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第二章:丸太と魔法と、覇道の軍道
ハーフエルフ、友情パワーで道を作る
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シャルマーニとオリビエの姿が谷の上に消えると同時に、呆然としていたランスローネはハッと我に返り、そしてがばっとエーリカの両肩を掴んだ。
「エーリカ! 今の聞いたな!? 猶予が一日増えたで!」
「は、はいっ! すごいですローネさん!」
二人は手を取り合って喜ぶ。
「し、信じられん……あの、絶対に妥協しない冷徹なシャルマーニ殿下が、期限を増やすなど……!」
ロランドは天地がひっくり返ったかのような衝撃を覚える。
「で、でも……この岩山の上からアイゼン・ガルドまで三日で道を作るなんて……そんなの無理ですよぉ!」
「やっぱそう思うやろな……いや、やるんや! あんたとならやれる! うちに、あんたの魔力を全部貸して!」
ランスローネはエーリカの手を強く握りしめた。
「うちの計算と土の精霊魔法に、あんたが持ってる膨大な魔力を上乗せするんや。二人の友情パワーを合わせれば、道の方からアイゼン・ガルドに会いに行ってくれるはずや!」
「友情パワー……」
エーリカは意を決して、ランスローネの手を握り返す。
「やりましょう、ローネさん。私たちの友情パワーで、不可能を可能にしましょう!」
朝日が岩壁を白く照らし始める中、二人は岩の上を見上げる。
「美しい……これぞ友情……!」
ロランドは感動する。
「ま、とりあえず、完成したばかりの昇降機で上に行こうや」
シュミットが言い、ランスローネとエーリカとロランドが、丸太で出来た箱の中に入り、扉が閉じられる。
「そんじゃ、上げるぞー」
シュミットがハンドルを回すと、幾つもの歯車が連動して動きを伝え合い、やがて昇降機が作動して、丸太箱が上がっていく。
「おおー」
鉱夫や職人や歩荷たちが感嘆の声を上げる。
「そういえばシャルマーニ殿下は、せっかくの昇降機に乗らず石段を上っていきましたけど、何故乗ろうとしなかったんでしょう?」
不思議そうに小首を傾げるエーリカに、ロランドも腕を組んで頷いた。
「うむ、シュミットもそうであったな。あれほど出来栄えを褒めておきながら、一歩も箱に足を踏み入れようとはしなかった」
「そりゃ、安全かどうか確かめてないからやろ」
二人の疑問に、ランスローネはあっけらかんとにこやかに答える。
「うちらが作ったもんは最高やけど、まだ一度も重い荷物を積んで上下させてへんからな。こんな得体の知れん箱に、国を背負う王女様や現場の親方がいきなり乗るわけないやん。万が一、ロープが切れたり歯車が欠けたりしたら、アイゼン・ガルドも『ヴェリアの心臓』も、ヴェリア辺境領も終わりやで」
「な、なるほど……。命がけの試運転は、私たちの役目ということですか……」
エーリカが青ざめると、ランスローネは「うちは自分の設計を信じてるから、全然平気やけどな! わははは」と笑い飛ばす。
「だからこそ、うちらが先陣を切って頂上まで行くんや」
やがて、重厚な音を立てて昇降機が岩山の頂上に到着した。
扉が開くと、そこにはアイゼン・ガルドへと続く険しい未開の地が広がっている。
「よっしゃ! エーリカ、やるで!」
「はい、ローネさん!」
二人が崖の縁に立ち、手を繋ぐ。
ロランドは固唾を呑んで見守る。
エーリカの足下に、青白く光る円形の魔法術式が展開した。
そして彼女の身体の内から、目に見えるほどのマナの奔流が溢れ出し、ランスローネへと流れ込む。
(土の精霊ドゥーフ・ゼムリア、うちに力を貸して!
此処から街までの道を、未来への希望になる道を、奔らせて!)
ランスローネは声に出さず、土の精霊に念じて呼びかける。
エーリカからの供給が上乗せされて、体内の魔力が一気に高まったから可能になったのだ。
次の瞬間、大地が生き物のように脈動し始めた。
巨大な岩が砕け、土が盛り上がり、蛇が這うような滑らかな曲線を描きながら、道がアイゼン・ガルドに向かって伸びていく。
「お、おおおおおお!?」
ロランドが驚嘆の声を上げる。
その現象は、中間地点である『石休みの場』で、丸太に腰掛けて休憩していたシャルマーニとオリビエも目撃した。
そして道はアイゼン・ガルドに到達した。
土木工事が、魔法によって数分で成し遂げられた光景は、まさに神話の一節のようだった。
だが、その代償は大きかった。
「……あはは。……うちの勝ち……や……」
満足げな笑みを浮かべたまま、ランスローネは糸の切れた人形のように崩れ落ち、意識を失った。
「エーリカ! 今の聞いたな!? 猶予が一日増えたで!」
「は、はいっ! すごいですローネさん!」
二人は手を取り合って喜ぶ。
「し、信じられん……あの、絶対に妥協しない冷徹なシャルマーニ殿下が、期限を増やすなど……!」
ロランドは天地がひっくり返ったかのような衝撃を覚える。
「で、でも……この岩山の上からアイゼン・ガルドまで三日で道を作るなんて……そんなの無理ですよぉ!」
「やっぱそう思うやろな……いや、やるんや! あんたとならやれる! うちに、あんたの魔力を全部貸して!」
ランスローネはエーリカの手を強く握りしめた。
「うちの計算と土の精霊魔法に、あんたが持ってる膨大な魔力を上乗せするんや。二人の友情パワーを合わせれば、道の方からアイゼン・ガルドに会いに行ってくれるはずや!」
「友情パワー……」
エーリカは意を決して、ランスローネの手を握り返す。
「やりましょう、ローネさん。私たちの友情パワーで、不可能を可能にしましょう!」
朝日が岩壁を白く照らし始める中、二人は岩の上を見上げる。
「美しい……これぞ友情……!」
ロランドは感動する。
「ま、とりあえず、完成したばかりの昇降機で上に行こうや」
シュミットが言い、ランスローネとエーリカとロランドが、丸太で出来た箱の中に入り、扉が閉じられる。
「そんじゃ、上げるぞー」
シュミットがハンドルを回すと、幾つもの歯車が連動して動きを伝え合い、やがて昇降機が作動して、丸太箱が上がっていく。
「おおー」
鉱夫や職人や歩荷たちが感嘆の声を上げる。
「そういえばシャルマーニ殿下は、せっかくの昇降機に乗らず石段を上っていきましたけど、何故乗ろうとしなかったんでしょう?」
不思議そうに小首を傾げるエーリカに、ロランドも腕を組んで頷いた。
「うむ、シュミットもそうであったな。あれほど出来栄えを褒めておきながら、一歩も箱に足を踏み入れようとはしなかった」
「そりゃ、安全かどうか確かめてないからやろ」
二人の疑問に、ランスローネはあっけらかんとにこやかに答える。
「うちらが作ったもんは最高やけど、まだ一度も重い荷物を積んで上下させてへんからな。こんな得体の知れん箱に、国を背負う王女様や現場の親方がいきなり乗るわけないやん。万が一、ロープが切れたり歯車が欠けたりしたら、アイゼン・ガルドも『ヴェリアの心臓』も、ヴェリア辺境領も終わりやで」
「な、なるほど……。命がけの試運転は、私たちの役目ということですか……」
エーリカが青ざめると、ランスローネは「うちは自分の設計を信じてるから、全然平気やけどな! わははは」と笑い飛ばす。
「だからこそ、うちらが先陣を切って頂上まで行くんや」
やがて、重厚な音を立てて昇降機が岩山の頂上に到着した。
扉が開くと、そこにはアイゼン・ガルドへと続く険しい未開の地が広がっている。
「よっしゃ! エーリカ、やるで!」
「はい、ローネさん!」
二人が崖の縁に立ち、手を繋ぐ。
ロランドは固唾を呑んで見守る。
エーリカの足下に、青白く光る円形の魔法術式が展開した。
そして彼女の身体の内から、目に見えるほどのマナの奔流が溢れ出し、ランスローネへと流れ込む。
(土の精霊ドゥーフ・ゼムリア、うちに力を貸して!
此処から街までの道を、未来への希望になる道を、奔らせて!)
ランスローネは声に出さず、土の精霊に念じて呼びかける。
エーリカからの供給が上乗せされて、体内の魔力が一気に高まったから可能になったのだ。
次の瞬間、大地が生き物のように脈動し始めた。
巨大な岩が砕け、土が盛り上がり、蛇が這うような滑らかな曲線を描きながら、道がアイゼン・ガルドに向かって伸びていく。
「お、おおおおおお!?」
ロランドが驚嘆の声を上げる。
その現象は、中間地点である『石休みの場』で、丸太に腰掛けて休憩していたシャルマーニとオリビエも目撃した。
そして道はアイゼン・ガルドに到達した。
土木工事が、魔法によって数分で成し遂げられた光景は、まさに神話の一節のようだった。
だが、その代償は大きかった。
「……あはは。……うちの勝ち……や……」
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