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シャッターを切る音。
カメラマンの、細かな要望に答えながらクルクルと色々な表情をして、ふんわり揺れる薄茶の髪とパッチリして少しタレ目な、緑の瞳が印象的。着ている服も違和感なく抜群に似合ってる。
私が知ってる、うさとはちょっと違う。
「 ラビィ君、ちょっと目線上げて 」
そうそう!いいねー。ってカメラマンさんの声も、凄く弾んでる様な気がする。こういう場所に携わった事無いから分からないけど、ウキウキしてますよね?ラビィって、そのまんまだし。
今の私の心の中は、絶えずこんな事しか思い浮かばない。
( どうして?私がここにいるの!? )
広告担当が、話を進めてた芸能事務所のタレントさんを起用しない事になったらしい。急遽、代わりに起用される子が私の知り合いだから、会いたいって言ってる。と、うさを探し回っていた時に慌てたように呼びに来られた。
「いやいや、そんな知り合いいないし。それどころじゃないんですよ 」
急いでるのはこっちだよ!お昼休み終わっちゃう。早く見つけなきゃ。
「 うぉっ、えっ?ちょっと引っ張らないで !!うさぎを・・・見つけないと・・・ 」
引きずられる様に戻ったオフィスは、
心なしか周りがザワザワうるさい。
今は本当それどころじゃ・・・。
「 叶多!!見つけた!! 」
グッと後ろに引っ張られたと思ったら、そのままギュっと抱きしめられてる。
遠くから、キャーキャー騒いでる声も聞こえてくるけど、突然抱きついてくる知り合いは居ない。
馴れ馴れしい。振り払うように振り返って唖然とした。
あっぁぁぁぁ!!!!!!うさぁ!!!
「 叶多、僕の事忘れちゃった? 」
しょんぼりしてる姿が小動物を彷彿とさせられる。
けど耳が無い。うさぎの長い耳。
全部、幻だったとか?
いやいや、待て待て。
「 あっ?えっ?いや・・・えっ? 」
いや。まだ待て理解できない。
何が起こってる?
ラビィ君と、知り合いなんですか!?
って女性陣から声が上がってるけど、まったく頭に入ってこない。
知ってるも何も。
『 ラビィ 』
って誰?
「 僕の事、本当に忘れちゃった? 」
って身動きも取れないくらいギュっと正面から抱きしめられてる。
( 話し合わせてね )
耳元で囁かれた言葉すら、理解するのが難しい。合わせる?って何を?
頭グルグルする。
「 あっ、えっと・・・ ちょっと、苦しい 」
「 ごめんね 」って腕を離してくれた、うさをマジマジと上から下まで見てみる。普通に失礼だと思うけど。
小首を傾げてニッコリ笑ってるのが多少イラッとさせられる。
両手を伸ばして背伸びをしながら、うさのフワフワした髪に手を伸ばして、ワシャワシャと頭を撫でてみる。
( 耳どこいった!!やっぱ幻だったの!! )
くすぐったいって笑い声が聞こえてくるけど、話を合わせるよりもそっちの方が気になる。
「 叶多は変わらないね。小さい頃もよくそうされたもん。思い出した? 」
「 え、あー。うん 」
なんとも曖昧な返事しかできない。
考えてる内にどんどん話が進んでいってしまっていた。
広告の代役がうさらしいけど・・・最近売り出し中のモデルですって!?
なんじゃそりゃ!
知るかそんなん!!
周りの子達の目がキラッキラしてるから嘘ではなさそうだけど。
うさぎでモデルで獣人です?
ってどれが本当なんでしょうか。私がバカで疎すぎ?
「 ・・・叶多!!ってば、!!ねぇ、だから宜しくね 」
「 えっ?なにが? 」
「 撮影の間、僕の事よろしくね 」
『 よろしく 』も、なにも広告担当じゃないし、ぜんっぜん聞いてなかった。
「 それから、そっちのちょっとイケメンな君もね 」
愛想よくヒラヒラと伊坂君に手を振ってる。いつの間に後ろに居たの!?
伊坂君もうさを眺めてるけど、正しい反応だよ!
ウチら部署違うよね??って伊坂君に相槌を求めてしまう。さぁってリアクションの伊坂君に私も首を傾げて困ってしまう。
「 叶多は、なんでもそつなくこなせちゃうみたいだから社長さんが、僕に付いててもらって良いって!! 」
はぁ?なにすればいいの?って管轄違いだから!って叫びたい。
叫んだらどうなるんだろう。
「 君は、叶多が教育してる子みたいだから、ついで 」
悪びれる様子もなく、話すうさの姿は人間にしか見えない。
人間と獣人の違いなんてザックリ話してもらった事くらいしか分からないし。
周りの子達が羨ましがってるのが伺えるけど。どうしたもんかな。
代わってあげるよ!喜んで!
「 じゃあ、細かい話は後であると思うからまた後でね 」
突然現れたと思ったら訳の分からない事になってる。これ、誰が説明してくれるのかな?
♢
それからしばらくして社長から呼び出しがかかった。
誰か説明してくれと思ったけど。
マネージャーと私と伊坂君の3人だ。マネージャーは戦々恐々としている。
そうだよね。社長って一般社員からしたらそうそう顔合わせないもんね。
気を抜いたらぶっ倒れるんじゃなかろうか。秘書の方が通してくれた応接セットに座ってるけど、テーブルの座り位置なんて研修で習った以来使うことなんて無かったな。って内心冷や汗ものだ。
しばらく待ってたら、社長が来た。
腕に、うさを抱えてる。
「 はい。朝比奈さん。廊下で迷子になってたよ。怖がらずに居てくれて大変良い子だね 」
嬉しそうな社長の手から、うさを預かった。手に力が入ってしまう。
( 一体何してんの!? )
ミュって子猫みたいな声が聞こえてきてるけど、そんなんじゃ誤魔化されない。甘えたって許されない。
「 あ、ありがとうございました 」
恐々と頭を下げると、社長と目が合う。
やっぱり、ぱっと見は仁王像。
「 いや、こちらこそ。君がラビィ君と知り合いだとは思わなかった。なかなかオファーも取れないモデルだし 」
たまたまオフィスで君を見かけて、幼馴染が働いてるならと受けてくれる事になったんだよ。そう社長自ら手短に説明してくれる。ラビィ・・・くん。ねぇ。幼馴染・・・。ねえ・・・。
うさの耳を見たらピクピクと動いてる。
「 ラビィ君本人からの要望で、朝比奈さんが撮影に同行してくれるなら正式にオファーを受けるって事で契約を進めたんだけど。問題あるかな? 」
「 いや!!大丈夫です!!朝比奈さんなら問題ありません!! 」
マネージャーが割って返事をしてるけど、私にも仕事はあるんだけど・・・。
要は社長命令って事ですよね?
うさのマフと呼ばれる、首肉の様な場所をモッフモッフと念を送りながら、揉み揉みしてしまう。うさはひたすらジッとしてるけど目がパッチリ耳がピンッとしていて、私の怒りを肌で感じている。
「 ラビィ君も、個人でスケジュール管理をしていて色々と忙しみたいで 」
「 はい。分かりました。お役に立てるか分かりませんが、伊坂くんと頑張ります 」
普段そこまでフル活用されない満面の笑顔でこう言うしかあるまい。マネージャーが、2袋目の胃薬を飲んでいるのも見たし。逆に身体に悪そうだと思ったけど。
伊坂君は納得いってないって顔してるけどお仕事だから仕方ないって後で言い聞かせておこう。
そしてこの話の張本人うさに直接聞こう。そう思いながら、うさのマフを抓るようにモシャモシャしながら笑顔で答えた。
「 じゃあ、ちょっと休憩しましょうか 」
カメラマンさんの声で、フッと我に返る。
カメラマンの、細かな要望に答えながらクルクルと色々な表情をして、ふんわり揺れる薄茶の髪とパッチリして少しタレ目な、緑の瞳が印象的。着ている服も違和感なく抜群に似合ってる。
私が知ってる、うさとはちょっと違う。
「 ラビィ君、ちょっと目線上げて 」
そうそう!いいねー。ってカメラマンさんの声も、凄く弾んでる様な気がする。こういう場所に携わった事無いから分からないけど、ウキウキしてますよね?ラビィって、そのまんまだし。
今の私の心の中は、絶えずこんな事しか思い浮かばない。
( どうして?私がここにいるの!? )
広告担当が、話を進めてた芸能事務所のタレントさんを起用しない事になったらしい。急遽、代わりに起用される子が私の知り合いだから、会いたいって言ってる。と、うさを探し回っていた時に慌てたように呼びに来られた。
「いやいや、そんな知り合いいないし。それどころじゃないんですよ 」
急いでるのはこっちだよ!お昼休み終わっちゃう。早く見つけなきゃ。
「 うぉっ、えっ?ちょっと引っ張らないで !!うさぎを・・・見つけないと・・・ 」
引きずられる様に戻ったオフィスは、
心なしか周りがザワザワうるさい。
今は本当それどころじゃ・・・。
「 叶多!!見つけた!! 」
グッと後ろに引っ張られたと思ったら、そのままギュっと抱きしめられてる。
遠くから、キャーキャー騒いでる声も聞こえてくるけど、突然抱きついてくる知り合いは居ない。
馴れ馴れしい。振り払うように振り返って唖然とした。
あっぁぁぁぁ!!!!!!うさぁ!!!
「 叶多、僕の事忘れちゃった? 」
しょんぼりしてる姿が小動物を彷彿とさせられる。
けど耳が無い。うさぎの長い耳。
全部、幻だったとか?
いやいや、待て待て。
「 あっ?えっ?いや・・・えっ? 」
いや。まだ待て理解できない。
何が起こってる?
ラビィ君と、知り合いなんですか!?
って女性陣から声が上がってるけど、まったく頭に入ってこない。
知ってるも何も。
『 ラビィ 』
って誰?
「 僕の事、本当に忘れちゃった? 」
って身動きも取れないくらいギュっと正面から抱きしめられてる。
( 話し合わせてね )
耳元で囁かれた言葉すら、理解するのが難しい。合わせる?って何を?
頭グルグルする。
「 あっ、えっと・・・ ちょっと、苦しい 」
「 ごめんね 」って腕を離してくれた、うさをマジマジと上から下まで見てみる。普通に失礼だと思うけど。
小首を傾げてニッコリ笑ってるのが多少イラッとさせられる。
両手を伸ばして背伸びをしながら、うさのフワフワした髪に手を伸ばして、ワシャワシャと頭を撫でてみる。
( 耳どこいった!!やっぱ幻だったの!! )
くすぐったいって笑い声が聞こえてくるけど、話を合わせるよりもそっちの方が気になる。
「 叶多は変わらないね。小さい頃もよくそうされたもん。思い出した? 」
「 え、あー。うん 」
なんとも曖昧な返事しかできない。
考えてる内にどんどん話が進んでいってしまっていた。
広告の代役がうさらしいけど・・・最近売り出し中のモデルですって!?
なんじゃそりゃ!
知るかそんなん!!
周りの子達の目がキラッキラしてるから嘘ではなさそうだけど。
うさぎでモデルで獣人です?
ってどれが本当なんでしょうか。私がバカで疎すぎ?
「 ・・・叶多!!ってば、!!ねぇ、だから宜しくね 」
「 えっ?なにが? 」
「 撮影の間、僕の事よろしくね 」
『 よろしく 』も、なにも広告担当じゃないし、ぜんっぜん聞いてなかった。
「 それから、そっちのちょっとイケメンな君もね 」
愛想よくヒラヒラと伊坂君に手を振ってる。いつの間に後ろに居たの!?
伊坂君もうさを眺めてるけど、正しい反応だよ!
ウチら部署違うよね??って伊坂君に相槌を求めてしまう。さぁってリアクションの伊坂君に私も首を傾げて困ってしまう。
「 叶多は、なんでもそつなくこなせちゃうみたいだから社長さんが、僕に付いててもらって良いって!! 」
はぁ?なにすればいいの?って管轄違いだから!って叫びたい。
叫んだらどうなるんだろう。
「 君は、叶多が教育してる子みたいだから、ついで 」
悪びれる様子もなく、話すうさの姿は人間にしか見えない。
人間と獣人の違いなんてザックリ話してもらった事くらいしか分からないし。
周りの子達が羨ましがってるのが伺えるけど。どうしたもんかな。
代わってあげるよ!喜んで!
「 じゃあ、細かい話は後であると思うからまた後でね 」
突然現れたと思ったら訳の分からない事になってる。これ、誰が説明してくれるのかな?
♢
それからしばらくして社長から呼び出しがかかった。
誰か説明してくれと思ったけど。
マネージャーと私と伊坂君の3人だ。マネージャーは戦々恐々としている。
そうだよね。社長って一般社員からしたらそうそう顔合わせないもんね。
気を抜いたらぶっ倒れるんじゃなかろうか。秘書の方が通してくれた応接セットに座ってるけど、テーブルの座り位置なんて研修で習った以来使うことなんて無かったな。って内心冷や汗ものだ。
しばらく待ってたら、社長が来た。
腕に、うさを抱えてる。
「 はい。朝比奈さん。廊下で迷子になってたよ。怖がらずに居てくれて大変良い子だね 」
嬉しそうな社長の手から、うさを預かった。手に力が入ってしまう。
( 一体何してんの!? )
ミュって子猫みたいな声が聞こえてきてるけど、そんなんじゃ誤魔化されない。甘えたって許されない。
「 あ、ありがとうございました 」
恐々と頭を下げると、社長と目が合う。
やっぱり、ぱっと見は仁王像。
「 いや、こちらこそ。君がラビィ君と知り合いだとは思わなかった。なかなかオファーも取れないモデルだし 」
たまたまオフィスで君を見かけて、幼馴染が働いてるならと受けてくれる事になったんだよ。そう社長自ら手短に説明してくれる。ラビィ・・・くん。ねぇ。幼馴染・・・。ねえ・・・。
うさの耳を見たらピクピクと動いてる。
「 ラビィ君本人からの要望で、朝比奈さんが撮影に同行してくれるなら正式にオファーを受けるって事で契約を進めたんだけど。問題あるかな? 」
「 いや!!大丈夫です!!朝比奈さんなら問題ありません!! 」
マネージャーが割って返事をしてるけど、私にも仕事はあるんだけど・・・。
要は社長命令って事ですよね?
うさのマフと呼ばれる、首肉の様な場所をモッフモッフと念を送りながら、揉み揉みしてしまう。うさはひたすらジッとしてるけど目がパッチリ耳がピンッとしていて、私の怒りを肌で感じている。
「 ラビィ君も、個人でスケジュール管理をしていて色々と忙しみたいで 」
「 はい。分かりました。お役に立てるか分かりませんが、伊坂くんと頑張ります 」
普段そこまでフル活用されない満面の笑顔でこう言うしかあるまい。マネージャーが、2袋目の胃薬を飲んでいるのも見たし。逆に身体に悪そうだと思ったけど。
伊坂君は納得いってないって顔してるけどお仕事だから仕方ないって後で言い聞かせておこう。
そしてこの話の張本人うさに直接聞こう。そう思いながら、うさのマフを抓るようにモシャモシャしながら笑顔で答えた。
「 じゃあ、ちょっと休憩しましょうか 」
カメラマンさんの声で、フッと我に返る。
応援ありがとうございます!
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