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5 告解室の男
しおりを挟む「まぁ…理由は色々ありますが…」
男は言葉を濁して答えなかった。
「ところで司祭様、この前の…してみましたか?」
ミハイルの心臓が凍りそうなほどギクッとする。
「……してません!!」
顔が真っ赤に火照った。
「ハハ、ハハハ!!」
男は愉しげに笑う。そして、
「司祭様、少し待っていて下さいませんか?」と言って告解室を出ていった。
告解の途中で出ていくなど、聞いたことがない。
なぜならこれは神に許しを乞う、神聖なる儀式なのだから。
ミハイルはポカンとした様子で待っていた。
(男が何を考えているか、さっぱり分からない…)
気を取り直して聖典を開いた。
(そうだ、男のペースに流されっぱなしだ。気を引き締めなければ)
そう思いながら読み始めた時だった。
ミハイルがいる廊下に続くドアがキイッと開いたのだ。
驚いてドアの方を見ると、そこに年若い男が立っていた。
「……どちら様でしょう」
(ここは司祭だけが使う通路だ…なぜここに?)
男は美しいプラチナブロンドに、ルビーのような煌々とした輝きを放つ瞳をしていた。
そしてスラリとした身長に、服の上からでも分かる鍛えた肉体。
飾りは少ないが、明らかに上質な衣類…。
男の余りの美しさに、ミハイルはゴクリと唾を飲んだ。
すると男はフフ…っと嗤った。
その笑い声で男が告解室の男だと理解した。
「!! あなたは…!!」
ミハイルは思わず勢い良く立ち上がり、椅子が大きな音を立てて倒れた。
(こんな美しい人が、あんな淫猥な告解をしていただなんて…!)
そして男の言葉を思い出して赤くなった。
「驚きましたか?」
「…ええ、とても」
男は怪しげな笑みを含んだ目をして、ミハイルを凝視してくる。
その視線が獲物を狙う獣のようで、背筋がゾクッとした。
「ここは…司祭のみが使用できる通路です。お戻り下さい」
ミハイルは顔を反らして言った。
ーーーしかし、男はコツコツと靴の音を鳴らしてゆっくりと近づいてきたのだ。
「!?」
(近い…!)
男はミハイルの眼前までに迫り、男の影がミハイルを覆った。
「司祭様」
男は何故かほんのりと頬を染めている。
「先ほど、言いましたよね。一度挑戦してみると」
「え、ええ」
男は再びフフ…と嗤った。
(何だ…?意味が分からない)
「私の相手は男なのです」
「えっ」
(男、とは、男色ということか?そういう世界もあることは知っているが…)
すると男はミハイルの長い髪に触れ、一束掴むと、キスをした。
「そして司祭なのです」
「え…」
「鈍いですね。貴方の事ですよ」
「は、」
ミハイルは余りの出来事に思考が停止してしまった。
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