結 ~むすび~

依空

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僥倖

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 時は経った。
 僕は大学へ入学した。
 そして、僕は教師になった。
 愛する人にも巡り会えた。
 そして、僕は、数ある巡り会いの中の運命の人と結婚する。
 お姉ちゃんも呼びたかった。
 お父さんも、お母さんも、琴理も、乃々も。
 僕の家族の席はない。
 でも、今からに期待している。
 彼女は僕を分かってくれた。
 辛い時も、泣き出しそうな時も、ずっと側にいてくれた。その優しさは、まるでお姉ちゃんの温かさのようだった。
 僕は、自信を持って言うことができる。お姉ちゃん、僕はお姉ちゃんと同じくらい素晴らしい人を見つけたよ。


 お母さん、看護師として働いていた貴方を誇りに思います。
 お父さん、僕はよく、貴方に反抗してしまった。でも、今となっては悔やんでいます。もっと話をしたかったな。
 お母さんもお父さんも、最期は顔も見れないくらい、歪んでいました。両親とも事故で亡くすのは本当に辛かった。お姉ちゃんは病気を重ね、日ごとに削れていく命を精一杯輝かせながら亡くなった。琴理は、僕に姿を見せることもしませんでした。戸籍にも残っていません。でも、空にいるみんなに見守られていると思うと、なぜか力がみなぎってくる。
 ありがとう。みんなのおかげで強くなれた。

 こんなスピーチでいいのだろうか。
 でも、僕は、僕の思っている事を素直に話せた。
 僕は僕になれた。僕が作った偽りの僕ではなくなった。
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