鉄騎の破城槌 麗しき工兵は戦場に橋を架ける

米ちゃん

文字の大きさ
16 / 34
第二章:丸太と魔法と、覇道の軍道

ハーフエルフ、友情パワーで道を作る

しおりを挟む
 シャルマーニとオリビエの姿が谷の上に消えると同時に、呆然としていたランスローネはハッと我に返り、そしてがばっとエーリカの両肩を掴んだ。
「エーリカ! 今の聞いたな!? 猶予が一日増えたで!」
「は、はいっ! すごいですローネさん!」
 二人は手を取り合って喜ぶ。
「し、信じられん……あの、絶対に妥協しない冷徹なシャルマーニ殿下が、期限を増やすなど……!」
 ロランドは天地がひっくり返ったかのような衝撃を覚える。
「で、でも……この岩山の上からアイゼン・ガルドまで三日で道を作るなんて……そんなの無理ですよぉ!」
「やっぱそう思うやろな……いや、やるんや! あんたとならやれる! うちに、あんたの魔力を全部貸して!」
​ ランスローネはエーリカの手を強く握りしめた。
「うちの計算と土の精霊魔法に、あんたが持ってる膨大な魔力を上乗せするんや。二人の友情パワーを合わせれば、道の方からアイゼン・ガルドに会いに行ってくれるはずや!」
「友情パワー……」
​ エーリカは意を決して、ランスローネの手を握り返す。
「やりましょう、ローネさん。私たちの友情パワーで、不可能を可能にしましょう!」
 朝日が岩壁を白く照らし始める中、二人は岩の上を見上げる。
「美しい……これぞ友情……!」
 ロランドは感動する。
「ま、とりあえず、完成したばかりの昇降機で上に行こうや」
 シュミットが言い、ランスローネとエーリカとロランドが、丸太で出来た箱の中に入り、扉が閉じられる。
「そんじゃ、上げるぞー」
 シュミットがハンドルを回すと、幾つもの歯車が連動して動きを伝え合い、やがて昇降機が作動して、丸太箱が上がっていく。
「おおー」
 鉱夫や職人や歩荷たちが感嘆の声を上げる。
「そういえばシャルマーニ殿下は、せっかくの昇降機に乗らず石段を上っていきましたけど、何故乗ろうとしなかったんでしょう?」
 不思議そうに小首を傾げるエーリカに、ロランドも腕を組んで頷いた。
「うむ、シュミットもそうであったな。あれほど出来栄えを褒めておきながら、一歩も箱に足を踏み入れようとはしなかった」
​「そりゃ、安全かどうか確かめてないからやろ」
​ 二人の疑問に、ランスローネはあっけらかんとにこやかに答える。
「うちらが作ったもんは最高やけど、まだ一度も重い荷物を積んで上下させてへんからな。こんな得体の知れん箱に、国を背負う王女様や現場の親方がいきなり乗るわけないやん。万が一、ロープが切れたり歯車が欠けたりしたら、アイゼン・ガルドも『ヴェリアの心臓』も、ヴェリア辺境領も終わりやで」
​「な、なるほど……。命がけの試運転は、私たちの役目ということですか……」
 エーリカが青ざめると、ランスローネは「うちは自分の設計を信じてるから、全然平気やけどな! わははは」と笑い飛ばす。
​「だからこそ、うちらが先陣を切って頂上まで行くんや」
 やがて、重厚な音を立てて昇降機が岩山の頂上に到着した。
 扉が開くと、そこにはアイゼン・ガルドへと続く険しい未開の地が広がっている。
​「よっしゃ! エーリカ、やるで!」
「はい、ローネさん!」
​ 二人が崖の縁に立ち、手を繋ぐ。
 ロランドは固唾を呑んで見守る。
 エーリカの足下に、青白く光る円形の魔法術式が展開した。 
 そして彼女の身体の内から、目に見えるほどのマナの奔流が溢れ出し、ランスローネへと流れ込む。
(土の精霊ドゥーフ・ゼムリア、うちに力を貸して!
 此処から街までの道を、未来への希望になる道を、奔らせて!)
 ランスローネは声に出さず、土の精霊に念じて呼びかける。
 エーリカからの供給が上乗せされて、体内の魔力が一気に高まったから可能になったのだ。
 次の瞬間、大地が生き物のように脈動し始めた。
 巨大な岩が砕け、土が盛り上がり、蛇が這うような滑らかな曲線を描きながら、道がアイゼン・ガルドに向かって伸びていく。
「お、おおおおおお!?」
 ロランドが驚嘆の声を上げる。
 その現象は、中間地点である『石休みの場』で、丸太に腰掛けて休憩していたシャルマーニとオリビエも目撃した。
 そして道はアイゼン・ガルドに到達した。
 土木工事が、魔法によって数分で成し遂げられた光景は、まさに神話の一節のようだった。
 だが、その代償は大きかった。
​「……あはは。……うちの勝ち……や……」
​ 満足げな笑みを浮かべたまま、ランスローネは糸の切れた人形のように崩れ落ち、意識を失った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

処理中です...