18 / 38
16−2.習字 ※R18
しおりを挟む
「ハクヒ、自分の名前は書ける?」
生理が終わりに近づく頃、コウヤが気まぐれに尋ねた。薬の苦味に顔を歪めていると褒めるように頭を撫でる。抵抗する気になれず好きにさせたまま、考えた。小さく頷く。
「分かった」
コウヤは短く言い残して部屋を後にする。意味が分からないままその様子を目線で見送った。
***
「ハクヒ」
お腹をさすられている感覚がする。意識が徐々にはっきりしてきた。どうやら眠ってしまったらしい。コウヤが顔を覗き込んでいた。
「……………ん」
「まだ痛い?」
「ん~……さっきよりいいかも」
上体を起こして軽く伸びをする。時計を確認するとさほど時間は進んでいなかった。よかった、と呟く声がする。視線を戻すと安心したように微笑んだ。
「おいで」
ベッドから降りて服の乱れを直す。寝癖のついた髪を手櫛で解きながら首を傾げた。
コウヤはご飯を食べる部屋に戻る途中の、いつもとは違う方向へ曲がる。部屋が多すぎてどこになんの部屋があるか把握できない。その内の一つである部屋に手をかけた。
「……………習字?」
抹茶のような壁紙に畳の床、足の低い茶色のテーブルがある。その前には硯と筆、黒い下敷きの上に半紙のようなものが見えた。
「習字」
「……まじか」
予想は当たっていたらしい。コウヤは同意するように頷いた。俺は顔が引き攣るのを感じる。
「習字は嫌い?」
「嫌いっていうか、………苦手というか」
歯切れの悪い返事をする。聖宮でも幼少の頃、教養の一つとして習字があった。しかし俺は力の加減が下手クソだ。全てが太くなるし絶望的にバランスが悪い。
相性の悪さも手伝って女官に頼み込みことにした。それ以来習字は免除されて今日に至る。元々向いていないんだと思う。ちなみにペンだったら少しは書ける。
「とりあえずやってみよう」
正直全く気が乗りしない。けれど怒られるのは嫌だから渋々従った。
***
畳の上に正座をする。気合いを入れて腕を捲った。
「なんて書けばいい?」
「『白姫』にしよう」
小さく頷く。白姫なら書いたことがある。いけるかもしれない。恐る恐る筆に指先を伸ばした。人差し指と親指で筆を取って深呼吸をする。しっかりと筆を握って墨の中に毛先を寝かせた。墨を吸い込ませるようにチャプチャプさせる。
コウヤは腕を組んだまま目を見開いて固まっている。首を傾げた。
「なに」
「なんでもない、続けて?」
硯のフチで墨の量を調整しながら筆を絞っていく。半紙を眺めて字の配置をイメージした。小さく頷いて片手で半紙を掴む。
「えい!」
筆先がべちゃ、と寝る。墨で半紙が滲み始めたが気にせず左に払った。予想よりも一筆目が大きすぎる。思わず口を開けた。
「………失敗した」
「とりあえず最後まで書いてみて」
どうせ失敗したから…と、一画目とは違い軽く素早く筆を滑らせた。謎の達成感に浸っていると目の前にいたはずのコウヤが隣に移動してきた。半紙を覗き込む。
「味があるね」
「下手って言っていいよ」
コウヤは独特のニュアンスで表現する。いっそヘタクソだと笑ってくれた方が気持ちが軽い。下手に慰められる方がつらかった。笑いながら字を眺めている。
「姫が入らなかったのか」
「力みすぎたの!ちっちゃく書いてあるし!」
白が大きすぎたので筆の先っぽを窄めて小さく姫を書いた。あまりにアンバランスすぎる。流れるように筆を渡した。
「私?」
「お手並み!拝見!」
「……あまり自信はないのだけれど」
コウヤは硯のフチに筆を置くと、俺が書いたものを横にずらした。新しい半紙を下敷きの上に載せる。文鎮を置くと流れるように文字を書き始めた。
「……………いや、いや、いやいや…え…………?」
結論から言うと、半紙に筆を置いた時点でなにかが違った。
そのまま流れるように筆の運びを見守る。絶妙な緩急を付けて太い線と細い線を作り出していく。見守るまでもなく見事な書を書き上げた。
「なんでそんなに上手なの!?」
コウヤの書を覗き込む。白姫という字をかっこいいと思ったのは初めてだ。悔しい気持ちはあるけど少しだけ嬉しくなる。
「上手かな?結構クセが強いと思うけど」
「クセとか分からないけど…へぇ、コウヤって字も上手なんだ」
外見もカッコよくて字も上手い。天は才能を与えすぎてある。しかし性格は少し意地悪で怖いところがある。うまく相殺しているのかもしれない。
「そう思ってくれるなら嬉しい」
「エンキも上手だけど俺はこっちの方が好きかなぁ」
聖宮にいた頃を思い出す。悔しいことにエンキは容姿だけでなく能力も高い。何をやらせても完璧にこなせる。
そして字は特別上手い。上手すぎていつの間にか廊下にエンキの書が貼られるようになった。でも、エンキよりもコウヤの字の方が俺は好きだ。
「……………ふぅん?焔姫は字が上手なんだ?」
「上手いよ、あいつなんでもできるし」
文鎮をそっと外す。コウヤの書を俺の隣に並べてみた。やっぱり天と地ほどの差がある。捨ててしまおうと自分の書に手をかける。すると、コウヤがその手に自身の手を重ねた。不思議に思い顔を向ける。
「私はハクヒの字の方が好きだよ。これは後で飾ろう」
「え!?だめ!恥ずかしいからやめて!!」
「もう決めちゃった」
個性的で、と付け加える。すごく優しい表情だった。頬が熱をもつのが分かる。
コウヤは半紙を奪うとテーブルの端の方に置いた。飾るなんて耐えられないが、一度決めたらコウヤは撤回しない。諦めてゆく末を見守ることにした。
「私は好きだけど、字が大きすぎるから練習しようか」
コウヤは新しい半紙に文鎮を載せた。肩を抱いて半紙の前に座らせると筆を握らす。その上から自身の手を重ねた。
「え?なに?」
「練習。筆の運び方を教えてあげる」
ふふ、とコウヤがすぐ耳元で囁く。勢いよく振り返る。思わず筆を落としそうになったが、コウヤがしっかりと握っていた。
「別にやらなくていいよ」
「字は人を表す。聖妃になって署名をする時、見られても平気な自信はある?」
「それは…」
あるわけがない。しばらく見つめ合った後、軽く頭を下げた。
「………オネガイシマス」
観念して半紙を見つめた。それを確認してコウヤは筆先を硯で細める。半紙の前に筆を持ってくると耳元で囁いた。
「ハクヒは墨をつけすぎ。そこまで付けなくても大丈夫」
いきなり吐息混じりの声になって思わず肩が跳ねる。片手で半紙を抑えながら距離を縮めていく。背中のすぐそこにコウヤの気配を感じる。
「半紙に筆を軽く置いて、……………ハクヒ?」
筆を運ぼうとしたコウヤに反して俺はそこで止まるように力を入れた。
一度半紙に置いた筆を俺の手ごと硯に戻す。
「あ、あ……あし、しんじゃう………!」
「…少し早いけど休憩にしようか」
限界だった。オツトメとは別の意味で体が震える。
空気読めなさすぎだろ、俺。
コウヤがため息をつく中、必死で頷いた。後ろに腕をついて机の下から這い出る。足の痺れに悶絶しながら壁を目指して力尽きた。
コウヤは足先に座り込むと、鬼畜にも痺れた足をツンツンしてきた。
「うぁあぁッ゙!!?♡しびれてるからやめて♡♡♡」
「ハクヒ、実はね。習字の練習はこれだけじゃないんだ」
「どゆ、意味?♡」
足の痺れも治らぬままコウヤの声に顔をあげる。あろうことか足の裏を揉み始める。呻きを通り越して声が出なかった。
「訓練もあるんだよ」
「………?体に字を書いて練習する、とか?」
「それもいいね。今度やろうか」
そう言うとコウヤは机の上から細い筆を手繰り寄せた。どう訓練に使うか分からず首を傾げる。もしかして余計なことを言ってしまっただろうか。
そんなことを考えているとコウヤの指先が臀部に伸びる。下から捲し上げると貞操帯が見えた。生理中なのでその奥には細い筒が入っている。
思わず足を擦り寄せた。そしてコウヤが俺のモノを握る。
「ハクヒの聖液で習字をするための訓練」
これで、と言いながら小筆を見せる。俺は固まった。筆と自分のソコを目線で何度か見比べる。理解して悲鳴を上げた。
「ムリムリ!!♡絶対だめ!!♡♡♡」
「王と一緒に字を書く場面もある。聖液が必要でしょ?」
「普通に墨使えばいいじゃん!発想がおかしいよ……!」
コウヤは至って真面目な顔で言う。あまりにも発想が病的で俺は頭を抱えた。
「特別に黒い紙も用意した。あとは聖液だけ」
コウヤは本当に黒い紙を持っていた。いつの間にそんなものを用意したのだろうか。無意識に足の付け根を擦り合わせる。
「わかった♡わかったから……ヌルヌルのやつちょうだい?」
「どうしてヌルヌルのやつがいるの?」
「だって硯に入れないと、………?」
俺は首を傾げる。てっきり袋に入れて硯に移すものだと思っていた。
もしかして硯に直接聖液を入れろという意味だろうか。新しい硯を探すために辺りを見回すがそれらしきものはない。コウヤが納得したように頷いた。
「ハクヒは墨を付けすぎって言ったことは覚えてる?」
「え…さっき?」
「そう。聖液はその都度つければいい。つまりここから塗りつける」
コウヤが筆で俺の先っぽを撫でた。腰が跳ねる。
「あ゙!?♡ウソ!♡♡♡うそ!?♡♡」
「ほんと。ハクヒは聖液だけ出してくれればいいよ」
衝撃的な言葉と行動に開いた口が塞がらない。
コウヤは筆を根元の方に滑らせた。撫でるように下から上へと筆を動かす。なんとも言えない感覚ともどかしさに涙が出てくる。
「ゔあ!?♡あ、くるくるだめ!!♡だめ!!♡♡♡」
クルクル円を描くように下から上へと筆が滑る。だらだらと透明な液が流れて来るのを顔を赤くしながら見守った。筆が先っぽを優しく撫でたあと、少しエラが張ってる所を執拗に攻める。勝手に体が跳ねる。
「あ゙♡そこ、あ……!♡ひゃ、ひゃめぇ♡♡♡」
「そう?ハクヒのは気持ちよさそうに涎を垂らしているけど」
「はやく、せーえき!!♡とっで!!♡♡♡」
聞こえるように大きな声で言うと先っぽを筆でツンツン♡と撫でた。筆先は乾いていた。ふやかすように筆全体を滑らしていく。くすぐったさと絶妙な刺激で頭がおかしくなりそうだ。
「書けるかな?………あ、透明で見えないね」
「すみ゙!!つかって!!♡♡♡」
「使わない。ほら、頑張る」
「ゔあ゙あ゙!!?♡♡♡」
コウヤが一度手を止めると黒い紙に筆を滑らせた。どうやら字は透明で見えないらしい。
俺のモノを握り直すとコウヤが筆の先っぽを鈴口に立てる。筆を完全に寝かすと持つ所を押し付けてグリグリと刺激し始めた。気持ちよくてソコを突き出すように足を開いた。
「あ゙!?♡こ、や゙♡も、もぉ゙!!♡」
いつものクセで先っぽを見つめる。コウヤが鈴口を覗き込むように見ていた。このままだとかかってしまう。
「でる゙!!♡こうや、どいて!!!♡♡♡」
「そのままどうぞ」
「い゙や゙ぁ゙♡」
むしろ距離を近づけた。ドキドキしながらその光景を見つめる。
「ほん゙とに!!♡、い゙、いぐ!!いぐぅ゙ーー~~ッ゙!!?♡♡♡」
チラッと俺の様子を確認してコウヤは軸をそのままに滑るように円を描いた。顔に聖液が付くことも気にせず、黒い紙に筆を滑らす。
直接絵の具のチューブから筆につけるように何度か先っぽと紙を往復する。俺はその様子を呆然と眺めていた。
「ふふ、できた」
コウヤは嬉しそうに笑うと黒い紙を見せつけてきた。そこにはテラテラと光る透明な線で『コウヤ』と書かれていた。
生理が終わりに近づく頃、コウヤが気まぐれに尋ねた。薬の苦味に顔を歪めていると褒めるように頭を撫でる。抵抗する気になれず好きにさせたまま、考えた。小さく頷く。
「分かった」
コウヤは短く言い残して部屋を後にする。意味が分からないままその様子を目線で見送った。
***
「ハクヒ」
お腹をさすられている感覚がする。意識が徐々にはっきりしてきた。どうやら眠ってしまったらしい。コウヤが顔を覗き込んでいた。
「……………ん」
「まだ痛い?」
「ん~……さっきよりいいかも」
上体を起こして軽く伸びをする。時計を確認するとさほど時間は進んでいなかった。よかった、と呟く声がする。視線を戻すと安心したように微笑んだ。
「おいで」
ベッドから降りて服の乱れを直す。寝癖のついた髪を手櫛で解きながら首を傾げた。
コウヤはご飯を食べる部屋に戻る途中の、いつもとは違う方向へ曲がる。部屋が多すぎてどこになんの部屋があるか把握できない。その内の一つである部屋に手をかけた。
「……………習字?」
抹茶のような壁紙に畳の床、足の低い茶色のテーブルがある。その前には硯と筆、黒い下敷きの上に半紙のようなものが見えた。
「習字」
「……まじか」
予想は当たっていたらしい。コウヤは同意するように頷いた。俺は顔が引き攣るのを感じる。
「習字は嫌い?」
「嫌いっていうか、………苦手というか」
歯切れの悪い返事をする。聖宮でも幼少の頃、教養の一つとして習字があった。しかし俺は力の加減が下手クソだ。全てが太くなるし絶望的にバランスが悪い。
相性の悪さも手伝って女官に頼み込みことにした。それ以来習字は免除されて今日に至る。元々向いていないんだと思う。ちなみにペンだったら少しは書ける。
「とりあえずやってみよう」
正直全く気が乗りしない。けれど怒られるのは嫌だから渋々従った。
***
畳の上に正座をする。気合いを入れて腕を捲った。
「なんて書けばいい?」
「『白姫』にしよう」
小さく頷く。白姫なら書いたことがある。いけるかもしれない。恐る恐る筆に指先を伸ばした。人差し指と親指で筆を取って深呼吸をする。しっかりと筆を握って墨の中に毛先を寝かせた。墨を吸い込ませるようにチャプチャプさせる。
コウヤは腕を組んだまま目を見開いて固まっている。首を傾げた。
「なに」
「なんでもない、続けて?」
硯のフチで墨の量を調整しながら筆を絞っていく。半紙を眺めて字の配置をイメージした。小さく頷いて片手で半紙を掴む。
「えい!」
筆先がべちゃ、と寝る。墨で半紙が滲み始めたが気にせず左に払った。予想よりも一筆目が大きすぎる。思わず口を開けた。
「………失敗した」
「とりあえず最後まで書いてみて」
どうせ失敗したから…と、一画目とは違い軽く素早く筆を滑らせた。謎の達成感に浸っていると目の前にいたはずのコウヤが隣に移動してきた。半紙を覗き込む。
「味があるね」
「下手って言っていいよ」
コウヤは独特のニュアンスで表現する。いっそヘタクソだと笑ってくれた方が気持ちが軽い。下手に慰められる方がつらかった。笑いながら字を眺めている。
「姫が入らなかったのか」
「力みすぎたの!ちっちゃく書いてあるし!」
白が大きすぎたので筆の先っぽを窄めて小さく姫を書いた。あまりにアンバランスすぎる。流れるように筆を渡した。
「私?」
「お手並み!拝見!」
「……あまり自信はないのだけれど」
コウヤは硯のフチに筆を置くと、俺が書いたものを横にずらした。新しい半紙を下敷きの上に載せる。文鎮を置くと流れるように文字を書き始めた。
「……………いや、いや、いやいや…え…………?」
結論から言うと、半紙に筆を置いた時点でなにかが違った。
そのまま流れるように筆の運びを見守る。絶妙な緩急を付けて太い線と細い線を作り出していく。見守るまでもなく見事な書を書き上げた。
「なんでそんなに上手なの!?」
コウヤの書を覗き込む。白姫という字をかっこいいと思ったのは初めてだ。悔しい気持ちはあるけど少しだけ嬉しくなる。
「上手かな?結構クセが強いと思うけど」
「クセとか分からないけど…へぇ、コウヤって字も上手なんだ」
外見もカッコよくて字も上手い。天は才能を与えすぎてある。しかし性格は少し意地悪で怖いところがある。うまく相殺しているのかもしれない。
「そう思ってくれるなら嬉しい」
「エンキも上手だけど俺はこっちの方が好きかなぁ」
聖宮にいた頃を思い出す。悔しいことにエンキは容姿だけでなく能力も高い。何をやらせても完璧にこなせる。
そして字は特別上手い。上手すぎていつの間にか廊下にエンキの書が貼られるようになった。でも、エンキよりもコウヤの字の方が俺は好きだ。
「……………ふぅん?焔姫は字が上手なんだ?」
「上手いよ、あいつなんでもできるし」
文鎮をそっと外す。コウヤの書を俺の隣に並べてみた。やっぱり天と地ほどの差がある。捨ててしまおうと自分の書に手をかける。すると、コウヤがその手に自身の手を重ねた。不思議に思い顔を向ける。
「私はハクヒの字の方が好きだよ。これは後で飾ろう」
「え!?だめ!恥ずかしいからやめて!!」
「もう決めちゃった」
個性的で、と付け加える。すごく優しい表情だった。頬が熱をもつのが分かる。
コウヤは半紙を奪うとテーブルの端の方に置いた。飾るなんて耐えられないが、一度決めたらコウヤは撤回しない。諦めてゆく末を見守ることにした。
「私は好きだけど、字が大きすぎるから練習しようか」
コウヤは新しい半紙に文鎮を載せた。肩を抱いて半紙の前に座らせると筆を握らす。その上から自身の手を重ねた。
「え?なに?」
「練習。筆の運び方を教えてあげる」
ふふ、とコウヤがすぐ耳元で囁く。勢いよく振り返る。思わず筆を落としそうになったが、コウヤがしっかりと握っていた。
「別にやらなくていいよ」
「字は人を表す。聖妃になって署名をする時、見られても平気な自信はある?」
「それは…」
あるわけがない。しばらく見つめ合った後、軽く頭を下げた。
「………オネガイシマス」
観念して半紙を見つめた。それを確認してコウヤは筆先を硯で細める。半紙の前に筆を持ってくると耳元で囁いた。
「ハクヒは墨をつけすぎ。そこまで付けなくても大丈夫」
いきなり吐息混じりの声になって思わず肩が跳ねる。片手で半紙を抑えながら距離を縮めていく。背中のすぐそこにコウヤの気配を感じる。
「半紙に筆を軽く置いて、……………ハクヒ?」
筆を運ぼうとしたコウヤに反して俺はそこで止まるように力を入れた。
一度半紙に置いた筆を俺の手ごと硯に戻す。
「あ、あ……あし、しんじゃう………!」
「…少し早いけど休憩にしようか」
限界だった。オツトメとは別の意味で体が震える。
空気読めなさすぎだろ、俺。
コウヤがため息をつく中、必死で頷いた。後ろに腕をついて机の下から這い出る。足の痺れに悶絶しながら壁を目指して力尽きた。
コウヤは足先に座り込むと、鬼畜にも痺れた足をツンツンしてきた。
「うぁあぁッ゙!!?♡しびれてるからやめて♡♡♡」
「ハクヒ、実はね。習字の練習はこれだけじゃないんだ」
「どゆ、意味?♡」
足の痺れも治らぬままコウヤの声に顔をあげる。あろうことか足の裏を揉み始める。呻きを通り越して声が出なかった。
「訓練もあるんだよ」
「………?体に字を書いて練習する、とか?」
「それもいいね。今度やろうか」
そう言うとコウヤは机の上から細い筆を手繰り寄せた。どう訓練に使うか分からず首を傾げる。もしかして余計なことを言ってしまっただろうか。
そんなことを考えているとコウヤの指先が臀部に伸びる。下から捲し上げると貞操帯が見えた。生理中なのでその奥には細い筒が入っている。
思わず足を擦り寄せた。そしてコウヤが俺のモノを握る。
「ハクヒの聖液で習字をするための訓練」
これで、と言いながら小筆を見せる。俺は固まった。筆と自分のソコを目線で何度か見比べる。理解して悲鳴を上げた。
「ムリムリ!!♡絶対だめ!!♡♡♡」
「王と一緒に字を書く場面もある。聖液が必要でしょ?」
「普通に墨使えばいいじゃん!発想がおかしいよ……!」
コウヤは至って真面目な顔で言う。あまりにも発想が病的で俺は頭を抱えた。
「特別に黒い紙も用意した。あとは聖液だけ」
コウヤは本当に黒い紙を持っていた。いつの間にそんなものを用意したのだろうか。無意識に足の付け根を擦り合わせる。
「わかった♡わかったから……ヌルヌルのやつちょうだい?」
「どうしてヌルヌルのやつがいるの?」
「だって硯に入れないと、………?」
俺は首を傾げる。てっきり袋に入れて硯に移すものだと思っていた。
もしかして硯に直接聖液を入れろという意味だろうか。新しい硯を探すために辺りを見回すがそれらしきものはない。コウヤが納得したように頷いた。
「ハクヒは墨を付けすぎって言ったことは覚えてる?」
「え…さっき?」
「そう。聖液はその都度つければいい。つまりここから塗りつける」
コウヤが筆で俺の先っぽを撫でた。腰が跳ねる。
「あ゙!?♡ウソ!♡♡♡うそ!?♡♡」
「ほんと。ハクヒは聖液だけ出してくれればいいよ」
衝撃的な言葉と行動に開いた口が塞がらない。
コウヤは筆を根元の方に滑らせた。撫でるように下から上へと筆を動かす。なんとも言えない感覚ともどかしさに涙が出てくる。
「ゔあ!?♡あ、くるくるだめ!!♡だめ!!♡♡♡」
クルクル円を描くように下から上へと筆が滑る。だらだらと透明な液が流れて来るのを顔を赤くしながら見守った。筆が先っぽを優しく撫でたあと、少しエラが張ってる所を執拗に攻める。勝手に体が跳ねる。
「あ゙♡そこ、あ……!♡ひゃ、ひゃめぇ♡♡♡」
「そう?ハクヒのは気持ちよさそうに涎を垂らしているけど」
「はやく、せーえき!!♡とっで!!♡♡♡」
聞こえるように大きな声で言うと先っぽを筆でツンツン♡と撫でた。筆先は乾いていた。ふやかすように筆全体を滑らしていく。くすぐったさと絶妙な刺激で頭がおかしくなりそうだ。
「書けるかな?………あ、透明で見えないね」
「すみ゙!!つかって!!♡♡♡」
「使わない。ほら、頑張る」
「ゔあ゙あ゙!!?♡♡♡」
コウヤが一度手を止めると黒い紙に筆を滑らせた。どうやら字は透明で見えないらしい。
俺のモノを握り直すとコウヤが筆の先っぽを鈴口に立てる。筆を完全に寝かすと持つ所を押し付けてグリグリと刺激し始めた。気持ちよくてソコを突き出すように足を開いた。
「あ゙!?♡こ、や゙♡も、もぉ゙!!♡」
いつものクセで先っぽを見つめる。コウヤが鈴口を覗き込むように見ていた。このままだとかかってしまう。
「でる゙!!♡こうや、どいて!!!♡♡♡」
「そのままどうぞ」
「い゙や゙ぁ゙♡」
むしろ距離を近づけた。ドキドキしながらその光景を見つめる。
「ほん゙とに!!♡、い゙、いぐ!!いぐぅ゙ーー~~ッ゙!!?♡♡♡」
チラッと俺の様子を確認してコウヤは軸をそのままに滑るように円を描いた。顔に聖液が付くことも気にせず、黒い紙に筆を滑らす。
直接絵の具のチューブから筆につけるように何度か先っぽと紙を往復する。俺はその様子を呆然と眺めていた。
「ふふ、できた」
コウヤは嬉しそうに笑うと黒い紙を見せつけてきた。そこにはテラテラと光る透明な線で『コウヤ』と書かれていた。
49
あなたにおすすめの小説
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす
小木楓
恋愛
完結しました✨
タグ&あらすじ変更しました。
略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。
「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」
「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」
大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。
しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。
強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。
夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。
恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……?
「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」
逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。
それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。
「一生、私の腕の中で溺れていろ」
守るために壊し、愛するために縛る。
冷酷な仮面の下に隠された、
一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。
★最後は極上のハッピーエンドです。
※AI画像を使用しています。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる