素直に同棲したいって言えよ、負けず嫌いめ!ー平凡で勉強が苦手な子が王子様みたいなイケメンと恋する話ー

美絢

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16. はい、終わり

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「クソ、狙うな!!!」

 有志によるドッジボールに参加していた。俺の運命は変わらない。狙われ続けて約10分。反射的に体が避けてしまう。どんな豪速球も俺を捉えることはできない。

「斎賀~がんばれ~!」

 いつの間にかギャラリーができている。別のクラスの人も応援してくれているが、早すぎて球が取れない。ドッジボールは球を当てて人を外に出すゲームだ。つまり球を投げなければ終わらない。ずっと敵陣でボールが回るだけ。

「えっうそだろ!?」

 足が滑って反射的に変な方向へ走り出す。狙撃手と目が合った。絶体絶命の危機に目を瞑るー・・・顔の前でバシン!!!と凄い音が鳴った。衝撃で尻餅をつく。死んだと思った。だから最後に助けてほしい人の声が聞こえたのだろう。そっと目を開けた。

「はい、終わり」

 本当に理人が、いた。さっきまで自分を狙っていたボールを持っている。しゃがみ込むと目の前にボールを持ってくる。おでこにコツン、と当たった。

「え?」
「アウト」

 拍手が起こるが事態が飲み込めない。呆然としながら周りを見渡す。理人は敵にボールを返した。さっきと同じくらい凄い音がして誰かが叫んでいる。

「待たせてごめん、帰ろうか」
「…ごめん、抜けるわ」

 手を差し伸べられる。握ると起き上がらせてくれた。パッパッとお尻を払ってくれる。軽く告げて手を振った。

 ***

「やっぱりドッジにすれば良かった」
「あれだけ投げれればそうだよなぁ」

 ボールを受け止めたであろう手をブラブラさせていた。朝礼台に置いてある数多のカバンから迷わず俺のを取る。凄いボールを受け止め超豪速球を投げていた。テニスがなければドッジを勧めたと思う。ブレザーを羽織って、自然と足が校門に向かった。

「てか、テニスって約束したよな?」
「だって姫野が、」

 先ほどの出来事を思い出す。昨日テニスにするよう説得したばかりだ。どうしてここにきて裏切る気になったのだろうか。バツが悪そうに視線を泳がせている。なぜ姫野の名前が出てくるのだろうか。

「…ドッジにするって言ったから」
「は!?二人で何考えてんの!?」

 なぜテニス部のエースがドッジボールを選ぶのか。いやでも、彼は毎日テニスをしている。気分転換に他の競技を選ぶ気持ちも分からなくはない。

「え、姫野はドッジなの?」
「何でもない顔をしてたけど二人で負けた」
「いいじゃん。この学校お前らのダブルス見たい奴らばっかだよ」
「興味ない」

 衝撃波を喰らった手のひらでチョキを作りながら理人は軽く頭を振った。冷めた目でこちらを見下ろす。そういえばここで朝別れた。

「朝の子どうだった?」
「ごめんねした」
「なるほど。帰りスーパー寄っていい?」

 振ったらしい。理人は姫野が好きだから仕方ない。前を向くと今度はしっかりと頷いた。外は梅雨特有の匂いがする。明日は雨だろうか。

「夕飯何がいい?」
「スオ」
「吸お?」

 吸おかぁ…お吸い物でも作るか。献立を考えながら駅に向かう。いつも通り定期を翳して電車に乗る。すぐに最寄駅についた。
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