8 / 13
第八話
しおりを挟む
翌日、俺は店長に昨日のことを告げた。
当然驚いていたけど、昨日の出来事は店長の耳にも入っていたらしい。
俺はその時のことを説明すると、店長は興味深そうに俺の話を聞いてくれた。
急にこんな話をぶっこまれても信用なんて出来ないだろうけど、昨日の件は目撃者が多数いる。
多くの人から証言があれば信憑性も増すだろう。
昨日の件を全て説明して俺は本題に入る。
冒険者になるって話だ。
ただ、昔俺が冒険者を目指していたということを店長は知っていたので、俺が旅立つことを快く了承してくれた。
「頑張って来いよ。無理だったらいつでも戻ってきていいからなぁ!」
「はい! 長い間お世話になりました!」
本当は色々引き継いだりしなきゃいけないんだろうけど、店長がそんなこまけーことはいいから自分の力をぶつけて来いって言ってくれた。
ありがてぇ。あぁ、体よく追い出されたとかではないからね?
あんな便利スキルを持ってたから、これでも仕事は人並以上に出来たんだよ。
大変だと思うけど、店長は俺が気にしてるのを分かって豪快に言ってくれたんだと思う。
それだったらその優しさに甘えさせてもらおう。
俺はやれることを全部やってみる。
店に背を向けて店の外に出る。
俺が十年以上お世話になった店ともこれでおさらばだ。
今までいろんなことがあって思い入れもあるけど、俺は違う道に進みます。
「ありがとうございましたッッ!!」
店に向かって深々と一礼する。
周りにいる人に変な目で見られているのは分かるけど、一番自分がお世話になった場所だから、最後の挨拶はしっかり決めた。
◆
「さて、それじゃさっそく冒険者ギルドに行って依頼を受けに行こう」
店への挨拶を終え、一人で冒険者ギルドに来た。
今回冒険者ギルドに来た理由は依頼を受けるためだ。
冒険者は基本的に冒険者ギルドから出される依頼を受け、それを達成して生計を立てる。
階級はE,D,C,B,Aと右にいくにつれて高くなり、自分の階級以上の依頼は受けることが出来ないようになっている。
階級は依頼を達成することで上昇させることができ、それを確認するためにギルドカードと呼ばれるものがある。このカードは登録主の討伐数などをカウントする能力が秘められているので、それでギルドの依頼を完了したのか判断するのだ。
さっそく依頼を受けるために掲示板の元へと向かう。
冒険者ギルドの中はいつも通り混み合っており、掲示板の前なんてさらに人口密度が高くなっている。
「おい! その依頼は俺がさきに目をつけてたんだ! 取るんじゃねぇ!」
「うるせぇ! さきに依頼書を取ったもんがちだろ!」
「うるさーい! 喧嘩するならギルドの外でやんなさいよ! もし続けるなら私が相手になるわよ?」
「げぇ、クリスかよ。悪かったから見逃してくれ」
「わ、悪かったって。もう大人しくするから勘弁してくれ」
当然だけど俺は一度も掲示板のところに来たことはないので、今回が初体験だ。
目の前でこんなことが起きるなんて思っていなかったのでワタワタしていると、青髪の女性が屈強な男たちの間に割って入ると、あっという間に喧嘩を抑え込んだ。
女性とりては身長が高く、170センチ近くはあるだろうか、その態度も相まってとてもかっこよく見える。
「す、すごい……」
「気にしなくて良いからねぇ。初心者さんを守るのも私達冒険者ギルドの職員の仕事なんだからさ」
「ありがとうございます……かっこいい……」
クリスさんがにこりと満面な笑みを浮かべたので、目鼻立ちがはっきりしていて美しい顔におもわずみとれてしまった。ポロリと本音が漏れてしまったが、クリスさんは少し引きつった笑みを浮かべた。
「それで、君は依頼を受けに来たんだよね? どの依頼を受けに来たの?」
クリスさんが諍いを止めてくれたおかげで、今は依頼掲示板の前が今までよりもすいている。
すぐに人がごちゃごちゃして目当ての依頼を探しにくくなるだろうし、さっさと探しちゃおう。
今回俺が受けようと思っているのはバーストチキンの討伐だ。体長70センチ程度の真っ赤な鶏なのだ。こいつの依頼の難易度は最低ランクだが、それは討伐に限ってのことだ。
バーストチキンの肉はとても美味で高値で取引されている。それは討伐は出来ても綺麗に確保することが出来ず、自分の身が窮地に陥ると自爆するからだ。
その状態になる前に一瞬で仕留めなければいけないので、討伐難易度は低いわりに肉の値段が高値で取引されている。普通の冒険者なら一番最初に受けるような依頼ではないけど、俺の能力があれば討伐に一番適したモンスターだ。
「これを受けたいです」
「バーストチキン討伐かぁ。君、これが初めてみたいだけど本当に大丈夫なの?」
掲示板に貼られていたバーストチキンの依頼書を剥がしてクリスさんに依頼書とギルドカードを提出すると怪訝な顔を向けられてしまった。
俺のギルドカードにはまだ何も記載されていないので、これが一番最初の依頼であるということがぱっと見で分かってしまう。バーストチキンはその質の悪い習性のせいで最下級の依頼でもトップクラスの危険が伴う。
クリスさんはお前初めてなんだったらもっと楽な依頼にしろよと目で訴えてきてるんだろう。
その心配はありがたいけど不要だ。
「大丈夫ですよ。ちょっと特殊なスキルを持ってるんで」
「それなら良いけど、無茶はしないようにね」
ギルドカードには個人が所有するスキルがどんなものまでかは記載されないし、それを聞くのはマナー違反とされている。俺がクリスさんに平気であるという旨を伝えると、渋々ながら引き下がってくれた。
「大丈夫ですよ。初めての依頼ですしばっちり決めます」
「それじゃバーストチキン5羽の討伐をお願いします。依頼の期限は3日以内になってるから、強から3日以内に冒険者ギルドに報告に来てね。来ないと依頼失敗になっちゃうから」
「了解しました! それでは、頑張ってきます」
依頼も無事受けることができたので、心配そうなクリスさんに背を向けてギルドから立ち去る。
「よっし! 頑張るぞー!」
ギルドを出て空を見上げると、どんよりと黒い雲が空にかかっている。
太陽が出る気配もなく、街もどことなくくらい雰囲気だ。
初めての冒険なので快晴の中気持ちよく狩りに行きたかったけど、仕方ないか。
当然驚いていたけど、昨日の出来事は店長の耳にも入っていたらしい。
俺はその時のことを説明すると、店長は興味深そうに俺の話を聞いてくれた。
急にこんな話をぶっこまれても信用なんて出来ないだろうけど、昨日の件は目撃者が多数いる。
多くの人から証言があれば信憑性も増すだろう。
昨日の件を全て説明して俺は本題に入る。
冒険者になるって話だ。
ただ、昔俺が冒険者を目指していたということを店長は知っていたので、俺が旅立つことを快く了承してくれた。
「頑張って来いよ。無理だったらいつでも戻ってきていいからなぁ!」
「はい! 長い間お世話になりました!」
本当は色々引き継いだりしなきゃいけないんだろうけど、店長がそんなこまけーことはいいから自分の力をぶつけて来いって言ってくれた。
ありがてぇ。あぁ、体よく追い出されたとかではないからね?
あんな便利スキルを持ってたから、これでも仕事は人並以上に出来たんだよ。
大変だと思うけど、店長は俺が気にしてるのを分かって豪快に言ってくれたんだと思う。
それだったらその優しさに甘えさせてもらおう。
俺はやれることを全部やってみる。
店に背を向けて店の外に出る。
俺が十年以上お世話になった店ともこれでおさらばだ。
今までいろんなことがあって思い入れもあるけど、俺は違う道に進みます。
「ありがとうございましたッッ!!」
店に向かって深々と一礼する。
周りにいる人に変な目で見られているのは分かるけど、一番自分がお世話になった場所だから、最後の挨拶はしっかり決めた。
◆
「さて、それじゃさっそく冒険者ギルドに行って依頼を受けに行こう」
店への挨拶を終え、一人で冒険者ギルドに来た。
今回冒険者ギルドに来た理由は依頼を受けるためだ。
冒険者は基本的に冒険者ギルドから出される依頼を受け、それを達成して生計を立てる。
階級はE,D,C,B,Aと右にいくにつれて高くなり、自分の階級以上の依頼は受けることが出来ないようになっている。
階級は依頼を達成することで上昇させることができ、それを確認するためにギルドカードと呼ばれるものがある。このカードは登録主の討伐数などをカウントする能力が秘められているので、それでギルドの依頼を完了したのか判断するのだ。
さっそく依頼を受けるために掲示板の元へと向かう。
冒険者ギルドの中はいつも通り混み合っており、掲示板の前なんてさらに人口密度が高くなっている。
「おい! その依頼は俺がさきに目をつけてたんだ! 取るんじゃねぇ!」
「うるせぇ! さきに依頼書を取ったもんがちだろ!」
「うるさーい! 喧嘩するならギルドの外でやんなさいよ! もし続けるなら私が相手になるわよ?」
「げぇ、クリスかよ。悪かったから見逃してくれ」
「わ、悪かったって。もう大人しくするから勘弁してくれ」
当然だけど俺は一度も掲示板のところに来たことはないので、今回が初体験だ。
目の前でこんなことが起きるなんて思っていなかったのでワタワタしていると、青髪の女性が屈強な男たちの間に割って入ると、あっという間に喧嘩を抑え込んだ。
女性とりては身長が高く、170センチ近くはあるだろうか、その態度も相まってとてもかっこよく見える。
「す、すごい……」
「気にしなくて良いからねぇ。初心者さんを守るのも私達冒険者ギルドの職員の仕事なんだからさ」
「ありがとうございます……かっこいい……」
クリスさんがにこりと満面な笑みを浮かべたので、目鼻立ちがはっきりしていて美しい顔におもわずみとれてしまった。ポロリと本音が漏れてしまったが、クリスさんは少し引きつった笑みを浮かべた。
「それで、君は依頼を受けに来たんだよね? どの依頼を受けに来たの?」
クリスさんが諍いを止めてくれたおかげで、今は依頼掲示板の前が今までよりもすいている。
すぐに人がごちゃごちゃして目当ての依頼を探しにくくなるだろうし、さっさと探しちゃおう。
今回俺が受けようと思っているのはバーストチキンの討伐だ。体長70センチ程度の真っ赤な鶏なのだ。こいつの依頼の難易度は最低ランクだが、それは討伐に限ってのことだ。
バーストチキンの肉はとても美味で高値で取引されている。それは討伐は出来ても綺麗に確保することが出来ず、自分の身が窮地に陥ると自爆するからだ。
その状態になる前に一瞬で仕留めなければいけないので、討伐難易度は低いわりに肉の値段が高値で取引されている。普通の冒険者なら一番最初に受けるような依頼ではないけど、俺の能力があれば討伐に一番適したモンスターだ。
「これを受けたいです」
「バーストチキン討伐かぁ。君、これが初めてみたいだけど本当に大丈夫なの?」
掲示板に貼られていたバーストチキンの依頼書を剥がしてクリスさんに依頼書とギルドカードを提出すると怪訝な顔を向けられてしまった。
俺のギルドカードにはまだ何も記載されていないので、これが一番最初の依頼であるということがぱっと見で分かってしまう。バーストチキンはその質の悪い習性のせいで最下級の依頼でもトップクラスの危険が伴う。
クリスさんはお前初めてなんだったらもっと楽な依頼にしろよと目で訴えてきてるんだろう。
その心配はありがたいけど不要だ。
「大丈夫ですよ。ちょっと特殊なスキルを持ってるんで」
「それなら良いけど、無茶はしないようにね」
ギルドカードには個人が所有するスキルがどんなものまでかは記載されないし、それを聞くのはマナー違反とされている。俺がクリスさんに平気であるという旨を伝えると、渋々ながら引き下がってくれた。
「大丈夫ですよ。初めての依頼ですしばっちり決めます」
「それじゃバーストチキン5羽の討伐をお願いします。依頼の期限は3日以内になってるから、強から3日以内に冒険者ギルドに報告に来てね。来ないと依頼失敗になっちゃうから」
「了解しました! それでは、頑張ってきます」
依頼も無事受けることができたので、心配そうなクリスさんに背を向けてギルドから立ち去る。
「よっし! 頑張るぞー!」
ギルドを出て空を見上げると、どんよりと黒い雲が空にかかっている。
太陽が出る気配もなく、街もどことなくくらい雰囲気だ。
初めての冒険なので快晴の中気持ちよく狩りに行きたかったけど、仕方ないか。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
転生先はご近所さん?
フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが…
そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。
でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる