結 ~むすび~

依空

文字の大きさ
上 下
5 / 25

哀傷

しおりを挟む
 私は死んだも同然だ。
 今日は退院の予定だった。
 それなのに、先生が言ったのは、再発。一番聞きたくない言葉だった。
 泣いた。
 どうしたらいいか、分からなかった。
 星有にはどう伝えたらいいの?
 私の退院を待ち望んでいた星有。
 ごめんね。頑張ったはずなのに。
 希望なんて、空に飛んでいっちゃったのかな。
 泣くのにも疲れて、ただ空を見上げていた。

 「梨結ちゃん、星有くんが会いたいって言ってるんだけど、大丈夫かな?」
 正直、とても迷った。
 「星有くんに、帰ってもらおうか」
 「嫌です。星有と会いたい」
 私の寿命なんか、きっと長くはないだろう。
 死ぬ前に、たくさん星有との思い出を作りたい。
 病室に入って来た星有は、心の中の何かがぽっかり抜けたようだった。
しおりを挟む

処理中です...