アルディアからの景色

沼田桃弥

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第3章:アルディアへの扉(メフィスト視点)

3-3:とある少年との出会い

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 数分後、ディーナがオムライスとケチャップのボトルを持ってきた。メフィストの前に雑っぽく置いた。


「はい、オムライス。なんか書いて欲しいもんあんの?」
「書いて欲しいもの? 特にないけど。何でもいいぞ」


 ディーナはため息をついて、ケチャップのボトルを持つと、オムライスの上に文字を書いた。


「はい。さっさと食べて、さっさと帰れよ」


 ディーナは文字を書き終わると、他の客のところへ行った。メフィストは書かれた文字を見て、苦笑いした。


「平仮名で雑魚はないでしょ。まっ、ハートマーク書いてるとこ、あいつらしいというか……」
 メフィストはオムライスを一口食べた。今まで食べてきたオムライスの中で一番美味しく、驚いた。あっという間に平らげると、再びディーナを呼んだ。


「何? 指名制じゃないんだけど!」
「金はこれで足りるか?」
「全然足りる。はい、二度と来ないでくださぁい」
「次はストラスと来るからな。ほんじゃ」
「ちょっ、ちょっと待ちなさいよ!」


 ディーナは顔を真っ赤にしていた。ディーナが昔からストラスに憧れていたのを知っていたので、メフィストは少しからかってやった。
 メフィストは次に古書店へ寄り、店主に珍しい書物がないかを尋ね、ストラスの土産でその書物を購入した。


「飯も食ったし、ストラスの土産も買ったし、何すっかなぁ?」


 メフィストがブラブラと歩いていると、突然後ろから誰かがぶつかってきた。メフィストが振り返ると、小さい子供だった。


「だ、大丈夫かい? って、おっとっと……」


 メフィストが羽織っていたマントが子供の下敷きになっており、メフィストはバランスを崩し、噴水に勢いよく落ち、飛沫をあげた。


「だ、大丈夫ですか!」
「うわぁ、派手に入っちまった」


 メフィストは髪をかき上げ、噴水から出た。子供はチラシと書物を両手に抱え、メフィストの元へ駆け寄ってきた。


「ほ、本当に申し訳ありません! 僕の不注意でご迷惑をおかけしました!」


 メフィストは子供に大丈夫と言ったが、目の前で土下座された。メフィストは子供に触れようとしたら、子供は体を震わせ、涙目になっていた。


「いいよ。そんな怖がらないで。取って食ったりしないから。……あっ、ストラスの土産どこだ? 噴水の中か?」


 メフィストが噴水の中を覗こうとしたら、子供が服を引っ張ってきた。


「あの、本なら大丈夫です。これですよね?」
「あぁ、それそれ。それが無事ならいいや。坊主、今度は気を付けなよ。じゃあな」
「お、お待ち下さい! お、お詫びを! そのままだと風邪を引かれてしまいます!」


 メフィストはこのまま帰るつもりだったが、子供に服を引っ張られた。周りもなんの騒ぎかと見てきており、なんだか面倒事になりそうだ。メフィストはため息をつき、子供の前にしゃがんで、頭を撫でた。


「じゃ、服を乾かせる場所に案内してもらおうかな」
「はい! ご案内いたします」


 メフィストは全身ずぶ濡れのまま、子供の後をついていった。
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