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第8章:(苺視点)
8-6:二人の新居
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「苺、愛している。私の生涯の伴侶として、共に人生を歩んでくれないか?」
ストラスは小さな箱を開け、苺に見せた。そこには、希少石と言われるブラッドストロベリームーンの指輪が輝いていた。苺はストラスの申し出に言葉を失った。
「ほ、本当に……苺でよろしいんですか? 苺以外にも――」
「私は苺が、お前がいいんだ。お前しかいない」
「ど、どうしよう。このゾワゾワする感じ、なんだろう。あぁっ、……涙が勝手に出てきちゃうよぉ。グスッ…………。はい、お受け致します。苺は……ストラス様に、生涯を捧げます」
「――ありがとう」
ストラスは指輪を苺の左薬指にはめた。苺は光り輝く指輪を見ると、ストラスに抱きついて、声を上げて、泣いた。子供のように泣きじゃくる苺の頭をストラスは優しく何度も撫でた。
「落ち着いたか?」
「……はい。取り乱しました。すみません」
「謝ることない。それで早速なんだが、私の荷物を家に運んでもいいか?」
「はい、構いませんが……。でも、荷馬車でいらっしゃっていないですよね? 今からまたお戻りになられるんですか?」
「ははっ、私はこれでも魔族の上位だぞ? こうすれば済むことだ」
ストラスは鼻で笑うと、指を鳴らした。そうすると、ブラックホールのような時空の歪みが生じ、そこから大量の本が鳥のようにパタパタと飛んで出てきて、独りでに本棚に収まっていった。
「ス、ストラス様! ま、魔術はここでは禁じられていますよ! 今すぐ止めてください! バレたら大変な事になりますからぁ!」
「それは問題無い。魔術禁止なのは知っている。だが、私は例外だ。証書をよく見てみろ」
家が本の鳥の大群でひしめき合う中、苺はテーブルの上に置かれた証書を手に取り、目で文字を追いながら、読んだ。確かに、文面に『魔術は許可する』と書かれていた。
苺は他に見落としがないかを細かく確認した。よく見てみると、証書は紙切れ一枚だが、読み終わると、文字が消え、また別の文字が浮かび上がり、ページ番号も増えた。
「あの、これって魔術文書ですよね? 一体、何ページあるんですか?」
「そうだな……。一四〇ページ以上はあったと思うが」
「えっ! そんなにあるんですか! 読むだけで日が暮れてしまいます……。後でじっくり読むので、要点だけでも教えてください」
ストラスは顎に手を当て、考え込んだ。二人の会話中も本がうるさく羽ばたいており、苺は若干苛立ちを覚えた。苺が部屋を見渡すと、本が本棚に入りきらず、床にどんどん山積みになっていた。
「ストラス様、ちょっといいですか! 本はあとどの位、本があるんでしょうか?」
「――ん? 本か? そうだな、あと三百冊位か?」
「そんなに!? 今でも物凄い量なんですから、家に収まりきる冊数にしてください。重みで床が抜けちゃいます」
「そうか。それは困ったな。私の屋敷は譲渡するからな。……仕方ない。メフィストの屋敷か旧魔王城の宝物庫にでも保管しよう」
ストラスは再び指を鳴らすと、本がブラックホールへ吸われるかのようにバサバサと音を立て、時空の歪みに消えていった。
「今度、通行証を発行して貰わないといけないな。名目は下界視察にするか、魔界の環境保全にするか……」
「ちょっと待ってください! 先程、屋敷を譲渡すると仰っていませんでしたか? あのお屋敷を譲渡ですか?」
「あぁ、それも永住権の要件の一つだからな。譲渡と言っても、屋敷の一つ位無くなったところで、私は苺とここで暮らすのだから、困りはしないだろう?」
ストラスは小さな箱を開け、苺に見せた。そこには、希少石と言われるブラッドストロベリームーンの指輪が輝いていた。苺はストラスの申し出に言葉を失った。
「ほ、本当に……苺でよろしいんですか? 苺以外にも――」
「私は苺が、お前がいいんだ。お前しかいない」
「ど、どうしよう。このゾワゾワする感じ、なんだろう。あぁっ、……涙が勝手に出てきちゃうよぉ。グスッ…………。はい、お受け致します。苺は……ストラス様に、生涯を捧げます」
「――ありがとう」
ストラスは指輪を苺の左薬指にはめた。苺は光り輝く指輪を見ると、ストラスに抱きついて、声を上げて、泣いた。子供のように泣きじゃくる苺の頭をストラスは優しく何度も撫でた。
「落ち着いたか?」
「……はい。取り乱しました。すみません」
「謝ることない。それで早速なんだが、私の荷物を家に運んでもいいか?」
「はい、構いませんが……。でも、荷馬車でいらっしゃっていないですよね? 今からまたお戻りになられるんですか?」
「ははっ、私はこれでも魔族の上位だぞ? こうすれば済むことだ」
ストラスは鼻で笑うと、指を鳴らした。そうすると、ブラックホールのような時空の歪みが生じ、そこから大量の本が鳥のようにパタパタと飛んで出てきて、独りでに本棚に収まっていった。
「ス、ストラス様! ま、魔術はここでは禁じられていますよ! 今すぐ止めてください! バレたら大変な事になりますからぁ!」
「それは問題無い。魔術禁止なのは知っている。だが、私は例外だ。証書をよく見てみろ」
家が本の鳥の大群でひしめき合う中、苺はテーブルの上に置かれた証書を手に取り、目で文字を追いながら、読んだ。確かに、文面に『魔術は許可する』と書かれていた。
苺は他に見落としがないかを細かく確認した。よく見てみると、証書は紙切れ一枚だが、読み終わると、文字が消え、また別の文字が浮かび上がり、ページ番号も増えた。
「あの、これって魔術文書ですよね? 一体、何ページあるんですか?」
「そうだな……。一四〇ページ以上はあったと思うが」
「えっ! そんなにあるんですか! 読むだけで日が暮れてしまいます……。後でじっくり読むので、要点だけでも教えてください」
ストラスは顎に手を当て、考え込んだ。二人の会話中も本がうるさく羽ばたいており、苺は若干苛立ちを覚えた。苺が部屋を見渡すと、本が本棚に入りきらず、床にどんどん山積みになっていた。
「ストラス様、ちょっといいですか! 本はあとどの位、本があるんでしょうか?」
「――ん? 本か? そうだな、あと三百冊位か?」
「そんなに!? 今でも物凄い量なんですから、家に収まりきる冊数にしてください。重みで床が抜けちゃいます」
「そうか。それは困ったな。私の屋敷は譲渡するからな。……仕方ない。メフィストの屋敷か旧魔王城の宝物庫にでも保管しよう」
ストラスは再び指を鳴らすと、本がブラックホールへ吸われるかのようにバサバサと音を立て、時空の歪みに消えていった。
「今度、通行証を発行して貰わないといけないな。名目は下界視察にするか、魔界の環境保全にするか……」
「ちょっと待ってください! 先程、屋敷を譲渡すると仰っていませんでしたか? あのお屋敷を譲渡ですか?」
「あぁ、それも永住権の要件の一つだからな。譲渡と言っても、屋敷の一つ位無くなったところで、私は苺とここで暮らすのだから、困りはしないだろう?」
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