74 / 82
第9章 楽園の蛇
23-1 ドラゴンの大群がやってきた
しおりを挟む「冗談きついぜ……」
異変の正体に気付いた瞬間、絶句したデュークは、辛うじてその一言を絞り出した。
竜王の呼び声に応え、『外』から眷族達が集まってきたのだ。
「まずいぞ、カルマ! とっとと決着をつけねーととんでもねぇ増援が……」
振り返り、目の前の光景にデュークは再び絶句した。
獣の咆哮が上がり、白い竜が鉄をも噛み砕く牙をむきだし、暗黒竜の首胴に噛みつく。
血が吹き上がり、獣の白い貌を濡らす。その首に、苦痛に絶叫した黒竜が牙を剝く。
互いの首に噛みつき、膠着状態に陥った2頭の竜の間に夥しい量の血飛沫が吹き上がり、猛々しい息遣いと羽ばたきが繰り返される。
獰猛ではあるが決して醜くはない。強さを美に還元したかのような強烈で幻想的な光景にしばし見入る。
それでも、デュークの胸の内を支配したのは激しい後悔の念だった。
これが本当にあのカルマなのだろうか。
互いに一歩も譲らぬまま、威嚇するように翼を広げた2頭の生み出す羽ばたきに、殿内に強風が吹き荒れる。
血の雨がこちらにまで横薙ぎに降り注ぐ。どちらのものとも知れぬ赤い血が、それが神話の世界の話ではなく、今現実に起こっていることなのだと知らしめる。
頬についたそれを指で擦り、デュークは汚れた己の指先を見た。
血。
『デュークさん』
人の姿をしたカルマの、思わず言葉を聞き逃すような笑顔を思い出す。
名前を聞かれただけで、ただデュークに出会えただけで幸せそうに笑った人好きの竜。
(あいつに何をさせてるんだ、俺は……!)
少しでも勘違いを起こしかけた己の弱さを罵倒する。
あんな成りをしていても、魂までもが獣になったわけではない。
たった1人の兄の身体を傷つけることなど望まないはずだ。
「くそっ……」
振り返ると、先ほど黒い点だった竜の集団は、すでにその形が遠目にも分かるほどまでに近づいていた。
その下に住まう人々の混乱は凄まじいものだろう。都市の中央に住む人間にとって、竜とは噂にしか聞くことのない凶悪な猛獣だ。
(俺に何が出来る!?)
カルマに争いを止めろと命じることは出来る。
だがこのままでは、この敷地にいる全員の命と共にこの国が終わる。
始まるのは、暗黒の竜による支配という名の悪夢だ。
頭上を仰ぐと、デュークの魔方陣により展開された光の結界が広がっていた。
その頭頂付近に、やはり白い光のようなものが引っかかっている。
1つの魔方陣で、扱える魔法は1つだけだ。
今デュークが結界を消し、カルマに加勢することは、ダークナイトの魂を手放すことを意味する。
白竜の足下の大理石の床が裂けた。地面に爪を食い込ませた足が後退し、黒竜に噛みついたまま翼を2、3度羽ばたかせる。
ブラックドラゴンとホワイトドラゴンはDの双頭だ。
だが並べば目に見えて分かるほどに黒竜の身体は大きく、破壊の化身とされる暗黒竜に、純粋な力では敵うはずもなかった。
不利を悟り、焦る胸の内を抑えながら、デュークは冷静に頭を働かせた。
自然と剣を握りしめる。人の作った刃物では、鎧に覆われた竜の身体を傷つけるのは難しい。それでも――
(目か、口……目か。一撃で片目を潰せば、あるいは)
問題は天井が崩れたこの戦場で、どうやって遙か頭上にある竜の顔に刃を突き立てるかだ。
辛うじて跡を残す、竜の胴体から上をなくした巨像を見やる。
届かないが、あそこからカルマの身体に飛び移り、頭まで駆け上がれば可能かもしれない。
カルマにその意図を悟らせ、命じれば協力もするだろう。
(やるしかねぇだろ……!)
確実性は低いが唯一の方法に賭け、壊れたシグルド像に駆け寄ったデュークは、青天井に現れた乱入者に足を止めた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
悠と榎本
暁エネル
BL
中学校の入学式で 衝撃を受けた このドキドキは何なのか
そいつの事を 無意識に探してしまう
見ているだけで 良かったものの
2年生になり まさかの同じクラスに 俺は どうしたら・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる