Dのカルマ

猫目化月

文字の大きさ
75 / 82
第9章 楽園の蛇

23-2 ドラゴンの大群がやってきた

しおりを挟む

「あれは……」

 赤褐色の竜。青空にコントラストを見せ、飛び出した小竜は暗黒竜の視界を惑わすように翼を広げて周囲を旋回した。目くらましだ。

 苛立ったように白竜の首から口を離し、顔の周りをうろつく小竜に牙を向いた黒竜に、時間差で現れた青銅色の竜が炎を吐いた。
 鼻先を掠めただけの竜の吐息ブレスファイアでは致命傷にはならず、怒りを煽られた黒竜が咆哮する。

 その攻撃を巧みに避ける青銅色の竜の背に、白い人影が見えた。
 蒼紫色の魔方陣が一瞬浮かんだかと思うと、全長2メートルはあろうかという槍のような長剣が一閃し、黄金の眼球を切り裂いた。

 絶叫し仰け反る黒竜から速やかに身を離した小竜から、白い影が飛び降りた。

 3階以上の高さから重さを感じさせない仕草で降り立ち、遅れて白いマントの裾がゆったりと降りた時、デュークの前には白いシルクハットに燕尾服という出で立ちの男が佇んでいた。
 その手には、蒼紫色に輝く魔法剣。

「あんた……ドラゴンけしかけるだけが脳じゃなかったんだな……」

 感心というには皮肉混じりの呟きに、白い奇術師は魔法剣を消し、シルクハットの鍔をつまんで読めない笑みを浮かべた。

竜使いドラグーンは魔法士の上級職だよ? 舐めてもらっちゃ困るなぁ転生君」
「略すな!」
「それでも俺ほどの使い手はなかなかいないけどね」

 さらっと言った自慢を聞き流す。

「出てくんの遅くねーか!?」
「そう? ナイスタイミングじゃない?」
「終わってから言え!」
「もう終わるよ」

 あっさりと告げた奇術師が指さす方向に視線を向ける。

「ホラ」

 片目を潰され、死角の出来た黒竜が闇雲に攻撃してくるのを避け、距離を取った白竜が大きく首を擡げた。
 赤い口腔から吐き出されたブレスに息を飲む。

「白い炎……!」

 目くらましの役目を終え、隣に素早く着地した赤褐色の竜の上からシェリルが叫ぶ。

「魂すら浄化する白き炎。綺麗だね」

 まるで花火でも拝むような口調で目を細める白奇術師には目もくれず、2人は愕然と巨大な生き物を見上げた。

「これが……伝説のドラゴンの力……」

 呟きは、どちらものだったか。

 小山ほどもあろうかという巨体を覆い尽くす程の炎を放出する生物の存在は、にわかには信じがたい程に現実離れしていて、それが『伝説』とされていた理由わけを理解する。

 白い炎に包まれ、黒き竜が苦悶する。

 やがてその姿がゆっくりと傾ぎ、大聖堂跡に崩れ落ちる。

 白き巨竜は、己の勝利を知らしめるように高く咆哮した。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

オメガなパパとぼくの話

キサラギムツキ
BL
タイトルのままオメガなパパと息子の日常話。

悠と榎本

暁エネル
BL
中学校の入学式で 衝撃を受けた このドキドキは何なのか そいつの事を 無意識に探してしまう 見ているだけで 良かったものの 2年生になり まさかの同じクラスに 俺は どうしたら・・・

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

処理中です...