結 ~むすび~

依空

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終章2

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 赤ちゃんは元気な産声と共に産まれた。幸せだった。
 生を感じる。生きていて良かったと思う。

 「赤ちゃんの名前、どうする?」
 奈菜は疲れきった声で僕に話しかける。
 「愛。そして海」
 「何それ?」
 「愛海がいい」
 「可愛いね。とてもいいと思う。でも、なんで愛海なの?」
 「人を愛し、愛されてほしい。そして、空から一番遠い海にいてほしい。僕らが空に行くまで」
 「そうだね。いい名前」
 どうしても、海をつけたかった。お姉ちゃんも琴理も乃々も、みんな空に行った。
 僕たちが陸にいる限り、僕たちの前からいなくならないでほしい。
 僕のかってなわがままかもしれない。
 でも、たくさんの人を空に見送ってきた立場からすれば、もう、何も失いたくはない。
 愛海。
 遠くに行かないでー。
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