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第8章:(苺視点)
8-4:新しい生活の幕開け
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「なんだかんだ言って、セーレさんは優しいですね」
「あれのどこが優しいんだ。あの獣人もよくあんな奴を好きになったもんだ」
「あはははぁ……。――あっ、たぶんここじゃないですか? 二番街の坂の中腹なので。それにしても、大きいですね。二階建てだし、庭までついてますよ!」
「あぁ、立派だな」
漆喰塗の真っ白な外壁に、ウォルナット色の格子やドアが落ち着いた雰囲気を漂わせていた。玄関先にはオリーブの木が植えてあった。二人は玄関へ向かったが、ある問題が起きた。
「そう言えば、家の鍵が無いです。月下お兄様に聞くのを忘れました」
「……ん? 鍵なら持っているじゃないか」
「持ってませんよ。持ってるのは権利書で――って、あれ、鍵だ。いつの間に?」
「権利書が鍵になる仕掛けなのか? 面白いな。とりあえず中へ入ろう」
苺は鍵を開け、ストラスとともに家の中へ入った。家の中はリゾート地のような開放感あふれる造りだった。アンティーク調の家具が備え付けられ、すぐにでも住める状態だった。
「本当にこんな豪華な家に住んでいいんでしょうか?」
「良いんじゃないのか? 私の屋敷に比べれば、広過ぎもせず、快適だろう」
「た、確かにストラス様のお屋敷は少々広過ぎな気がしました。それより、食材を調達しないと……。お金があるとしても、今後の事も考えないと」
「ふっ、なんだか楽しそうだな」
ストラスは苺の様子を見て、思わず笑った。ストラスは持っていた荷物をダイニングテーブルに置いた。
「では、私はこれで失礼するよ」
「えっ! ストラス様、帰られるんですか!」
「ん? いや、ここは苺の家だし、私の屋敷にはオルトロスがいる。食事を与えないと、屋敷と庭園が荒らされる。では、また来週来る」
ストラスはそう言うと、玄関へ向かい、ドアノブに手を掛けた。その時、苺が駆け寄り、ストラスに抱きついた。
「なんだ、苺。急に抱きついてきて。また来週来ると言ったではないか」
「そうですけど、……そうですけど」
苺は先程よりも強くストラスに抱きついた。ストラスは困り果て、苺の頭を優しく撫でた。苺は名残惜しそうな顔をし、上目遣いでストラスを見つめた。
「ストラス様は苺と一緒にいるのはお嫌いですか?」
「おいおい、急にどうした? 勿論、私は苺と一緒にいたいさ。片時も離したくない」
「だ、だったら、一緒に住みませんか?」
「そうしたいのは山々だが、下界の住人が無断で住むのはいけないだろう? きちんとした手続きをしなければ、都市の秩序を乱すことになる」
「確かにそうですね。では、どうやったら、住めるか調べてみます」
「私も調べてみる。あまり無理をするな。私の愛する人が無理するのを見たくないからな」
ストラスは苺の体を自分の体から離すと、苺の額に軽くキスをした。苺はキスされた額を押さえ、頬を赤くし、ストラスの服を何度か引っ張った。
「まだ何かあるのか?」
「そうじゃないですけど……、せめて額ではなくて、……く、く、唇に口づけを、して欲しかった、です」
ストラスは恥じらう苺を見て、目を見開いた。そして、優しく笑うと、苺の顎に手を当て、口づけをした。ストラスの口づけに反応するかのように、ストラスの服を掴む苺の手に力が入る。ストラスは耐えきれず、苺を抱き寄せ、苺の唇を塞ぎ、舌を絡ませた。
濃厚な口づけを終え、ストラスが苺に目をやると、すっかりトロンとした顔をし、ぼぉーっとしていた。ストラスは額に手を当て、困り果てた。
「苺がそのような顔をしたら、私も我慢出来なくなるだろう? 私をこれ以上困らせるな」
「だ、だって、軽い口づけだけかと……思ってたから」
苺は自分の唇を指でなぞった。ストラスは頭を掻きむしり、苺を再び強く抱き締めた。
「あぁっ! 苺は本当にどうしようもなく……可愛いな。頼むから、私の心をこれ以上掻き乱すな。ただでは済まされないぞ」
「す、すみません……。で、でも、ストラス様は苺の人生の中で一番魅力的な男性です! 男前ですし、気前よくて――んっ!」
苺がどんどん早口になり、語り始めたため、ストラスは急いで苺の口を手で塞いだ。
「とにかく! 私は帰る。そして、お互いに調べて、来週話し合おう。いいな。……まったく。これではいつまで経っても、私が帰れないではないか。困ったことがあったら、セーレを頼れ。いいな」
ストラスは深いため息をつくと、苺の頭を撫でて、家を後にした。苺は不貞腐れた顔をし、リビングのソファに座った。苺は部屋の中を見渡し、改めて自分一人しかいない事を実感する。静まり返った部屋に掛け時計の秒針の音が響く。
「あれのどこが優しいんだ。あの獣人もよくあんな奴を好きになったもんだ」
「あはははぁ……。――あっ、たぶんここじゃないですか? 二番街の坂の中腹なので。それにしても、大きいですね。二階建てだし、庭までついてますよ!」
「あぁ、立派だな」
漆喰塗の真っ白な外壁に、ウォルナット色の格子やドアが落ち着いた雰囲気を漂わせていた。玄関先にはオリーブの木が植えてあった。二人は玄関へ向かったが、ある問題が起きた。
「そう言えば、家の鍵が無いです。月下お兄様に聞くのを忘れました」
「……ん? 鍵なら持っているじゃないか」
「持ってませんよ。持ってるのは権利書で――って、あれ、鍵だ。いつの間に?」
「権利書が鍵になる仕掛けなのか? 面白いな。とりあえず中へ入ろう」
苺は鍵を開け、ストラスとともに家の中へ入った。家の中はリゾート地のような開放感あふれる造りだった。アンティーク調の家具が備え付けられ、すぐにでも住める状態だった。
「本当にこんな豪華な家に住んでいいんでしょうか?」
「良いんじゃないのか? 私の屋敷に比べれば、広過ぎもせず、快適だろう」
「た、確かにストラス様のお屋敷は少々広過ぎな気がしました。それより、食材を調達しないと……。お金があるとしても、今後の事も考えないと」
「ふっ、なんだか楽しそうだな」
ストラスは苺の様子を見て、思わず笑った。ストラスは持っていた荷物をダイニングテーブルに置いた。
「では、私はこれで失礼するよ」
「えっ! ストラス様、帰られるんですか!」
「ん? いや、ここは苺の家だし、私の屋敷にはオルトロスがいる。食事を与えないと、屋敷と庭園が荒らされる。では、また来週来る」
ストラスはそう言うと、玄関へ向かい、ドアノブに手を掛けた。その時、苺が駆け寄り、ストラスに抱きついた。
「なんだ、苺。急に抱きついてきて。また来週来ると言ったではないか」
「そうですけど、……そうですけど」
苺は先程よりも強くストラスに抱きついた。ストラスは困り果て、苺の頭を優しく撫でた。苺は名残惜しそうな顔をし、上目遣いでストラスを見つめた。
「ストラス様は苺と一緒にいるのはお嫌いですか?」
「おいおい、急にどうした? 勿論、私は苺と一緒にいたいさ。片時も離したくない」
「だ、だったら、一緒に住みませんか?」
「そうしたいのは山々だが、下界の住人が無断で住むのはいけないだろう? きちんとした手続きをしなければ、都市の秩序を乱すことになる」
「確かにそうですね。では、どうやったら、住めるか調べてみます」
「私も調べてみる。あまり無理をするな。私の愛する人が無理するのを見たくないからな」
ストラスは苺の体を自分の体から離すと、苺の額に軽くキスをした。苺はキスされた額を押さえ、頬を赤くし、ストラスの服を何度か引っ張った。
「まだ何かあるのか?」
「そうじゃないですけど……、せめて額ではなくて、……く、く、唇に口づけを、して欲しかった、です」
ストラスは恥じらう苺を見て、目を見開いた。そして、優しく笑うと、苺の顎に手を当て、口づけをした。ストラスの口づけに反応するかのように、ストラスの服を掴む苺の手に力が入る。ストラスは耐えきれず、苺を抱き寄せ、苺の唇を塞ぎ、舌を絡ませた。
濃厚な口づけを終え、ストラスが苺に目をやると、すっかりトロンとした顔をし、ぼぉーっとしていた。ストラスは額に手を当て、困り果てた。
「苺がそのような顔をしたら、私も我慢出来なくなるだろう? 私をこれ以上困らせるな」
「だ、だって、軽い口づけだけかと……思ってたから」
苺は自分の唇を指でなぞった。ストラスは頭を掻きむしり、苺を再び強く抱き締めた。
「あぁっ! 苺は本当にどうしようもなく……可愛いな。頼むから、私の心をこれ以上掻き乱すな。ただでは済まされないぞ」
「す、すみません……。で、でも、ストラス様は苺の人生の中で一番魅力的な男性です! 男前ですし、気前よくて――んっ!」
苺がどんどん早口になり、語り始めたため、ストラスは急いで苺の口を手で塞いだ。
「とにかく! 私は帰る。そして、お互いに調べて、来週話し合おう。いいな。……まったく。これではいつまで経っても、私が帰れないではないか。困ったことがあったら、セーレを頼れ。いいな」
ストラスは深いため息をつくと、苺の頭を撫でて、家を後にした。苺は不貞腐れた顔をし、リビングのソファに座った。苺は部屋の中を見渡し、改めて自分一人しかいない事を実感する。静まり返った部屋に掛け時計の秒針の音が響く。
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