結 ~むすび~

依空

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 僕も高校生になった。
 中学校を卒業して以来、垣田とは疎遠になった。真逆の高校へ通っているらしい。
 でも、変な噂が流れたことがある。垣田が学校に通っていない、と。
 僕は今の生活をどうやって生きるかを考えるのに一生懸命で、垣田の事なんて考えている暇がなかった。

 ある日のホームルーム、見た事のある文章が配られた。
 命の輝きについての文章だ。
 そういえば、この文章は中学生の時に道徳の時間で読んだものだ。
 あれ?これは作者名らしきものが書いてある。
 えっ…。
 僕は目を疑った。
 そこには、仰屋戯梨結、と書いてある。
 仰屋戯というのは母親の旧姓で、父親と離婚した際、姉は母親へついていったためこの苗字なのだ。
 仰屋戯も梨結もそんなに多くはない名前だから、これはきっと、僕の姉が書いたのだろう。しかも、僕に向かって。
 姉は、いつも優しかった。その優しさを、改めて今、気づいた。
 僕は無知だった。
 この文章を姉が僕の為に書いていたとは知らずに、僕は空へ羽ばたこうとしていた。
 過去の僕に言い聞かせてやりたい。だけど、今の僕がこの世界にいる理由が分かった気がする。
 僕が将来を生きる理由に繋がる。未来に結ばれる。
 お姉ちゃん、ありがとう。
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