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第四話
しおりを挟む人混みを抜け、一直線に市長の家へと急ぐ。
街が緊急事態になっているにも関わらずこの街の防衛は機能していなかったことに今更になってイラつきを覚えつつ、市長の家へと向かう。
「そもそも市長は何やっての? こんな事態になっても衛兵1人よこさないって問題でしょ」
「ミノタウロスが一気にぶち破ってきたから間に合わなかったみたいだな。ほら、あそこに衛兵が隊列組んでるだろ。多分もう少しで出発のところだったんじゃないか?」
ルーさんが指さした先には広場で衛兵が隊列を組んでいた。
今にも出発しようとしているが、すでに事態は解決済みだ。そんなところで陣形を組んでないで1人でも駆けつけてくれればよかったのに。
規模がでかくなりすぎて小回りがきかなくなっているのか分からないが、役に立たない奴らだ。
今回は運よく俺がミノタウロスを倒すことが出来たが、もしできなかったら街の被害は甚大なことになっていたはずだ。
「これも市長に言わないとね。ルーさんも色々言ってあげてよ」
「まぁ、門兵もまるで役に立ってなさそうだし、そのあたりは色々言わないとダメだろうな。モンスターが当たり前のように入ってくる街なんて安心して暮らせやしねぇ」
本当にその通りだ。
俺が生まれてから一度もこんな事態はなかったが、このミノタウロス以降同じような事態が起こる可能性は往々にしてある。
「先を急ごう。いつまでもここにいたらまた囲まれるぞ」
「そうだね。街の人に喜んでもらえるのは嬉しいけど、疲れちゃうよ」
今まで目立つような立場にいたわけじゃないし、こんなに多くの人にされてしまうと疲れる。さっさと市長の家に避難して現状をなんとかしてもらないといけない。
ミノタウロスに踏み荒らされた道を進んでいくと、俺達の前に市長の家が見えてきた。
他の家に比べて一際大きく、真っ白な建物は市長の誠実さとかをアピールしているらしい。
家の前には巨大な門が配置されており、その前には門兵が2人待機している。
家で警備しているが、その装備は重装備で固められている。
前進金属のフルプレートで固められているので、今から戦争にいっても問題ないような装備だ。
ただ、何故か気温が高いせいで暑いのか、一人は兜だけ外している。
「おぅ、ルーじゃないか。お前がこんな場所にくるなんて珍しいな」
「お前らが仕事をしないから俺がわざわざここに来たんだよ。街でミノタウロスが暴れてたの知ってるだろ?」
「あー。知ってはいたけどなぁ。俺の配置は門の前だから何も出来ねぇんだよ。俺に文句言っても仕方ねーぞ」
市長の家で門兵をしていたおっさんとルーさんは知り合いだったようだ。門の前までテクテクと歩いていくと、まるで友人とでも話かのように気さくな口調で話している。
「とりあえずここを通らせてもらうぞ。ハルがミノタウロスを倒したんだからな。こいつがいなかったら今頃街はめちゃくちゃだ」
「マジか!? 急に悲鳴が聞こえなくなったと思ったが、こいつがミノタウロスをねぇ……見たところ冒険者には見えないが?」
「こいつは料理人だからな。まぁ、ミノタウロスを倒せたのはちょっと訳ありだ」
「ほぉ……」
門兵が俺のことを興味深そうに見てきたが、そんなにじっと見て貰っても俺から感じ取れるものはないぞ。
なんせスキルを発動させたらミノタウロスを瞬殺出来ただけで、俺に戦うための力はない。
俺自身がミノタウロスを倒せたことに驚いてるぐらいだからなぁ。
「そんな詮索しなくていいからさっさと門を開いてくれ。俺達は市長に用事があるんだよ」
「はいはい、わっかりましたよ。めんどくせぇから問題は起こしてくれるなよ?」
ルーさんの言葉のおかげもあって名も知らぬ門兵は市長の家の門を開けてくれるらしい。ギギギと音を立てながら鉄でできた巨大な門が開かれた。
中に足を踏み入れ、綺麗に整った芝生を進みながら玄関に向かう。
門兵もいたが、玄関にも兵士が配置されている。ただ、門兵のようにルーさんにどうこう言うことはなく、無言で入口を開いてくれた。
「いらっしゃいませ、ルー様。ガゼフ市長はお部屋におられます。私が案内させていただきますね」
「おう、頼むぜ。無駄に広いから案内でもつけないと迷っちまうよ」
市長の家の中に入ると女性が待機していた。どうやら俺達のことを誘導してくれるようだ。
まぁ、家といっても市長になった間住まうための家なので、普通のサイズの家ではない。
こういったメイドなんかがいないと来客の対応も大変になってしまうんだろう。
「一緒にくるのかよ」
「……」
思わず兵士に突っ込んでしまった。
入口にいた兵士は無言で俺達のことを通してくれはしたが、一緒に市長の元についてくる気らしい。
がちゃがちゃと金属が動く音が聞こえてきたので後ろを振り向くと、俺達の後ろに兵士が付いてきていた。
さすがに見ず知らずの奴を市長に引き合わせるわけないか。
ルーさんに関しては結構大きめの剣なんて持ってるし、いくら顔を知られていると言っても適当にこの家にあげて襲撃だったら大変だ。用心ぐらいはするんだろう。
メイドの女性に案内されて家の中を進み、しばらくすると家の中でも特に豪華な扉の前に案内された。
「ここに市長がおられます。失礼のないようにお願いしますね、特にルー様は」
「わかったって。ハル、それじゃ市長からハルが色んな褒美をもらえるように頑張りますかね」
「そういうとこですよ! ほら、扉を開けますからちゃんとしてくださいね」
「う、うん」
ルーさんは全然平気なようだが、さすがに市長と面と向かって話すのは初めてなので、緊張で思わず唾を飲み込む。ただ、そんな俺の気持ちも知らずメイドは市長がいる扉を開いた。
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