料理人が始める最強冒険者生活。チートスキルでモンスターを瞬間調理できるようになった件

しのこ

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第五話

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 ガチャりと扉が開かれる。


 俺はただの一般市民だし、市長なんて離れたところでしか見たことがないから緊張する。
 手は汗でベタベタだし、緊張で額から粒のような汗が出てきた。

 この街の市長、ライガさんはとても強いことで有名だ。
 冒険者をやっていたこともあったが、その強さは圧倒的だったと聞く。


 到来するあらゆるモンスターを力でねじ伏せる物理最強の格闘家。

 ただのパンチが轟雷拳のライガなんて大層な名前をつけられていたぐらいだ。


 俺が物心つく頃にはすでに冒険者を引退していたが、その逸話は今でもよく聞く。

 身長は2メートル近くあり、遠目に見ても普通の冒険者よりがたいが良い。
 目つきがとても悪く、睨みつけられただけで殺されそうな威圧感もある。

 そんな人に今から会うのだ。緊張するのも仕方がない。

「よ、よしっ!いくぞ」

 思い切って扉の中に入る。
 市長の部屋はとても広かったけど、その割に部屋の中にはほとんど物が置かれていなかった。


 執務をこなすための机と椅子、あとは来客用にソファーなどが用意されているだけだ。


「おう、久しぶりだな。元気してたか?」

「クハハハ! お前は相変わらず元気にしてるみたいだな。噂が俺のところにまで届いてくるぞ」


 俺が意を決して部屋に入ると、何やら楽しそうに市長とルーさんが話す。
 ルーさんの顔が広いのは分かっていたけど、どうやら市長とも面識があるようだ。

「街がどうなってたのかは知ってるか?」

「あぁ、窓から様子を覗いていたから知ってる。ミノタウロスを片付けてくれたみたいだな。助かったぞ、さすがルーだな」

「いや、片付けたのは俺じゃねぇよ」

「ほぉ、それじゃ誰があいつを倒したんだ? 兵士はまだついていなかったみたいだし、あんなのを倒せるのはお前ぐらいだろ?」

 ルーさんは街の冒険者の中でも歴が長く、優秀なのでそう思うのが普通だろう。


 モンスターを倒せるのなんて兵士か冒険者ぐらいしかいないしなぁ。


「それだったら俺一人で会いに来てるよ。こんな騒ぎの中でわざわざ連れてきたんだ、分かるだろ?」

「おいおい、いくら何でもそんなバレバレな嘘つくなよ。この小僧、明らかに身体も鍛えられてないじゃないし、色々足りてないぞ」

 はい、その通りです……。
 俺は今まで料理しかしていなかったので、冒険者に比べてひょろっちい身体をしている。


 おそらく市長の言う"色々足りてない"には本当に多くの要素が詰まってるんだろう。

 そりゃ、俺は一度も冒険もしたことないし当然だ。


「こんな場所まで来て嘘なんてつくかよ。ハルは確かに冒険者じゃないが、あのミノタウロスを一撃でぶっ殺したぞ。犠牲者だってハルのおかげで出てない」

「嘘だろ? こんな小僧1人であのミノタウロスを倒したのか。まぁ、ルーがそういうなら本当なんだろう。それで、それならどうしてお前までここに来たんだ?」

 ルーさんが証言することで市長はあっさりと俺のことを信じてくれた。
 ミノタウロスを一撃で倒したのは倒した張本人である俺でも信じられないぐらいなのに、ここまであっさり信じるとはよほどルーさんのことを信用しているらしい。


「ライガ、こいつ1人でここにこさせたら絶対いいようにするだろ。監視だよ」

「かっー! 20年以上の付き合いがあるのに信用ねぇなぁ!!」

 市長はルーさんに結構辛辣なことを言われてるが、何処か楽しそうだ。
 久しぶり会ったみたいだし、もしかしたらこういう距離感の人が少ないのかもしれない。
 この見た目だし、軽口を叩けるような人も少なかろう。


「あの、それで僕はどうなるんですか?」

 この2人だとこのまま話が進まなさそうだし、勇気をだして割って入った。
 じろりと2人の視線が俺に刺さる。こえぇ……

 ルーさんはいつも話してるから慣れてるけど、ライガさんのガン飛ばしは慣れてないし堪える……


「街で大暴れしてたミノタウロスを倒せたんだ。そりゃ、冒険者になれるように動くに決まってるだろ? 街を救ったことに対する報酬ならもう少し時間をくれ。色々考えはあるけど色々検討したいからな」


「そりゃ良い! 俺もハルには冒険者になってほしいと思ってたんだ。あんなすげー力を持ってるんだし、元々なりたかったんだろ? この機会になっちまえよ」

 確かに冒険者にはなりたいと思ってたけど、今更出来るんだろうか……


 俺はこの年になるまでずっと料理しかしてなかったし、ぱっとみで弱そうって思われるような見た目だ。

 まぁ、見た目だけじゃなくて弱いけど。
 そんな俺がスキル1本を頼りに冒険者になっても大丈夫なのか?
 考えれば考えるほど難しい気がする……

「わけー奴がそんな深く考えんな! 色々教えられる奴はつけてやるからやりてーなら思いっきりぶつかりにいけ!」

「わ、分かりました! やりますよ!」

 市長が俺の背中をバシバシと叩いてくる。
 細かいことを気にしても仕方ないし、俺も本当は冒険者になりたかったんだ。
 ルーさんや冒険者の知り合いもたくさんいるし、チャンスがあるなら一度やってみるか。

「よし言ったぞ、ハルッ! お前が一人前になるまで街の冒険者みんなで支えてやっからなぁ!!」

「おう、俺も一役買わせてもらうから、頑張って一流の冒険者になってくれや」

 2人のいかついおっさんに肩を組まれる。
 ちょっとおっかないが、2人とも俺の冒険者デビューを祝福してくれるみたいだいし、期待に応えらえるように頑張ろう。

「ハル、どうせ今日は開店しないだろ? それじゃさっそく冒険者登録しにいこうぜ」

「俺は色々処理があるから一緒にいけないが、紹介状だけ渡しておこう。これをギルドでみせれば冒険者登録に役立つはずだ」

 市長はささっと文章を封筒に入れて俺に手渡してきた。
 何が書かれているのか少し気になるが、しっかり封をされているので確認も出来ない。


「そいつは助かる。ただ、ミノタウロスを倒した褒美をハルに授与するのも忘れずに頼むぜ」

「んなことは分かってるよ! ほら、さっさと行って来い」

 話が終わったのもあって市長に部屋から追い出されてしまった。


 こんな異常事態が起こったんだし、市長もこれから色んな事務処理があって忙しいんだろう。
 話も決着していたみたいだし、俺はルーさんと一緒にギルドに向かうことにした


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