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四話
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「……国を出て、どうなさるのです。その後は、どうなさるおつもりなのですか」
そしてやってくる言葉。
それは、まごう事なき正論であった。
貴族家の嫡女として生きてきた人間が二人。
そんな人間が、家を出て、国を出て。
一体何が出来るのかと、カイゼルは私に指摘する。確かにその通りだ。
勿論、他に頼れる先に心当たりはない。
だけど、そんな私にもたった一つ、用意された逃げ込む選択肢というものが存在していた。
それは完全実力主義で知られるある国家——–—
「————魔法大国ヤハルト。そこにミハエラを連れて向かうわ」
「……今、なんと仰いましたか」
「貴方が聞き間違ったわけではないわ。魔法大国ヤハルト。中立国であるかの国に、私は向かうつもりよ」
「ですがあの国は、」
カイゼルが言わんとしたい事はわかる。
完全実力主義であり、実力があればどんな訳アリの人材だろうが受け入れ、国の財産として守るなどと公言するかの国は、今の私にとってはうってつけ。
けれども、かの国は完全な実力主義国家である。つまり、実力がなければそこに居場所は存在しない。
「完全実力主義国家、でしょ? そんな事、今時子供でも知ってるわよ?」
戯けたように笑みを浮かべて見せるも、カイゼルが私に向ける深刻そうな表情は微塵も綻ばない。言葉にこそされてないけれど、今すぐ考え直せとこれでもかと言わんばかりに視線で私に訴えかけていた。
「……魔法が使えるのであればまだしも、セフィリア様はお使いになられない」
シルヴィスあたりがその言葉を耳にしたならば、腹を抱えて大笑しそうな発言。
しかし、私がそうなるように長い時間を掛けて仕向けていた。だからこそ、彼を責める気なんてものは毛頭ないし、その発言こそがこの場において正しいものである。
ただ、こうなってはこの期に及んで魔法を使えるという事実をひた隠す理由はないと思った。
「私ね、貴方だけじゃなく、父も含め、家族全員に嘘を吐いてたの」
「嘘、ですか……?」
「そ。嘘。私ね、実は魔法使えるのよ」
これでも一応、私は〝精霊姫〟などと呼ばれていた人間。精霊に力を借りるだけが能じゃないし、借りないで良いようにと必死に魔法の鍛錬を続けていた人間だ。
いくら、十年以上ひた隠しにしていたとはいえ、〝精霊王〟直々に鍛えて貰った魔法に自信がないと言えば間違いなく嘘になる。
だからこそ、逃げる先に魔法大国ヤハルトを選んでいたのだけれど。
「それに、少し考えれば分かるでしょうけど、実は魔法が使える。だなんて事がなければ、そもそもミハエラを助ける事すら出来ないかもしれないじゃない。王都の、それもミハエラのいる王城なんて、許可を取らなければ私ですら立ち入りは出来ないでしょう?」
そしてやってくる言葉。
それは、まごう事なき正論であった。
貴族家の嫡女として生きてきた人間が二人。
そんな人間が、家を出て、国を出て。
一体何が出来るのかと、カイゼルは私に指摘する。確かにその通りだ。
勿論、他に頼れる先に心当たりはない。
だけど、そんな私にもたった一つ、用意された逃げ込む選択肢というものが存在していた。
それは完全実力主義で知られるある国家——–—
「————魔法大国ヤハルト。そこにミハエラを連れて向かうわ」
「……今、なんと仰いましたか」
「貴方が聞き間違ったわけではないわ。魔法大国ヤハルト。中立国であるかの国に、私は向かうつもりよ」
「ですがあの国は、」
カイゼルが言わんとしたい事はわかる。
完全実力主義であり、実力があればどんな訳アリの人材だろうが受け入れ、国の財産として守るなどと公言するかの国は、今の私にとってはうってつけ。
けれども、かの国は完全な実力主義国家である。つまり、実力がなければそこに居場所は存在しない。
「完全実力主義国家、でしょ? そんな事、今時子供でも知ってるわよ?」
戯けたように笑みを浮かべて見せるも、カイゼルが私に向ける深刻そうな表情は微塵も綻ばない。言葉にこそされてないけれど、今すぐ考え直せとこれでもかと言わんばかりに視線で私に訴えかけていた。
「……魔法が使えるのであればまだしも、セフィリア様はお使いになられない」
シルヴィスあたりがその言葉を耳にしたならば、腹を抱えて大笑しそうな発言。
しかし、私がそうなるように長い時間を掛けて仕向けていた。だからこそ、彼を責める気なんてものは毛頭ないし、その発言こそがこの場において正しいものである。
ただ、こうなってはこの期に及んで魔法を使えるという事実をひた隠す理由はないと思った。
「私ね、貴方だけじゃなく、父も含め、家族全員に嘘を吐いてたの」
「嘘、ですか……?」
「そ。嘘。私ね、実は魔法使えるのよ」
これでも一応、私は〝精霊姫〟などと呼ばれていた人間。精霊に力を借りるだけが能じゃないし、借りないで良いようにと必死に魔法の鍛錬を続けていた人間だ。
いくら、十年以上ひた隠しにしていたとはいえ、〝精霊王〟直々に鍛えて貰った魔法に自信がないと言えば間違いなく嘘になる。
だからこそ、逃げる先に魔法大国ヤハルトを選んでいたのだけれど。
「それに、少し考えれば分かるでしょうけど、実は魔法が使える。だなんて事がなければ、そもそもミハエラを助ける事すら出来ないかもしれないじゃない。王都の、それもミハエラのいる王城なんて、許可を取らなければ私ですら立ち入りは出来ないでしょう?」
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