結 ~むすび~

依空

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番外編 父親

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 俺は昔から、正義感が強かった。
 そのせいで、妻も星有もたくさん傷つけてしまったと思う。
 そんな星有も、明後日で二十歳になる。大人になるんだ。

 二十歳になり、成人式を迎えた。
 星有は新品のスーツを身にまとい、凛々しく立っていた。
 星有が大人の階段を上る時はとても嬉しかった。
 一緒に酒を飲み、色々な話をした。数年前の星有とは全く違った。前を向いていた。
 社会にでても、素晴らしい大人になってほしい。
 俺はそう思っていた。
 そんな素晴らしい星有の姿を見る事ができるのも、あと数年後だ。
 嬉しさの反面、本当の意味でひとり立ちする星有への不安もあった。

 だけど、星有。ごめんな。
 俺は星有が21歳の時に死んでしまった。交通事故だ。元妻と同じだ。
 お前は生きろ。
 俺のかけがえのない息子だから。

 前を向いて、とにかく生きろ。
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