鉄騎の破城槌 麗しき工兵は戦場に橋を架ける

米ちゃん

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第五章:アイゼン・ガルド改造計画

ハーフエルフ、ギルドマスターの過去を聞く

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「ギルマースはん。アイゼン・ガルド改造の都市計画に、冒険者ギルドも噛んでもらうけど……それは、工兵長であるうちとギルマースはんが決めた事や。まだシャルマーニ殿下の許しは得てへん。そこは、ちゃんと分かってるな?」
 ​ランスローネのその一言で、ギルマースは夢から醒めたようにハッと顔を上げた。
「お、おう……そうだったな」
 この街アイゼン・ガルドの、ひいてはヴェリア辺境領の絶対的な支配者であるシャルマーニの顔が脳裏に過ぎり、ギルマースは渋面をつくる。
​「ローネさん、どうしてそんなことを?
せっかく話がまとまったのに……」
 エーリカが不安そうに、厚いローブの裾を握りしめる。
​「別にうちは口八丁手八丁な詐欺師やないで。ひとをだまくらかして仕事すんのは性に合わんし、筋は通さんとあかんと思っただけや。シャルマーニ殿下が冒険者ギルドの介入を嫌がる可能性が、無きにしも非ずやからな」
 ランスローネは、翡翠色の瞳を細めてギルマースを射抜くように見た。
​「ギルマースはん、あんたは現役の頃は『鋼拳のギルマース』って呼ばれてたらしいけど、今はギルドマスターをやってるやん。その経緯にシャルマーニ殿下と何か関係あるんやったら教えてほしい。でないと、話がおじゃんになるかもしれへん」
 ​沈黙が部屋を支配する中、ギルマースは机に積まれた金貨を眺めながら、重い口を開いた。
​「……今から五年前だ。この街がまだキャンプ同然の集落だった頃、冒険者たちをまとめる顔役だった俺様の前に、シャルマーニ王女が現れた。シャルマーニ王女は集落を領都にすると宣言し、俺様たちを傘下に置こうとしたんだ。当然、俺様たちは反発した。そして俺様が顔役として、シャルマーニ王女に引導を渡してやろうとしたんだが──」
​ ギルマースの眉間に皺が寄る。
​「──結果は一瞬だ。シャルマーニ王女は、俺様の二つ名の由来である『鋼の拳の一撃』を鼻先で笑い飛ばし、ただの拳一つ、文字通りワンパンで、俺様を地べたに這いつくばらせやがった。そして俺様は酒浸りになって腐ってたんだが、シャルマーニ王女は俺様の襟首を掴んでこう言いやがった。​『貴様のような荒くれ冒険者共を束ねるのは、一度地獄を見た男が相応しい。貴様が冒険者ギルドを設立してギルドマスターになり、ここの秩序を仕切れ』とな」
​「……なんか、誰かさんと似たような話やな」
 ギルマースの独白を聞き終えたランスローネはロランドを見やり、彼はギルマースとは違って誇らしげに胸を張る。
「ほな、シャルマーニ殿下は冒険者ギルドが都市計画に関わっても別に何も咎め立てせーへんな。それなら話早いわ。ひとまず、冒険者ギルドに仕事を依頼するから金貨十万枚を都合してくれって話をするわ」
「じゅっ、十万枚!?」
 机に積まれている金貨の枚数、約五千枚の二十倍の数字を聞いて、ギルマースは仰天して目を剥き、ロランドとシュミットと呆然とする。
 エーリカは、もはや数字が大きすぎて想像が追いつかないのか、瓶底眼鏡を指で直そうとして、指が震えて眼鏡を落としそうになっている。
「街全体を作り変える資材の費用に約五万枚。冒険者ギルドに都合してもらう労働者の人件費に約三万枚。あとは、ギルマースはんへの手数料や、何かあった時に使う資金で約二万枚。せやから十万枚や。そんくらいポンッと出してくれるか、首刎ねんぞと怒られるか──言うだけやったらタダやからな。ま、期待して待っとき」
 指折り数えて述べ、そしてシャルマーニを説得して予算をもぎ取れる自信に満ち溢れた笑みを浮かべるランスローネであった。
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