Dのカルマ

猫目化月

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第8章 ある皇太子の野望

19-5 悪の親玉がお目見えだ

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 援軍をダークナイトに押しつけたデュークは、立ち尽くす皇太子に向かって剣を振り上げた。

「遊びは終わりだ!」
「……っ誰か……!」

 恐怖に顔を歪め、助けを求める美貌の王子の目の前で、振り下ろされた刃が甲高い悲鳴を上げて弾かれた。

防護壁バリア!?」

 刃が標的に届く前に見えない壁に阻まれ、デュークは衝撃を受け流して後方に飛んだ。

「曲者が――!」
「……!」

 だが体勢を立て直す前に、その着地した足下を狙いすまし、光の槍が床に刺さる。
 とっさにもう1度後ろに飛ぶが、今度は体勢を崩して腰をついた。

 デュークがいた場所に突き刺さった光の槍はすぐに霧散し、床面にはひび割れた跡だけが残った。

(魔法の……槍……!?)

 初めて見たそれの正体を悟り、同時に、デュークはこの城に存在する、やっかいな集団を思い出した。

 先程の増援部隊とは別の方角から、一個小隊が姿を現す。
 そこには甲冑を着込んだ騎士の他、通常の部隊では見られない、ローブ姿の魔法士が混じっていた。

 ――アルテナ帝国の特殊精鋭部隊、帝国魔法騎士団。

「殿下、ご無事ですか」
「遅いぞ! 魔法騎士団長!」  

 一命を取り留め、礼よりも先に詰ってくる王族に、甲冑姿の魔法騎士団長は礼儀正しく謝罪した。

「申し訳がございません。王城の東端に2匹のドラゴンが現れ、城壁を破壊して攻撃を仕掛けてきたとの報告が入り、そちらに出動していました」
「ドラゴンだと!? 始末したのか!?」
「残念ながら逃がしましたが、大きな被害は出ていません。それよりも殿下、この脱獄犯をどのように処しましょうか」
「殺せ! どうせ死刑囚だ!」

 床に腰をついていたデュークを見下ろす騎士団長に、皇太子は迷いなく命じた。

「私に害をなそうとしたのだ、今すぐ殺せ!」
「御意」

 その命令に応じ、魔法騎士団長の右手に再び光の槍が現れる。

「めんどくせぇな……」

 デュークは立ち上がり、毒づきながら右掌に魔法剣を生み出した。

 相手が魔法を使うというのなら、こちらも同条件でなければ太刀打ち出来ない。

「魔法剣士か……」

 呟いた騎士団長の声に、警戒の色が宿る。

「手加減できねぇぞ!」
「こちらとて同じこと!」

 光の剣と槍、双方が携えた武器が交差し、空気を切り裂く。

「アブねぇ!」

 先程まで頭があった虚空を光の槍が薙ぎ、デュークは声を上げて姿勢を低くした。
 刀身の長い槍を振りかぶった男の脇ががら空きになり、素早くその懐に潜り込む。

「隙だ!」
「……!」

 ギィン!

 確かに隙を突いたはずなのに、魔法騎士団長の脇腹を狙った一撃は、一瞬だけ輝いた透明の壁に阻まれ、音を立てて弾かれた。

 魔法を使用した防御壁バリアだ。

「チッ……」

 舌打ちし、デュークは前線で槍を振るう騎士団長の後方に立つ魔法士を視界に入れた。

 敵の隙を突いて攻撃しても、後方支援している魔法士に防護壁バリアで防がれる。
 この連携が、彼らの戦いの定石なのだろうが――このままでは、防戦一方だった。




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