食べ盛りの王女と、魔法の国の呪われた王太子

リカールさん

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6章

ガリマーロの回想2 ~ 無慈悲な報復

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 鎧を外され、ジェロードとパルトスにより、救護班の馬車まで運ばれたフィラーロは、馬車に入るなり、驚きのうめき声を上げた。
 縦に長い馬車の中には、形ばかりの寝台があった。そしてその前には白い前掛け姿のパルトスの娘のメリーサ。さらに白い帽子で髪を覆っているレオーニスまで乗っていた。
「しっかりしてください、フィラーロ」
「な、なぜ……ここに」
「けが人の治療は神官の仕事だ。そんなことも知らないのか」
 レオーニスは、人を癒やす治療官ではなく、魔法を創造する立法官を目指しているのではなかったのか? フィラーロの頭に浮かんだ言葉が口に上らない。それ以上に痛みで考えることもできない。
「ああ、しゃべらないで、フィラーロ」
 メリーサはエプロンが汚れるのもかまわず、フィラーロを抱きかかえると、寝台に運んで横にし、はさみで丁寧にシャツを切った。
「よし。そのあとは、蒸留したネクタル酒を傷口にかけろ。そして煮沸と乾燥をしたあとの布で拭け。あとは私がやる」
 メリーサが透明なネクタル蒸留酒を傷口にかけると、フィラーロが野獣のような咆哮をあげる。その後をレオーニスが引き継ぎ両手をフィラーロの肩口にかざした。
「大地の精よ。地の力よ。汝の恩寵にてこの傷を癒やし、生きる力を授けたまえ。この者の痛みを取り去り、死に抗う力を生じさせたまえ」
 レオーニスの詠唱は格調高く力強く、フィラーロの肩の傷にしみていく。
「兄……うえ」
 感謝しますという言葉が声になる前に、フィラーロの意識が遠のいた。


 銀狼騎士団は、一旦ボレムに戻った。先に退却したカイヤンスの石英騎士団を交えたほかの騎士団と今後の作戦を協議するためである。兵士を倒してしまい、捕虜にできなかったことは悔やまれるが、村人に悪魔といわせた「火を噴く棒」を入手できたことは幸いと言えた。
 一方、フィラーロは治癒神官団管轄の治療院で治療に専念していた。
 火を噴く「棒」から放たれたものは、薄い鎧の板金とともに、フィラーロの腕を切り裂いた。その傷そのものは深くなかったが、問題は、ジェロードと共に倒れ込んだときに、荷重がかかりすぎた上腕あたりを骨折したことである。
「相手が下手くそで命拾いをしたな。頭に当たっていたら、おまえはここにはいなかっただろう」
 一日に数度、レオーニスは治癒魔法を施す。相変わらず口数が極端に少ないが、その治療の間に、言葉をかけることがあった。
「あの火を噴く棒はなんでしょうか」
「銃だ。あの細い筒に小さな鉛玉を込め、火薬を爆発させてその玉を押し出す武器だ。ミッテルスラムトでもノルデスラムトでも使われて、すでに改良もされているというのにこの体たらくか。こんなことも知らずに戦っているとは、あきれてものも言えん」
 フィラーロは反論をしようと口を開いたが、ぐっと奥歯をかみしめた。今はそんなことを言っている状況ではない。
「カイヤンスが焼き払われ、石英騎士団が敗退したのは、その銃というものがあったからか?」
「少しは頭を使え。おまえのペラッペラな鎧など、切り裂くような玉が飛んでくる。それがおまえたちの攻撃が届かない位置から。そしておまえたちはその武器についての知識がゼロ。さて、どうなる?」
「残念ですが、今の我々の力では手の打ちようがありません」
「そういうことだ」
「兄上はご存じだったようですが、その話を騎士団となぜ共有しなかったのですか?」
「聞く耳も、頭の中身も足りないくせに、人の話は聞かない。いつも目先のことしか見えない上に、動くときには行き当たりばったりで、先のことなどみじんも考えていない。カイヤンスのような地形を利用した要塞があるからと油断しきっている。人を襲ってはいけませんと言えば、相手も襲ってこないと信じ込んでいる。そんな連中になにを言えと?」
 なぜこの人は他人を見下さずにはいられないのだろう。フィラーロはこれ以上会話を続ける気力を完全に失っていた。
「お話中失礼します。フィラーロ、身体を拭く時間ですよ」
 声をかけられ、入り口を見ると、金色の髪の毛をひとつに編んだにしたメリーサが笑顔で洗面器を抱えてたっていた。
「い、いや、自分はいいです」
「なにをいってるんですか。病を治すのは魔法だけではない。体調を万全に整えることが大切だってみんな言ってますよ。ねえ、レオーニス様?」
 洗面器をベッドの横に起きながら、メリーサはレオーニスに視線を走らせる。
「その通りだろうな」
「じ、じゃ、上半身だけお願いします」
 よりによってレオーニスの前で堂々とした態度がとれない自分の弱さを、フィラーロは呪った。しかしそんなメリーサの甲斐甲斐しい看護の成果か、フィラーロの傷は順調に回復していった。そして秋の風が木の葉を巻き上げる頃には、肩を固定しながらも治療院を出て、兵舎に戻れるようになっていた。


 久しぶりに治療院から外に出たフィラーロは自分の目を疑った。王都ボレムの町の広場には、避難者小屋に入りきれない避難民たちがあふれ、顔を出した騎士団の詰め所は、緊張感以上に強烈な悲壮感に覆われていた。治療院にいた頃、すでに騎士たちが運ばれてきていたことから、ある程度の苦戦をなめさせられていることをフィラーロも覚悟していた。
 団長パルトスが皆を集めた。しばらく見ない間に、10歳くらい年をとったように見える。
「諸君。知っての通り、カイヤンスに続き、ナブール、マセラらの国境の村は壊滅状態になった。連戦連敗である。このまま敵の攻撃を甘受していることはできない。奴らはこの王都ボレムを蹂躙し、王宮や大神殿を破壊するであろう。今こそ我らは騎士団のみならず、兵士、民、神官ら国民が一丸となって、進軍するやつらを国境の外へと追い出し、そこで一網打尽にしなければならない」
 鬨の声があがった。それは勇ましいというよりも、覚悟を決めた、悲痛な声にも聞こえた。もう後がない、という……。
  ぽん、と背中を叩かれ、振り向くとジェロードが立っていた。
「もう身体はいいのか?」
「ああ。治癒魔法のおかげでよくなった。その間、役に立たなくてすまん」
「いや、おまえがいなかったら、俺は生きていなかったかもしれない」
「とっさに身体が動いただけだ」
 フィラーロが答えると、ジェロードはぷっと吹き出した。
「それでは、おまえにとっての守りたい人が俺、ということになってしまうではないか」
「そうではないだろう。守りたい人がいると身体が動くと言っているんだ団長は!」
 フィラーロが顔を真っ赤にして否定すると、ジェロードがふと真顔になる。
「冗談だ。話を戻すが、敵の武器が手に入ったのは、お前が犠牲になったからといえる。あれではどんなに楯が丈夫でも、ひとたまりもないだろう。それがわかれば、作戦も立てられたようなものだよ」
 疲れているせいなのか。頼もしい内容とはうらはらに、ジェロードの声は沈んでいた。


 銃を持たないソレイヤールの騎士・兵・神官らの軍は、銃への対応に追われていた。
 敵軍はいくつかの村を襲撃しているが、その村を拠点にして、補給部隊の到着を待って次の村を襲うという戦略をとっていない。一度国内に引き返し、装備を調えて別の村を襲っている。
 ここから考えられることは、攻撃の目的は占領ではなく、示威的な行動であるということであろう。和平交渉に持ち込まれたときに、条件として国境線を南にずらすことを織り込んでくる可能性が高い。
 ソレイヤールとしては、この攻撃の時間差を利用し、できる限りの対策を講じなくてはならなかった。
 神官は楯をさらに強化する魔法をすべての騎士と兵士に施した。兵士には刀ではなく弓を持たせ、銃を構える兵を狙わせる。
 さらに、鳥の目を借りる魔法を使える神官は、敵の動きを察知することに専従した。つまり空を飛ぶ鳥に意識を移し、その目を借りて、下界を偵察する魔法である。
「これだけの体制が前もって整っていればなあ……」
 フィラーロが漏らすと、ジェロードも頷いた。
「しかたないさ。長い間戦を知らなかったんだから。だけど不思議に思わないか? なぜ我が国は今まで、攻め込まれずにいたのか」
 それでジェロードは本を読ませようとしたのか。その件についてフィラーロが意見を求めようとしたが、、ほかの兵士に用事を頼まれ、結局聞けずじまいになってしまった。
 
  

 季節は秋を過ぎて冬に突入した。気候が温暖なソレイヤールの冬は雪がなく、ただジメジメした毎日が続くばかりだった。
 各騎士団や兵たちが、国境を目指して出陣をしたのも、重い雲が垂れ込める日であった。
 前回同様、騎士団は騎馬で、兵士たちは徒歩で、そして神官たちは馬車で行進を始めた。神官たちの馬車も救護神官の馬車だけでなく、4人乗り、6人乗りの馬車が列をなしている。以前よりも人員が多い。その上、見たこともないような黒い箱状の物体を、荷車に乗せてひいている。
 非戦闘員である神官たちの数や、黒い箱に疑問を持ったフィラーロが隣にいたジェロードに語りかけようとしたとき、不意にジェロードが顔を向けた。
「フィラーロ。今のうちに話しておきたいことがある」
「なんだ」
「今まで黙っていたのだが、俺は、字が読めないんだ」
 フィラーロはすぐに答えることができなかった。だが黙ったままではいられず、口を開くと喉に引っかかるような声しか出ない。
「いや、そういう人は珍しくはないだろう。むしろ今のような状況では、学問など役に立たない。力の方がずっと……」
「そうかもしれないな。だが、俺がそうした学を当然のように身につけていれば、防げたことも守れたこともあったはずだ。以前渡した本は、この国の戦いの歴史をおまえに読んでもうつもりだったのだ。だが、違う本を渡したことことすら、わからなかったのだよ、俺は」
「今から学べばいい。おまえなら、きっとできる」
 ジェロードは、ぐっと手綱を引き寄せた。
「人にはできることとできないことがある。根性だけでは何もならないことも」
 ジェロードはそのまま口を結び、無言のまま馬を走らせていった。



 ソレイヤール軍がミッテルスラムト軍を迎え撃ったのは国境近くであった。

 ミッテルスラムトの銃撃は、楯部隊が前面に立って攻撃をしのぐ。相手が弾を込めている間に間合いを詰め、弓で銃を手にしている兵を狙う。さらに敵に近づくと、すでに銃は不利だ。そこで槍を構えた兵士や騎士たちが、敵兵の中に切り込んでいく。
 以前とは違い、銃への備えができているソレイヤール軍は、見違えるような攻撃をしかけていた。
「退けー」
 ミッテルスラムト語で退却の号令がかかり、ここにきて初めてソレイヤールはミッテルスラムト兵を退けることができた。

 だが――
 退却したミッテルスラムト軍を追跡するように、石英騎士団と一部の兵が進軍を始めた。それも、謎めいた黒い箱を乗せた荷車と一緒に。
「我々も前進だ」
 騎士団パルトスの号令で、銀狼騎士団も国境を越えてミッテルスラムト領内に進む。全軍が、国境沿いの平野部分に達したとき、停止命令が下った。ガリマーロは新たな命令をまっていたが、それ以上軍が進むことはなく、陣幕まで張り始めた。
「一同、ここで待機」
 何をする気なのだろう。作戦を知らされていないフィラーロは疑問に思いながら、パルトスの命に従った。
 低い音声が響いている。振り向くと、揺れ動く黒い森が見えた。
 いや違う。あれはソレイヤール領内の丘だ。そしてその上に黒い法衣姿の神官が、ずらりと並んでいるのだ。地響きのような音が聞こえた。みなそれぞれが魔法を詠唱しているようだ。見渡す限り黒い衣の群れ。ソレイヤールの神官の全員が国境に集結したのではないかと思われた。
 フィラーロが静かにパルトスのそばに近づくと銀狼騎士団長が不意に振り向いた。
「フィラーロ」
「はっ!」
 フィラーロは胸に手を当て、敬礼で応える。
「おまえにしか頼めないことがある。聞いてくれないか」
「なんなりと。ご命令に従います」
 するとパルトスは、手袋を外し、指にはめていた指輪を回しながら抜き取った。
「娘に……メリーサに届けてほしいものがある。渡し忘れていたものだ。わしの父から伝わってきた指輪だ」
 パルトスは、フィラーロの手に、宝石がついた大ぶりの指輪を渡した。
「今……ですか? しかし、持ち場を離れるわけには……」
「今は待機中だ。いい機会ではないか?」
 フィラーロは指輪を押し戻そうとした。
「この戦いが終わったときに、生きて帰って団長が渡してください。勝てる戦いです」
「いいから、渡してくれ。そうしないと安心して戦えない。渡し終わったら、急いで戻ってきてくれ。待っている」
 パルトスは、豪快な笑顔でむりやり指輪をフィラーロの手に握らせた。
「それなら、私のほかにも」
「いいから、行けフィラーロ。団長の頼みくらい聞けないのか? 恩知らずめ」
 ジェロードは、あきれ果てたという顔で、追い払う仕草をしている。
 怪我をしたから、これくらいのことでしか役に立てないというのだろうか。フィラーロは憮然としながら、指輪を受け取った。
「了解しました。これよりフィラーロ・メイラル、メリーサさんに指輪を届けに行きます」
「頼んだぞ」
 パルトスは、いつものように太い右腕でフィラーロを抱き寄せ、勢いよく離した。
「行け。我が息子よ」


 戦場から離れ、神官たちが集結している丘の上で、国境を振り返りったフィラーロは見た。
 ミッテルスラムトの国内から大勢の人間たちが、国境に向かって押し寄せて来ているところを。そして、騎士団や兵士たちは、その人々を通すまいと、槍や刀で防戦していた。
「な、なんだあれは!?」
 フィラーロは今来た道を戻ろうとした。
 そのとき、なん人もの神官がフィラーロを取り囲み、引き留めた。
「戻ってはいけません」
「なにをいうか、皆が戦っているのだぞ」
「命令です」
「誰の命令だ!?」
「銀狼騎士団団長と、お父上でございます」
 なんだって?
「放せ」
 鍛え上げた腕を振り回し、神官たちを振りほどこうとしたフィラーロだったが……。
「大地の精よ。力をお貸しください。この者の身体に休息を与えてください」
 詠唱を唱えられ、魔法により脱力させられてしまった。
「頼む、俺だけ何も知らないんだ。何があったのか、教えてくれ」
 フィラーロが跪きながら神官の膝にすがると、年若い神官が冷たい目で語り始めた。
「敵は、我々に銃という悪魔を突きつけてきました。だから我々も、連中の間に見えない悪魔を放ったのですよ。今頃悪魔が、連中を蝕んでいることでしょう。団長は、その悪魔から逃げた者たちから、ソレイヤールを守っているのです」
 なんてことだ――
 フィラーロは両手で顔を覆った。
「そうやって悲劇に酔っているのは自由ですが。あなたにはやることがあるのではないですか? 団長に何かを頼まれたんでしょう? それは、娘さんの身の振り方を考えてやれということではないんですかね?」
  打ちひしがれるフィラーロを打つように、表情のない声で神官が告げた。


  ボレムに向かうフィラーロに追い打ちをかけるように、パルトスとジェロードの訃報が届けられた。鳥の目を借りて偵察した神官からの報告だった。簡単に敵に殺されるような男たちではない。放たれた見えない悪魔とやらに殺されたとでもいうのか?  だがその問いに答える者はいない。
 砂袋のようになった身体を馬に預けて、フィラーロは王都ボレムに戻っていった。
 かいがいしく尽くしてくれたメリーサに、事実を告げる。通りを歩きながらフィラーロの心は鉛のように重くなった。
 治療院の入り口から入ると、もっとも近い部屋の扉がかすかに開いていた。
「レオーニス様……どうかご無事で」
 隙間から漏れ聞こえる女性の声に、吸い寄せられるように目を走らせると。
 メリーサが白い布を頬に当てている姿が見えた。どこかで見たことがあるとしばし考え、思い至る。あれは、レオーニスの帽子だ。
 ああ……そういうことだったのか。彼女の想いを知っても衝撃はない。淡々と事実として受け止めるだけだ。
 彼が後ずさりをしたとき、顔を上げたメリーサと目が合う。
「フィラーロ?」
 後ろ手に帽子を隠したメリーサは、ばつが悪そうにこちらを見た。
「どうかしたの?」
 事実を告げることは辛かった。
 振り絞るように、パルトスの言葉と、その訃報を伝え、指輪を差し出すと……メリーサの目に涙があふれた。
「あなただけが生きて戻ったのね、フィラーロ。お父様を置いて。騎士団のみんなのことも置いて。あなただけが!」
 フィラーロはじっとうつむいていた。苦い思いだけが身体を駆け巡った。
  何も知らず、父や兄の庇護を受け続けながら、一人前の騎士になった気でいた自分の甘さ。パルトスやジェロードに守られながら、そばにいることもできず、生きて帰っている自分。もっと責めてくれたらいい。メリーサがいっそのこと言葉で矢や、銃の弾丸のように、自分の身体を貫いてくれればいい……。
 


 その後。犠牲になった騎士や兵士たちの亡骸を弔った後、父親にメリーサを託したフィラーロは、そのまま家を出た。もう騎士団はない。家にいればメリーサと顔を合わせてしまう。彼にはもう居場所がなかった。
 長らく封鎖されていた国境が再び開かれるのを待ってフィラーロは国境を越えた。
 混乱の中で、身元を確認する者もいない。
 どこに行こう。あてもなく歩きながらフィラーロは考える。
 ふと思い出したのが、ジェロードに借りた本の一節だった。
「ノルデスラムトの、傭兵か……」
 たぶん、死に場所としてちょうどいい。
 そしてフィラーロは、故郷と自分の名前を捨てた。
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