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ハッとして目が覚めた。
目を開けたままボーッと天井を見てる。
あれ?何だっけ?なんかとんでもない事が・・・。
あーー。えっと??
悪い夢にうなされた時の様に、一瞬でハッキリと目が覚めた筈なのに。
う?・・・?・・・うさ・・・ぎ?




――――――うさが!!そうだ!


パッと体を起こして周りを見回しても、ベットの中には私しか居ない・・・。

よかった夢か。そうだよね。
安心して溜息が出た。

うさぎがあんな、パッチリお目が少しタレ目で緩くカールした薄茶のフワフワした髪に、透ける様な緑の目の美少年。極めつけが、うさ耳って!!
可愛すぎか!ないわー。それも、迫られた挙句に・・・。

昨日は、伊坂君が衣奈に頼み込んで押しかけてきたりと、うるさくて大変だった。伊坂君なりに心配したらしく連絡が来てたけど、それどころじゃないって突っぱねた結果・・・我が家に来てしまった。

うさのお見舞いって、人参とか果物も持ってきてくれたのに伊坂君が近づいて行ったら、うさは逃げ回ってソファの下に避難した。大きな目をまん丸にして、ダンっダンって床をふみ鳴らして出て来なかった。うさぎが警戒してる時にする行動らしくてビックリした。出てきたと思ったら私にピッタリくっついて触ろうとする伊坂君に、「 グゥッ 」って鳴き声で嫌そうにしてた。そんな風にも鳴くんだって初めて知った。衣奈には大人しくしてたから、俺も触りたいのにってショック受けてた。その後に、私が作ったご飯が食べたい!!って、伊坂君が言い出すから皆んなでワイワイ時間を過ごした。
うさは怪我もしてるから心配だけど、逃げられてる伊坂君も結構可哀想だった。
慣れない、うさぎの看病と騒がしさにきっと疲れたんだろう。

薄く開いたドアからリビングに行くと、うさがピョンピョンと飛び跳ねてきた。
うん。どう見てもやっぱり、うさぎ。
やっぱり夢!

撫でてあげると嬉しそうに、伸びをしながら欠伸をしていてその姿だけでも可愛い。
気持ちいいのか、コテンって横になってされるがまま。フワフワサラサラしてて、耳からおなかまでゆっくり撫でてあげる。
あんまりにも気持ちいいから、ついつい何回も撫でてしまう。



「 このままずっと撫でてたいけど、ダメだダメ 」


うさに、ご飯食べてもらわなきゃ。昨日もそんなに食べなかった。
うーん。うさぎイコール人参って思ってたけど、人参は食べてくれなかった。
ご飯食べようね。って声を掛けて立ち上りキッチンへ。りんごは食べてたけど他は何が?後で、うさぎ用のフードでも買って。


「 僕も、叶多が作ってくれたご飯が食べたいな 」


突然聞こえてきた声に体がビクッとする。驚いて振り向こうと、顔を動かそうとしたら後ろからギュっと抱きしめられた。


「 ギャァー・・・むぅ・・・ぅ 」


驚いて出た声を片手で塞がれてしまう。
逃げ出したいのに、お腹に回った腕のせいで身じろぎさえおぼつかない。
――夢じゃない!!そんな。


「 落ち着いってって、取って食べちゃう訳じゃないって。叫んだら近所迷惑でしょ? 」

「 むぐっ・・・うー、ぐっ・・・ 」


両手で、覆われてる手を引き離そうと頑張る。バシバシ叩いてるけど力が入る体勢でも無いから意味がない。
少し身を屈めたのか、耳の側で声が聞こえてきた。

「 それとも・・・取って食べっちゃた方がいい? 」


カァッと顔に熱が集まって体が動かないのをいい事に、そのまま耳朶を形に沿って舐められる。


「 ふぐっ! 」


生暖かい舌の動きに体の力が抜けそうで、どうにか両足で踏ん張りながら、逃げ出せないか考えてる。チュウって音がした後ゆっくりと、うさが覆っていた手を離してくれた。


「 また、意識失われちゃっても困っちゃうからね 」


クスクスと笑われて、一気に怒りがこみ上げる。回ってた腕も振り払って、うさの方を振り返る。
緑の瞳が楽しげに私を見ている。
私は、うさの耳に目がいってしまう。
見た目は、人と同じだけど・・・。
やっぱり、うさぎの耳・・・。
って!なんで裸なの!


「 な、ちょっ、ちょっと 」


慌ててまた、後ろを向く羽目になった。
驚きすぎて、ヘナヘナと座り込んでしまいそうになる。そのまま後ろ向いてくれたら、ちょうど良いんだけどなぁ。って意味不明な事を言うから聞き返したら


「 フェラしてもらうのにちょうど良いかな。って 」

「 はぁっ!! 」

本気で殴りたい。このど変態うさぎが!!
また、クスクスと笑われて腹が立つ。このまま、見ないように移動して服が無いか探しに行かないと。


「 付き合ってた人の服があるかもしれないから、それまでシーツでも被っててよ! 」

あー。もう目のやり場に困るし、聞きたい事もこれじゃ、いつまで経っても聞けやしない。なのに、うさはムッとした口調で。


「 他の、雄の匂いがついた服着たくない 」


着たくないって!あったとしてもちゃんと洗濯してあるしって言ったのに。
獣人の嗅覚は特別だから、洗濯してあったとしても嫌。ってどうしろっていうの。


「 まぁ、仕方ないけど。探してもらう間にシャワー借りても良い? 」

「 え、?あ、あぁ、はい。どうぞ 」


じゃあ借りるねって、うさがバスルームに向かう気配がする。
ちょっと助かった様な気がする。
思いっきり息を吸い込んで、気持ちを落ち着かせる。










「 わぁー。おいしそう!いただきます! 」


目の前では、緑の瞳のタレ目のうさ耳男子が、嬉しそうにバスローブ姿で食事を始めるという奇妙で優雅な?状況だ。
私には、大き過ぎて使っていなかったのを思い出して、取り敢えず引っ張り出して着せた。裸で居られるよりは断然マシなんだけど、見た目がその辺の男性より整い過ぎてる分、似合うっていうか違和感無さ過ぎてなんとも・・・。

モグモグ食べ進めるうさは、細身の割にはよく食べる。まったくもって食べてる姿に違和感はまるで無い。ちゃんと食べてくれた方が怪我も早く治るだろうから全然いい事なんだけど。
だけど・・・聞きたい事は山ほどある。聞いてもいいんだろうか?
あんまりにもジッと見つめてたのが気になったのか、どうかしたの?って小首を傾げて聞かれれば、薄茶の髪がふんわり揺れる。
カッコいいとか可愛いとかをちゃんと理解してる仕草。
いわゆる確信犯だ。


「 あー。えっと・・・おかわりあるよ。たくさん食べて 」


空になりそうなお皿に追加で持ってこようと背を向ける。


「 叶多は優しいね。気味悪がったりしないんだね 」


気味悪いとは思わない。
ただ不思議だな。とは思ってる。
まだ、夢なんじゃ無いかな?っていう感じ。
聞きたい事は聞いて大丈夫だよ。って言ったうさに、お皿をテーブルに置きながら、じゃあ遠慮なくって思って聞いてみる。


「 うさは、うさぎなの?人間なの? 」

「 うーん。どっちも。獣人だからね、基本的な姿は人 」

「 ・・・なんで怪我してたの?」


カラスに襲われた怪我にしては、酷い部類だったと思う。姿が姿だから致し方なかったのか。それに怪我の治りも早いような気がする。


「 カラスに襲われたのは、大した傷じゃないよ。獣人って、生命力強いから治癒も人より断然早いの 」

「 じゃあ、他の事で怪我したって事だよね? 」

「 うーん。そうだけど・・・秘密 」

「 名前は?うさ・・・じゃないよね? 」

「 うん。うさでいいよ 」

って返事のようで質問の答えにはあんまりなってない。それ以外にも思い浮かんだ事を聞いてみたけど、人差し指を唇にあてて楽しげに秘密って言われてしまうと、ため息しか出てこない。本当分かっててやってるだろ!!


「 ごちそうさまでした!美味しかった 」

「 そりゃ、どうも。お粗末様でした 」


これからどうしたら良いもんか・・・。悩んでいたら、うさから切り出してきた。ってゆうより頼まれた。


「 叶多、ちょっとお願いがあるんだよね 」

紙とペン貸してって、サラサラと書いたメモを渡された。
地図ともう一枚は・・・何語?
英語じゃないけど。読めない。
ここに行って、これ渡してくれたら分かるよ。って、随分ザックリあっさりな頼みごとだな。
服用意するから自分で行って!って言ったら、怪我してるうさぎを放り出すの?って目をウルウルさせてる。もう!!


「 戻れてるのも昨日、叶多から体液を分けて貰ったから一時的だよ。移動してる途中に、うさぎに戻ったらまた、カラスとか猫に襲われちゃうよ?それでもいいの? 」

「 よ、よく無いけど・・・。た、体液って!分けた覚えは無い!!」

「 キスしたよ?唾液も体液の一部でし。少しは足しになるかなってぐらいだから、セックスしてくれるんなら、ちゃんと戻れるようになるよ?どう? 」

どう?ってどうもこうも無いわ!!
思い出しただけで、どっと変な汗が出てくる。グッと腕を引っ張られて、椅子に座ってたうさに正面から抱きつく形になる。
いや、ちょっと・・・顔が、胸にあたる。そんな立派な胸でも無いですけど。ジタバタもがく。気を抜いたのがいけなかった。


「 ドキドキしてる。叶多、可愛い。気持ち良くていい匂い 」


ってやめて!ギュって抱きつくな!
上目遣いで見ないで欲しい。私が、男になったような気分になる。どっちがどっちなんだ。
処女じゃ無いみたいだけどセックスってどうするか、一から説明する?って、ニヤニヤと楽しそう。からかわれてる!面白がってるだろ!!この・・・。


「 キスで、とろとろになった叶多に・・・僕の 」


全てを雄弁に説明すんな。
いい加減我慢の限界。


「 ちょっと黙れよ。エロ脳うさぎ!! 」


いくらか、私の声も低くなってたと思う。怒ってたから当然なんだけど。
両手で、うさのほっぺたをギューっと押しつぶした。可愛いうさぎも、ちょっと変な顔になっていたから少しは気が済んだ。

不貞腐れ気味な、うさをほっといて出かける準備をしてきたら、うさがいなかった。とゆうかバスローブに埋もれて、うさぎの姿で眠ってた。
ここに行けば大丈夫なのね?って覗き込みながら聞いたら、眠そうな目で「 キュッ 」って鳴いたから返事?なんだろう。
姿が保てなくて不安定なのが、本当なのは分かった。埋もれるなら寝床の方が良いかと思って、そっと移動しておいた。ウトウトするうさぎの姿のうさは、やっぱりどうしようもなく可愛いと思いながら、撫でてしまう。


「 行ってくるね 」
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