまま、デュークは振り返った。

「首輪を付けて、鎖に繋いで、2度と逆らう気など起きないくらいに徹底的に痛めつけて調教することをオススメするよ」

 どこか卑しさすら感じる薄い笑みを浮かべ、白い奇術師はシルクハットの鍔を下げた。

「じゃないと身体が大きい分、噛まれたら痛いからね」




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

悠と榎本

暁エネル
BL
中学校の入学式で 衝撃を受けた このドキドキは何なのか そいつの事を 無意識に探してしまう 見ているだけで 良かったものの 2年生になり まさかの同じクラスに 俺は どうしたら・・・

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

処理中です...