結 ~むすび~

依空

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終章3

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 奈菜と愛海が退院してから一週間後のことだった。奈菜が慌てながら、僕の職場に電話をしてきた。
 「あのね、星有。どうしよう」
 「次の時間、あと3分で次の授業が始まるんだよ。放課後に連絡するね。バイバイ。愛海をよろしく」
 僕は無理やり電話を切ってしまった。

 放課後。
 僕は奈菜に電話をかけた。
 「もしもし、奈菜。さっきはごめん。どうしたの?」
 「…。」
 奈菜は泣いていた。
 「奈菜、泣かないで。大丈夫だから。奈菜、どうしたの?今すぐ帰ろうか?」
 「大丈夫って軽く言わないで」
 奈菜の怒鳴り声が耳に響いた。
 「ごめん、奈菜」
 なぜか、とても嫌な予感がした。
 「奈菜、愛海は?泣いてない?」
 「泣いてなんかない」
 「それなら、寝てるのかな?それとも、遊んでるのかな?」
 「もうやめて」
 再び奈菜は怒鳴り声をあげた。
 「星有も気づいてるでしょ?分かってるんでしょ?だから愛海のことばかり聞くんでしょ?」
 「奈菜、愛海は今、どうなんだ?」
 「桜庭病院」
 病院名だけ残して電話は切られた。
 胸騒ぎがする。
 仕事をきり辞め、そのまま病院に向かった。

 そこには、奈菜がいた。
 泣き崩れる奈菜。
 奈菜の傍には奈菜の両親がいた。
 でも、愛海がいない。
 「奈菜、一人にさせて、ごめん」
 「なんで、なんでなの。私は愛海を殺してしまった。愛海を起こそうとした時、愛海は息をしていなかった。昨日はあんなに元気だったのに。昨日、私は何かしてしまったのかな。私のおっぱいが悪かったの?私、変なものでも食べちゃったのかな?私、私…」
 担当医が寄ってきた。
 「蒼原さん、愛海ちゃんは、乳幼児突然死症候群により、息を引き取りました」
 「それって…」
 「原因が全く分かりません」
 それでも奈菜は泣き叫ぶ。
 「奈菜!奈菜は悪くない。誰も悪くないんだ。先生だって言っただろう?愛海の死は、誰も予測出来なかった。奈菜のせいではない」
 「じゃあ、星有は?星有はどうなの?私が電話した時、仕事があるからって切ったよね。あの時、星有にも愛海にも見捨てられたと思ったの。星有にも責任はあるよね?」
 僕はただ、奈菜の目を見つめる。
 「昨日愛海を一緒に寝かしつけてくれたのは星有でしょ?その時、星有が愛海を殺したんじゃないの?私が見てないうちに星有のお姉さんと妹さんと友達のいる空に、見送ったんじゃないの?」
 何も言えない。
 言いたいけど言えない。
 喉の奥に、何かが詰まっているような感じがする。
 「それとも、星有は愛海を海の奥底に沈めたの?星有の周りの人は空にいるから、遠ざけようとして海に沈めたんでしょ?」
 「奈菜…」
 「正解なの?私の考えは当たってるの?星有が愛海を殺したの?」
 そこからは覚えていない。突然目の前が真っ暗になった。

 「大丈夫ですか?蒼原さん。奥さん、奥さんの両親に支えられながら、両親の家に帰りましたよ」
 看護師が僕に伝えてくる内容も、耳を通り過ぎていく。
 「死にたい」
 久しぶりにこう思った。
 「蒼原さん、今なんて言いました?」
 「えっ、あの、いや…」
 「そんな事言ったら、蒼原さんのお姉ちゃんの梨結ちゃんと妹の琴理ちゃんから怒られますよ」
 えっ。なんでこの人、姉と妹を知っているんだ?
 「なんで姉と妹を…」
 「梨結ちゃんを看ていた時があってね。梨結ちゃんは蒼原さんのことを楽しそうに話してたよ。もし、死にたいとか、疲れたとか言ったら、しばいてね、って言われたことがあるの。流石に私は蒼原さんのことをしばこうとは思わないけど、もし梨結ちゃんがいたら、本当にしばいてそうね」
 お姉ちゃんはそんな事を言っていたんだ。でも、ごめん。
 僕は死にたい。生きるのに疲れた。お姉ちゃんに会いたい。琴理にも、乃々にも、愛海にも。
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