食べ盛りの王女と、魔法の国の呪われた王太子

リカールさん

文字の大きさ
25 / 29
11章

開示された議事録

しおりを挟む
森を出た王太子とティリアーノはまっすぐに王宮に向かった。
 そしてアルネリアたちは、一度ノルデスラムトの商館に戻り、汚れた衣服を整えた。
 その後でガリマーロは、単身でボレムの街の中を歩いていた。行き先は、ボレムの街中にある生家メイラル邸である。相変わらず大きな屋敷ではあるが、10年ぶりに眺める家は、父親が生きていた頃よりも古さが目立った。
 玄関先で取り次ぎを頼むと、家の奥から転がるように、メイラル夫人が駆け寄ってきた。
「ああ、フィラーロ! 無事だったのね!!」
「はい、森に幽閉されていたところを、ティリアーノさんたちに救出してもらいました。母上が、あの手紙を持って行ってくれたおかげです」
 ガリマーロは胸の中に飛び込んできた母の背中に、やさしく手を回した。
「もう、胸が潰れるかと思いました……こんな思いはもう二度といやですよ」
「すみませんでした、母上」
 これまでずっと、悲しませ続けてきた母。今初めてガリマーロは素直に母親の思いを受け止められるような気がした。
 だが……。ふと視線を感じたガリマーロが顔を上げると、廊下の奥でレオーニスが冷ややかな視線を送っていた。
「ちょっと来い」
 レオーニスは、顎をあげて奥の部屋を示し、そこにガリマーロを誘った。
「母上、兄上が呼んでいますので」
 息子の顔を見て落ち着いたらしい。メイラル夫人はガリマーロをすんなりと離した。
「わかりました。レオーニスも、あなたを心配していたのですよ。あの子は、その、素直じゃないところがあるから……」
「知っていました、母上……」
 母親から離れると、ガリマーロはレオーニスの後を追った。
 レオーニスが入っていったのは、彼の書斎だった。念のため他に人がいないことを確認するころが、彼らしい。
「金を用意して、賊の仲間からの連絡を待っていたのだが……こんなに早く釈放されるとは。なにがあった?」
「殿下と、ティリアーノさんと、雇い主に救出されました」
  レオーニスが目を見張った。
「なんだって!? ティリアーノのやつ、なにを……。まあそれはいい。だが……あの連中は何者なんだ? おまえを雇っている人間たちは。なぜ王太子たちを動かせる!?」
「兄上がなにを聞きたいのか知りませんが、雇い主の情報は漏らせません」
 ガリマーロは口を真一文字に閉じ、表情を出さないようにしている。
 レオーニスは、ふっと息を漏らして笑った。
「相変わらず頑固なやつだ」
 そこで、扉を叩く音が聞こえ、続いて家令が現れた。
「失礼いたします、レオーニス様。王宮から招集でございます。火急、とのことです」
 レオーニスの表情が引き締まった。
「そろそろ来ると思った。おまえもついて来るといい、フィラーロ」
「なぜ俺が」
「この国の未来のためだ。おまえにもその責任がある」
 ガリマーロは、驚いた目で兄を見つめた。

 そしてアルネリアも、商館で身支度を調えたあと、パウラとビルギッタと共に王宮に向かった。ティリアーノのたっての希望があったためである。
 久しぶりに青の間に通され、椅子に座ると、ティリアーノが神妙な顔で話し始めた。
「ガリマーロさんのことがあったので、今まで話しそびれていたのですが……」
 ティリアーノは、紙筒の中から丸めた紙を取り出し、アルネリアに手渡した。
 そこに描かれていたのは似顔絵であった。上手ではないが、特徴はよく捉えている。バジエの町で、皮革職人の店に行った後で、アルネリアがこっそり描いたものだった。
「これをアルベルト君が描いて、僕に手渡してくれました。そして僕は、偉大なる我が父にこれを見せ、見覚えがないかと聞いてみたのです」
「あのとき賢者君は、そんなことをしていたんですか! それでティリアーノ、お父上はなんと?」
 ティリアーノは心を落ち着かせるかのように、ゆっくりと息を吸い込んだ。
「父はいいました。『なぜこれを?』と。あまりにも驚いているようでしたから、僕はご存じですか? と聞いてみました。すると父はこう言うんです。『年をとってはいるが、こいつはツニヤーダ。しかしあの男は、ずいぶん前に追放されたと聞くが……』と」
 パウラが立ち上がった。
「あの怪しい店主がツニヤーダ?」
「そうです。神官の身分を剥奪されてから、あの皮革工房の店主に商売替えをしたということになりますね」
「あらゆることが、神官とつながっていませんか?」
 ヴァレリウスは頷くと、ティリアーノに向いた。
「お父上をこの場に呼んでくれないか? とにかく、ツニヤーダ神官が剥奪された理由を聞いてみよう」
「御意。ちょうど、王宮に来ております」
 ティリアーノは優雅に辞儀をすると、青の間から出て行った。


 それからまもなく、青の間に再び現れたティリアーノは、年上の神官を伴っていた。長身で栗色の髪と白髪がほどよく交わった頭髪。顔つきはどことなくティリアーノの面立ちと重なる。
 ティリアーノがわずかに頬を紅潮させた。
「敬愛する我が父、パストレーユです」
「これティリアーノ、やめなさい」
 パストレーユは赤面しながら、持っていた書物で顔を隠した。
「この奥ゆかしさがまた父……」
「ツニヤーダ元神官と思われる似顔絵を拝見いたしました。彼のことはすでに神官の記録から抹消されていますが、議事録には彼の発言が残されています」
 愛する父に話を遮られたティリアーノは、悲しみの目を向けたが、父親はそしらぬ顔で話を続けた。
「ここにあるのが、議事録です。あの戦いがソレイヤール紀元846年ですから、その2年前になりますな」
 アルネリアが、静かに手を上げた。
「その話をなさるおつもりでしたら、関係者ではない我々は遠慮した方がいいのではないですか?」 
「いえ、賢者殿、あなたにこそ聞いていただきたいのです」
 パストレーユは皆の目の前で議事録を開いた。
「当時の議長は、先代の大神官、故オーリヤス・メイラル」
 前置きをしたパストレーユは、議事録を読み上げ始めた。

  ◆◆◆‡◆◆◆‡◆◆◆


「魔法会議 議事録」

日時 ソレイヤール紀元844年 春5番目の月 14日目
場所 ソレイヤール大神殿 会議所
出席者 神官55名 
議長 オーリヤス・メイラル
特別参加者 レオーニス・メイラル(研修神官)


一同「地霊のお導きがありますように」

議長「第864回魔法会議を始める。このたびの懸案事項は諸君らも承知の通り、天候不安による作物不足、および隣国ミッテルスラムトの不穏な動きなどがあり、それらに対応できる魔法の創造が急務である。誰か新しい魔法の開発に成功した者はおらぬか?」
 
レオーニス「このたび新しく神官に就任したレオーニスです。まだ研修中ですが、このたび、農作業に従事している木偶人形たちに改良を加え、さらに高度な農作業である、刈り取り、ネクタル果実の剪定などができるようにいたしました。下級騎士の数が圧倒的に足りない今、最悪の場合、兵士として農民を動員しても、農業従事者は確保でき、食糧の供給ができます」
 
議長「大儀である」

未許可発言者「研修中の神官が魔法開発とは。親子で茶番ですな」
議長「今の発言は創造会議侮辱罪に相当するが」
未許可発言者「謝罪の上発言を取り消します」

パストレーユ「レオーニス神官。その木偶は、兵士にも転用可能でしょうか。現在わが国の喫緊の課題は、騎士と兵力の圧倒的な不足ですが」

レオーニス「いえ、敵味方の区別がまだつかない段階ですから、兵力への転用は今の段階では無理です」

議長「他に案はないのか?」

ツニヤーダ「立法神官ツニヤーダです。このたび、私は病を創造しました。敵を倒すだけでなく、恐怖を植えつけ、戦意を喪失させることができます。ミッテルスラムト兵が攻め入ったときに有効ですが、それ以前にこの魔法を使えば、災いを未然に防ぐことができるでしょう」

サンキロ「異議あり。神官魔法は命の魔法。病は、命の魔法ではありません」

ツニヤーダ「病こそ、生命ですよ。ご存じないか? 病とは、人の身体の中に宿った目に見えない悪魔により引き起こされるもの。その悪魔が体内に入り込みますと、人の身体を内側から蝕みます。しかし人の中にも抗う力があるため、そこで戦いが起こるのであります。そこでもし、悪魔の力を強めることができれば、人はたやすく病に倒れるのです。ですから病は命の魔法でしょう?」

サンキロ「しかし、正義の魔法ではありません」

ツニヤーダ「正義や悪とはなんですか? 我々にソレイヤールとってみれば、侵略者こそが悪。しかもここソレイヤールには、戦うすべがありませぬからな。命の魔法を使い、悪を懲らしめるまで」

パストレーユ「いやはや……しかし、その悪魔とはどのようなものでしょう?」

ツニヤーダ「ボレム外れの森にある、沼の噂を聞いたことがあるはず。あの沼の淀んだ水が身体にかかったり飲んだりすると、息が詰まり、あげくに死ぬこともあるようです。よどみの中に、目に見えぬ悪魔が泳いでいるのですな。ですから、その沼の水から悪魔を取り出し、白の魔法で育てて力をつけるのです。そして念には念を入れて、黒の魔法の力で、敵の抗う力を下げれば、敵など赤子の手をひねるようなもの」

パストレーユ「その悪魔の力をどのように使うのですか? そして人は、どのようになるのですか?」

ツニヤーダ「悪魔の力を強めた水を噴霧します。それを吸い込むと喉や鼻が腫れて、息ができなくなり死にます。また病に冒された者が吐き出す息や唾などの体液にも、悪魔が潜んでおりますから、それを吸い込んだ者にも、災厄が及びます」

パストレーユ「その悪魔を放置したら、我が国まで滅亡するではありませぬか」

ツニヤーダ「最後に黒の魔法で悪魔を殺せば心配ないでしょう」


未許可発言者「そ、それは、あまりにも」
未許可発言者「いや、確かに国難は避けられるかもしれぬが……」
未許可発言者「しかし、人として、その『創造』は……」
議長「静粛に! 諸君静粛に!」

バレムイーダ「我が国では、神官が人をあやめたり傷つけたりすることは禁じられている。諸氏らもご存じのはず。大地の精はお悲しみになりまずぞ」

モゼール「しかし、もし敵が攻め込んできたらどうされる。騎士や兵の数は十分ではないのですが」

バレムイーダ「大地の精は我々を試しておられる。我々が正しい行いをすれば、その心に答えてくださいます。そのお心を信じないことが、なによりの不敬。我々、白の魔法使いの末裔は、人々を生かす約束で、この力を大地の精から授かったのです。その誓いを破るときは、この力をお返しするとき。我々は先祖代々、そのことを胸に刻みつけてきたのではありませぬか?」


未許可発言者「異議あり。バレムイーダ教育官は、王を誘導しようとしています」
未許可発言者「おまえこそ黙れ。この不心得者」
未許可発言者「ソレイヤールに大地の精あり。ミッテルスラムトなど恐るるに足りぬわ」

バレムイーダ「王の心が黒く染まるときソレイヤールの民も地も黒く染まりますぞ!」

議長「静まりなさい! 本件は、陛下のご決断を仰ぐことにする」

国王「人の生命を奪う魔法は、生命の魔法使いとして認めるわけにいかない。神官の魔法は命の魔法である。命を奪う魔法ではない」

ツニヤーダ「しかし、このままでは我が国は」

国王「だが生の魔法を、命を奪う魔法に変えてはいけないのだ。これは未来の為なのだ。王の命令である。廃案にせよ」

議長「国王の権限により、ツニヤーダ神官の意見を却下する」

バレムイーダ「議長。ツニヤーダ神官の罷免を要求いたします」

ツニヤーダ「なにを突然に」

バレムイーダ「当然ですよ。あなたの提案は、大地の精と、ソレイヤールのすべてへの反逆行為。このまま放っておく訳にはいきません。議長、裁決を!」

未許可発言者「そうだ。大地の精はお嘆きだ」

ツニヤーダ「愚か者ども……集団自殺でもするつもりなのか」

未許可発言者「大地の精を愚弄するか」

国王「裁決をとるまでもない。今この場で!」

議長「閉会を宣言する!」

  ◆◆◆‡◆◆◆‡◆◆◆


 パストレーユは静かに議事録を閉じた。
「このように陛下の独断で、ツニヤーダは罷免されたのです」
「でも……それは陛下だけのせいなのかなあ……勢いというか」
 アルネリアが呻くように言う。
「しかし、最終的な判断を下したのは陛下です」
「では、その禁じられたはずの魔法が、戦で使われたのは?」
 アルネリアに問いかけられたパストレーユは、辛そうに目を閉じた。
「新しい武器を持った敵により、国境の村が次々と占領された段階で、万策尽きました。そこで大神官の強権を発動し、禁じられた魔法を復活させたのです」
「つまり、その魔法を復活させたのは……」
「先代の大神官オーリヤス・メイラル。レオーニス、フィラーロ兄弟の父君です。あの戦で作戦を立てたのもオーリヤス大神官。そして戦が終わったのちに、多くの国民を死なせた責任をとり、ご自身は辞任しました。そして国王陛下はといえば、独断でツニヤーダの魔法を退け、国民を危機にさらしたことで、多くの神官や国民に責められ、幽霊のような存在に成り果ててしまいました」
 それで国王レルニリウスは、魔法会議にも出席せず、亡霊のように生きてきたということか。アルネリアは堂々と国王として振る舞っている自分の父を思い浮かべた。もしも同じような立場に追い込まれたら、見ている自分は胸を痛めるだろう。
「それから、大神官はどうなさったのですか?」
「オーリヤス様は5年前にお亡くなりになったのです。王太子の呪いを解く手がかりもつかめないまま……」
「ちょっと待ってください。王太子の呪いの秘密を知っているのは、確か、国王陛下ご夫妻、王太子ご本人、パストレーユさんとティリアーノさん父子、大神官と犯人と聞きましたが、その大神官は今の大神官ではなく……」
「ああ、そうです。オーリヤス様です。もちろん現大神官も事情は知らされているはずです」
 なるほど……。アルネリアは、目を閉じてしばらく考え込んでいた。
「ねえ賢者君。私たちはこれからどうすればいいだろう」
「関係者に集まってもらって、改めて事情を問いただしましょう」
 問いかけるヴァレリウスにアルネリアが答えると、ティリアーノが身を乗り出した。
「僕は個人的にレオーニス立法祭司を呼んで聞いてみたいのですが」
「もちろんです。もしガリマーロさんが望むなら、彼も呼んでください」
  そしてアルネリアはヴァレリウスの顔を正面から見つめた。
「その前に王太子殿下。ふたりだけでお話ししたいことがあります」
 ヴァレリウスは驚いたような目をしたが、すぐに穏やかな笑みを口元に浮かべた。
「いいよ。ここでいい? みんなに出て行ってもらう?」
「いえ、できれば図書室がいいです。以前見せてくださるという約束しましたよね」
「そうだったね。それでは行こう」
 ヴァレリウスが手を差し伸べたので、アルネリアも自然に手を伸ばした。
 その次の瞬間。アルネリアは自らの失態を自覚し、叫びそうになった。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』

放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。 「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」 身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。 冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。 「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」 得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。 これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。

辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~

香木陽灯
恋愛
 「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」  実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。  「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」  「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」  二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。 ※ふんわり設定です。 ※他サイトにも掲載中です。

婚約破棄された令嬢ですが、帳簿があれば辺境でも無双できます ~追い出した公爵家は、私がいないと破産するらしい~

Lihito
ファンタジー
公爵令嬢アイリスは、身に覚えのない罪で婚約破棄され、辺境へ追放された。 だが彼女には秘密がある。 前世は経理OL。そして今世では、物や土地の「価値」が数字で見える能力を持っていた。 公爵家の帳簿を一手に管理していたのは、実は彼女。 追い出した側は、それを知らない。 「三ヶ月で破産すると思うけど……まあ、私には関係ないわね」 荒れ果てた辺境領。誰も気づかなかった資源。無口な護衛騎士。 アイリスは数字を武器に、この土地を立て直すことを決意する。 ——追い出したこと、後悔させてあげる。

白い結婚なので無効にします。持参金は全額回収いたします

鷹 綾
恋愛
「白い結婚」であることを理由に、夫から離縁を突きつけられた公爵夫人エリシア。 だが彼女は泣かなかった。 なぜなら――その結婚は、最初から“成立していなかった”から。 教会法に基づき婚姻無効を申請。持参金を全額回収し、彼女が選んだ新たな居場所は修道院だった。 それは逃避ではない。 男の支配から離れ、国家の外側に立つという戦略的選択。 やがて彼女は修道院長として、教育制度の整備、女性領主の育成、商業と医療の再編に関わり、王と王妃を外から支える存在となる。 王冠を欲さず、しかし王冠に影響を与える――白の領域。 一方、かつての夫は地位を失い、制度の中で静かに贖罪の道を歩む。 これは、愛を巡る物語ではない。 「選ばなかった未来」を守り続けた一人の女性の物語。 白は弱さではない。 白は、均衡を保つ力。 白い結婚から始まる、静かなリーガル・リベンジと国家再編の物語。

「婚約破棄して下さい」と言い続けたら、王太子の好感度がカンストしました~悪役令嬢を引退したいのに~

放浪人
恋愛
「頼むから、私をクビ(婚約破棄)にしてください!」 乙女ゲームの悪役令嬢に転生した公爵令嬢リュシア。 断罪・処刑のバッドエンドを回避するため、彼女は王太子レオンハルトに「婚約破棄」を突きつける。 しかしこの国には、婚約者が身を引こうとするほど、相手の本能を刺激して拘束力を強める《星冠の誓約》という厄介なシステムがあった! リュシアが嫌われようと悪態をつくたび、王太子は「君は我が身を犠牲にして国を守ろうとしているのか!」とポジティブに誤解。 好感度は爆上がりし、物理的な距離はゼロになり、ついには国のシステムそのものと同化してしまい……? 書類整理と法知識を武器に、自称聖女の不正を暴き、王都の危機を救ううちに、いつの間にか「最強の王妃」として外堀も内堀も埋められていく。 逃げたい元社畜令嬢と、愛が重すぎる王太子の、すれ違い(と見せかけた)溺愛ファンタジー!

無能だと追放された「雑用係」のハル、現代の知恵(ライフハック)を駆使したら、呪われた魔王城が聖域化して伝説の賢者と呼ばれ始めた

ユネ
ファンタジー
「君のような無能な掃除係は必要ない!」 勇者パーティーからゴミのように捨てられた雑用係のハル。だが彼女には、前世で培った【家事のプロとしてのライフハック】があった。 ​移り住んだのは、誰もが恐れる『呪われた魔王城』。しかしハルにとっては、ただの「掃除のしがいがある大型物件」に過ぎなかった! 重曹とクエン酸で呪いを浄化し、アルミホイルで魔物を除け、ジャガイモの皮で伝説の鏡を蘇らせる。 ​魔法より便利な知恵で、お城はいつの間にか世界一快適な聖域に。 一方、ハルを失った勇者たちは、汚部屋と化した拠点と自らの無知に絶望することになり――。 ​これは、一人の「掃除好き」が知恵と工夫だけで異世界に革命を起こし、最高のスローライフを手に入れるまでの物語。

氷の精霊と忘れられた王国 〜追放された青年、消えた約束を探して〜

fuwamofu
ファンタジー
かつて「英雄」と讃えられた青年アレンは、仲間の裏切りによって王国を追放された。 雪原の果てで出会ったのは、心を閉ざした氷の精霊・リィナ。 絶望の底で交わした契約が、やがて滅びかけた王国の運命を変えていく――。 氷と炎、愛と憎しみ、真実と嘘が交錯する異世界再生ファンタジー。 彼はなぜ忘れられ、なぜ再び立ち上がるのか。 世界の記憶が凍りつく時、ひとつの約束だけが、彼らを導く。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

処理中です...