Dのカルマ

猫目化月

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第8章 ある皇太子の野望

19-2 悪の親玉がお目見えだ

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「着いた」

 ダークナイトが辿り着いた先に手を伸ばすと、闇が拓けた。

 清々しい光が満ちる。

 目を開けるのもためらうほどの眩しい光の中に、神聖な空間が広がる。

 アルテナ城大聖堂。
 元はディアドラ建国以前から存在した大陸最古の神殿だが、増改築が繰り返され、ディアドラ時代中期に大幅な改築が進められた。

 ディアドラと人類の栄華を讃えた大聖堂として生まれ変わったその場所は、200年前とは随分と様変わりしていた。

 大聖堂の側面、祭壇の影に当たる部分に設置された目立たない出入り口から飛び出した2名は、急な視界の変化に目を慣らしながら周囲を見回した。

 円形のドームの中央に広がる、明かり取りの大きな天窓からは、太陽が見えた。
 地下牢にいたためすっかり時間の感覚が狂ってしまっていたが、日の傾き加減からしてもう昼過ぎらしい。

 眩しい陽光の下、円形の堂には十二聖竜騎士ドゥデ・エルリタルの像が配置され、天井にはシグルド王がドラゴンと出会ってから大陸最大の版図を築くまでの英雄伝が、当代の巨匠の筆により精巧に描かれている。

 その真下にはドラゴンにまたがるシグルド王の巨大な像が設置され、だだ広い殿内を睥睨していた。

「馬鹿馬鹿しいな。あの男がこんなものを喜ぶとも思わんが」

 それらを一瞥したあと、ダークナイトは冷めた感想を口にした。

 ストイックではないが、華美を好む男でもなかった。
 あの馬鹿がこの悪趣味な巨像を見れば、「俺はもっと美形だ」とか「乗ってる竜はカルマが良かった。こんな小さな竜じゃ物足りない」だとかわけの分からない文句を垂れつつ、後世の人間の勘違い信奉を笑い飛ばすのだろう。

 ふとそんなことを考えてしまい、ダークナイトは背後でぽかんと大聖堂の威容を見上げる馬鹿の末裔の馬鹿を振り返った。

「くだらん」

 あの男とこの男では全く違う。何もかもが正反対だ。どちらも嫌いだという意味では同じだが。

 一瞬でもナンセンスな感傷に浸った自分が許せず、腹いせにこの像を壊していくかと思ったところで、馬鹿の目つきが変わった。引きちぎるように、右手の革グローブを脱ぐ。

「おい――」
「……分かっている」
「どうやら向こうもお見通し、ってことらしーぜ」

 次の瞬間、いくつもの銃声と共に足下に刺さった銃弾を避け、2人は別々の方向に飛んだ。

 銃弾が放たれた方向――聖堂正面の扉から駆け込んできたのは、武装した兵隊たち。
 アルテナ騎士団の近衛部隊だ。後方には、鉄砲を肩に担いだ銃兵隊の姿があった。

「乱暴なご挨拶だな。ハジメマシテくらい言えねぇのか?」

 青髪の青年が、こちらも十分礼を欠いた物言いで対峙する。

「私はアルテナ帝国騎士団長パスハ=ラドナックだ」

 うち1人が声を張り上げ、前に進み出る。

「ここまでだ。脱獄犯デューク=フォン=ブルークラウン、そしてカルマ=D=スノーホワイト。ファブロス殿下の恩赦を賜りながらその命に背き、死刑囚の脱獄を助成した罪は重いぞ!」
「無知の愚民共が……」

 もはや勝利を確信し、鬼の首を取ったような愚かな人間の物言いに歯ぎしりする。
 だが殺気立ったダークナイトは急に顔を上げ、意識を別の方向へと向けた。

「いる……!」

 この感覚、間違いない。

「感じる……もうすぐここに――来る!」
「おい、どうした?」

 異変を察し、シグルドの末裔が声をかけてくる。

「無駄な抵抗は止め、大人しく――ってコラ貴様らぁぁ! この私を無視するとは良い度胸……」
「その者達の始末はこの私が直々につけよう」

 騎士団長の口上を奪った美声に、誰もが振り向いた。




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