未来アンドロイドが俺の所へ送られて来た理由

SAKAHAKU

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第二話(三姉妹のアンドロイド)

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いつも通りの平日の朝。俺の部屋にある卓袱台を囲むように座っていたのは俺と深紅たんと後もう一人、姉のアンドロイド、四季内来夢。
今日は彼女が実の妹に大事な用事があって此処に来たらしい。
一体何の話なのかと二人の会話に耳を澄ましていたら、そこで話されていたのは衝撃的な内容だった。
「深紅、驚いたり、ビックリしちゃ駄目よ。これはこの時代からちょうど十年先の話何だけどぉ」
「わかった。驚かない。ビックリもしない」
「これ、マスターには絶対に言わないでね」
「絶対に言わない」
「実は……」
「実は?」
「マスター等々幼女に手を出して警察のお世話になっちゃったらしいのよ。シュナから聞いた話だから間違いないわ。もう、やーね」
「おい、聞こえてるからな」
「わーお。主ろりこん。そういうのは深紅だけで我慢しろ。主がもっと幼い体を所望するならこの体に更なるろり要素を追加する」
……馬鹿な、その体に更なるろり要素だと!?
深紅たんのほぼほぼ無い胸や身長がもっと小さくなると言うのか。
それじゃ完全に本物の幼女になっちまうよ。
……つうか、本当に捕まるのか、俺。
「駄目よ、深紅。貴女の体はあたしの物なの。若にはまだちょっと刺激が強過ぎるわ」
「強過ぎねぇよ。ちょうど良いくらいだ」
「まだあるのよ」
おい、俺のことは無視かよ。
「まだ?」
「ええ。名付けてパターンBよ。さっきのはパターンAね。どうやら銀行強盗で逮捕何てパターンもあるらしいのよ。勉強を全くしてこなかったものだから何処にも職に就けなかったみたいね。哀れだわ。お金欲しさについやっちゃったって感じよ」
「おお。主に更なる犯罪歴が」
「おいおい、ちょっと待てって。それ全部俺にこの先の未来で起こることなのか?絶対か?防ぐ方法は何か無いのか?」
「質問の多い男ねぇ。まあ良いわ。ついでに教えておいてあげる」
相変わらず、愛想の悪いアンドロイドさんだ。同じ人間(未来の俺)が作ったとは思えない程に深紅たんと態度が違い過ぎるのだが。
この 微妙なツンデレ。いや、コイツにデレなど存在するのかどうかはわからんが、これも未来の俺の趣味の一つだったのかな。
「耳の穴かっぽじってよーく聞きなさいよ。これから若が勉強しないで未来に進んだ場合に歩むことになる人生は現時点で三つに分岐しているわ」
来夢の話した俺が勉強をせずに未来へ時を進めた場合歩むかもしれない三つの人生はこうだった。
A、幼女に手を出し逮捕。
B、銀行強盗で逮捕。
C、人殺しで逮捕。
「見事に全部逮捕されてんじゃねぇか」
「主、人殺しはあまりお勧めしない」
「俺が誰を殺すって言うんだ?」
「これは殺したくて犯した罪じゃなさそうね。シュナのくれた情報通りだと、奥様を守る為に仕方なく。だそうよ」
「おー。主かっこいい」
「え、そう?」
「え~、何処が?こんなのが深紅の好みなの?世の中こんなのより顔の良い男何て腐る程いるわよ。深紅ならもっと上を目指せるわ。ま、深紅のことは誰にも渡す気ゼロだけど」
うるせー。こんなのを連呼すんな。
俺のピュアで傷付きやすいナイーブな心がショックで立ち直れなくなったらどうしてくれる。
こんなムシャクシャした時は深紅たんの「かっこいい」という俺に対して初めて出たであろう褒め言葉を思い出して心の中で連呼しよう。
つうか、世の中のイケメン共全員死ね。
この世界に存在する男が自分一人になればいいと全ての男達が思っていることだろうぜ。
そうなれば全ての女(若い子限定)はソイツの物だからな。
……それよりも、
「さっきからちょいちょい会話の中で飛び出してるその、シュナってのは誰だ?」
「あれ、言ってなかったっけ?シュナは深紅と同じであたしの妹よ。実は三姉妹なの」
「聞いてねぇよ。初耳だ。ええと……来夢が長女で、そのシュナって子は?」
「次女よ。これは言わなくてもわかるだろうけど深紅は三女の末っ子ね」
深紅たん、三女だったんだ。
てっきり俺の一番のお気に入りっぽいから、最初に作ったアンドロイドは深紅たんだと思っていたんだけどな。どうやら違ったみたいだ。
「シュナ姉もこの時代に来てる?」
「来てるわよ。深紅のピンチを未来予知であたしに教えてくれたのはあの子なのよ。感謝しなさいね」
「了解した」
「何でその子が助けに来なかったんだよ」
「メイドカフェとかいうとこのヘルプが忙しくてどうしても抜けられなかったみたい。ま、一番戦闘に特化したアンドロイドがあたしだからってのもあるんだろうけど、最大の理由は敵があたしの姿をしていたからね。お姉様と闘うみたいで嫌って言ってたわ」
姉と闘うのは嫌か。
つうか、メイドカフェって言ったら此処ら辺じゃ一箇所しか無いんだけどな。
もしかして日向のバイト先と同じ所か。
「とにかく、若。貴方がさっき話した三つの最悪な人生を歩まない為に取る手段は勉強あるのみよ。サボってないで天才目指してガリ勉になりなさい。解った?」
「ああ、そのことならもう心配ないぞ」
「どういうことよ。詳しくあたしに説明して」
「昨日深紅たんと約束したんだ。お風呂で」
「はあ!?お風呂!?」
「ああいや、違う。今のは忘れてくれ。とりあえず約束した訳よ。深紅たんが消えちまうなら俺は嫌だから勉強を始めると。死刑までは二十年以上あるし、それまでに対策はいくらでも取れるだろって」
「……そ、そう。それは良い心掛けね」
あっぶね~。昨日深紅たんと風呂でいちゃいちゃしてたこと危うく自分からバラしちまうところだったぜ。

(……ああ。深紅たんがいないと何かつまんねぇな)
授業中に空席となっている隣の席を見てそう思った。
深紅たんは今日お家でお留守番。というか、自宅療養だ。
この前の戦闘で激しく傷付いたあの子を見て、今日は学校に一緒に来るべきじゃない。
俺がそう考えた結果なのだが……やっぱ隣に座っていて欲しかったな。
(おっと、こうしている場合じゃねぇな)
教師が消しちまう前にさっさと黒板に書かれた文字をノートに書き写さないと。
俺は深紅たんに誓ったんだ。絶対に天才になるんだって。
この行為が天才になる為の第一歩になると信じて、これからは真面目に授業を受けて行こう。
「掴。ねぇ掴」
「……ん?ああ、ひなっちか。どした?」
久しぶりに授業を六時間みっちりと真面目に受けていたせいか、俺は最後の授業が終わるなり机に頭をつけて眠ってしまっていたようだ。もう教室には誰もいない。いつの間にか帰りのHRさえ終了していたとは全く気が付かなかったな。
「もう放課後だよ。ひな今日バイトあるんだ。早く帰ろう」
「先に帰っていてくれ。眠くてすぐに動けそうにないんだ。もう少し此処で眠っていく」
「え、う、うん。わかった。それじゃまた後でね」
日向が教室を出て行った後すぐ、もう一度夢の世界へ向かう為眠たい目を閉じた。
俺が十分に睡眠を取って目覚めたのはそれから二時間後くらいの十九時で夕日に照らされていた教室はすっかりと真っ暗で電気さえ点いておらず、もう誰も残っていないのか、シーンとしていて少し怖くなった。
学校には怪談話が付き物だからな。トイレの花子さんや人間のように動く人体模型に遭遇しないうちに早く下校しよう。
「主、遅い。深紅夜ご飯食べないでずっと待ってた」
深紅たんが態々玄関まで出迎えてくれるとは思いもしていなかった訳で、滅茶苦茶嬉しがっている俺の口から出た最初の言葉は「ただいま」ではなく、
「深紅たん好き!」
いつもお決まりの褒め言葉だった。
「知ってる」
「深紅たん大好き!」
「それも知ってる。深紅のことを大切に思っているのならもっと早く帰って来るべきでは?」
深紅たんは遅いと言うが、まだ十九時半くらいでそこまで言う程の時間ではないような。
見たところ中に来夢の奴はいないっぽいから、日向の家にでも帰ったのかな。
アイツは俺と住みたくないみたいだからな。
不潔とか、嫌いとか。飛び出してくるのはそんな言葉ばかりだ。
終いには「深紅に手を出したら若でも殺すから」だそうで。
俺って一応、君のこと作り出した生みの親みたいなもん何だよね?
なぜそんなに嫌われているのかは皆目見当がつかないが、正直俺には深紅たんさえ一緒にいてくれたら他はどうでも良かった。
「来夢はいつ帰ったの?」
「来夢姉は三十分前に此処を出た。主はこんな長い時間深紅を一人で放置した。酷い」
三十分はそんなに長くないだろうと突っ込もうとしたが、やめておいた。
俺はあることに気付いてしまったのだ。この無敵で無表情なアンドロイドさんにも「怖い物」が存在するということに。
こりゃからかい甲斐がありそうだな。
「深紅たんさ。もしかして、おばけとか信じてる?」
「し、信じて……ない……」
「ふ~ん。そっか。……あ!深紅たんの後ろに誰か立ってる!」
「ひ……」
いつも冷静沈着な深紅たんが、微かな、小さな悲鳴をあげた。
こりゃビンゴですな。お化け屋敷とかに連れて行ったらもっと可愛い反応が見れそう。後で一緒に行ってみよう。
「はは。嘘だよ、嘘」
「主、その冗談は笑えない」
「おばけが苦手とか可愛いなぁ、深紅たんは」
「決めつけるのは良くない」
「でも、そう何でしょ?」
「うう……」
実は薄々は気付いていたのかもしれない。
深紅たんが毎日一緒に眠ってくれているのは、実は一人で眠るのが怖いから何じゃないだろうか。
この前TVでやってたホラー映画見てたらチャンネル変えられたしな。
「違う」
「深紅たん、ご飯食べながらホラー映画見ても良い?」
「……主の意地悪」
ぷいっと俺から視線をそらして背を向ける。すっかりご機嫌を損ねてしまった深紅たん。
ちょいとからかい過ぎたか?
「深紅たんごめん。ちょっとした冗談さ。ホラー映画何か見ないって。ご飯の時には深紅たんの好きなお笑い番組のDVDでも見ようぜ」
「…………」
「深紅たん?」
……無言だ。
まずい。深紅たんが本気でお怒りだ。こうなったら土下座しても許してもらえないかも。
「ごめん深紅たん!俺何でも言うこと聞くから許して下さい!お願いします!」
「……」
「……深紅、さん?」
ずっと俺に背を向けて黙ったままの深紅たんの顔を隣に移動して覗いて見る。
……正直驚いた。何って?
初めて見ちまったんだ。深紅たんの泣き顔を。
おばけが苦手だって知られたことが泣く程嫌だったのか?
「主、深紅のこと全然わかってない」
「そんなに怒らせちゃう何て思わなかったんだ……ごめんね。もうからかったりしないからさ、泣き止んで欲しいな。俺、深紅たんの泣いてるところ見たくないよ」
「……違う」
「えっと……何が、違うの?」
無口な美少女キャラは大好きだが、こういう時は口数が少なくてちょっと反応に困るかも。
とにかく、今は何が「違う」のか早く深紅たんの口から聞きたい。
「深紅が泣いたの、怒ったからじゃない」
これは後に俺の部屋で深紅たんから聞いた話なのだが、未来の俺の死刑が決行されたことを来夢に知らされたようで、彼とのたくさんの楽しかった記憶を思い出していたら自然と涙が零れていたそうだ。
もしかして過去の生きている主(俺)の姿を見て、嬉し涙でも流してくれたのかな。
「深紅たん、こっちにおいで」
いつまでも涙を拭おうとしない深紅たんを呼んで自分の膝の上に座らせる。
持ってきたハンカチで代わりに流しっぱなしの涙を拭いてあげようと考えての行動だ。
最初に言っておくが決して疚しい気持ちがあった訳では無い。
しかし、わかっていたこととはいえあまり聞きたくなかったな。
四十一歳というまだまだ若い歳で命を落とすとか、俺からしたら寿命を宣告されたも同じだからな。
「深紅たんに悲しんで貰えて未来の俺は嬉しがってると思うよ。ほら、俺のこと心配してくれるの何て日向と深紅たんくらいのもんじゃん。友達何て呼べる親しい奴は他にいないしさ」
「…………」
「俺、深紅たんが一緒に暮らしてくれるようになって嬉しかったんだよ。今まで会話するのは日向だけだったから。何だか友達が増えたみたいでさ」
「…………」
「深紅、たん?」
また黙っちゃった。俺何か可笑しなこと言っちゃったかな。
そう考えた少し後、
「友達じゃない。家族」
深紅たんなりにちゃんと返す言葉を考えてくれていたみたいで一安心した。
うん。家族か。良い響きだな。
そう言われれば、日向も深紅たんも未来では二人共俺の家族だったか。
「……主」
「何?」
「主にはやはり勉強はしない方向で未来に進んで行って欲しい。元々深紅が此処に来た理由は主が死んでしまう未来を変える為」
「え、じゃあ……昨日の約束は?」
「破棄する。主が死刑になることは予め知っていたこととはいえ受けたショックがあまりにも大きかった」
そうは言うが、それだと深紅たんがまた命を狙われることになるんだよな。
俺の進む未来はどうしようにも二択しか無くて、そのどっちを選んでもハッピーエンドな結末にはならないんだよな、悲しいことに。
未来の俺が死んで深紅たんが涙を流してくれたように、俺だって深紅たんが死にでもしたらきっと大泣きして、何日も泣き止まないことだろう。そのまま淋しくなって自殺する何てことも容易に想像出来る。
「深紅たんがまたアンドロイドに命を狙われるのは嫌何だが」
「平気。あの日深紅が苦戦したのは敵アンドロイドが来夢姉に化けていたから。次は負けない」
「そうは言ってもな」
「主!」
俺を見つめる深紅たんは真剣で、せっかく泣き止んだばかりだというのに、OKしないとまた泣くぞと言わんばかりの表情で、俺を大いに困らせる結果となった。
「……で、でも、な」
「うう……」
くっ、泣き出しそうな深紅たんめっちゃ可愛い。
「わ、わかった。深紅たんの言う通りにします」
「主、わかってくれて嬉しい」
深紅たんの嬉しそうな顔を見れてほっとしたが、そんなことを姉の来夢が果たしてOKするだろうか。
……いや、絶対に許さないだろうな。アイツが妹LOVEな姉だということはすでに解っているんだ。深紅たんが危険に晒されることを簡単に了承する筈がない。
「来夢をどう説得するつもりだ?アイツは絶対深紅たんの意見に反対すると思うぞ」
「大丈夫。来夢姉には知られないようにする。任せて」
深紅たんの持つ特殊な能力は一体幾つ存在するのか今だ不明のままだが、任せてと言えるこの子の自信に俺は身を任せてみることにした。

「主、メダル無くなった。もっと」
「はいはい。ちょっと待ってな」
俺と深紅たんが学校をサボってやって来たのはエンターテインメント空間。
ボウリングやスポーツ。カラオケやメダルゲームまで楽しめる最大級の遊び場だ。
どうやら深紅たんはメダルゲームにハマッてしまったようで、最初に渡したメダル三百枚を一時間で使い果たしていた。
そんな可愛らしい要望に応え、俺は新たに千円を使いメダル三百枚を購入する。そして、
「どうぞ、僕のお姫様」
そう言って箱に入れた大量のメダルを差し出した。
「主、皆が見てる。恥ずい」
周りには俺達と同じように授業をボイコットした高校生が屯していたようで、平日だというのに店の中は賑やかだった。
「うわー。すげぇ深紅たん。景品取りすぎだろ」
メダル三枚を投入するとプレイ出来るクレーンゲームにも驚きだが、その景品であるぬいぐるみやらお菓子をすでに十袋ぶんもゲットしている深紅たんにはもっと驚かされたね。
ゲーム機の中の景品がすっからかんだ。俺はクレーンゲームで景品何て取ったこと一度も無いぞ。
「コツがあるなら教えて欲しいな」
「無い。ルールの通りにアームを動かしているだけ」
「普通の人は多分こんなに取れないぞ」
これだけの量をどう持って帰るつもりだろう。俺も持たされるのだろうな。
「主もやる?」
「いや、俺はクレーンゲーム苦手だからな。他のゲームをするよ。深紅たん、俺と勝負してみないか?」
「勝負?」
それから俺達は様々なゲームを楽しんだ。
格ゲーで勝負して深紅たんに負けて、レーシングゲームで圧勝され、リズムゲームも見事に敗北した。シメで始めたシューティングゲームでもその差は歴然で、俺はゾンビに速攻で殺されたというのに深紅たんは一人で難関と呼ばれていたそのゲームをオールクリアした。何で勝負しても勝てる気がしねぇ。どんなことをやらせてもこの子は完璧に使いこなしてしまうんだよなぁ。アイスホッケーみたいな子供でも簡単に出来るゲームでも負けるし、もう最悪だ。
「主、もう終わり?」
「ああ。深紅たんには一生敵わないということを思い知らされた時間だったぜ。次は何して遊ぶ?ボウリングか?カラオケか?」
「ボーリング」
そうして始まったボウリング対決。始まる前から結果はわかっていたが、俺は最後まで諦めてはいなかった。
此処は何ゲームしようが値段は変わらない。
飽きるまでボウリングが楽しみ放題だ。
つまり、俺にも回数を重ねれば十分に深紅たんへ勝つチャンスはある筈。
……と、途中までは思っていたのだが、そもそも永遠にストライクばかり叩き出すチートのような投げ方をされては勝てる勝負も勝てん。ガターに二回落とした時点でもう諦めたね。この世にこの子に勝てる人間何か存在しねぇよ。どんなスポーツをやらせてもプロの選手だって敵じゃないだろうぜ。
周りにいる客も驚いてるよ。あの子何者だって顔でこっちを見てる。ヘタクソな俺が目立って恥ずかしいじゃねぇか。
「主、へたくそ」
「深紅たんよ。一般の人間のレベルはこんなもんだ。過度な期待はするもんじゃないぜ」
人間が万能なアンドロイドに勝てる訳がない。
深紅たんにスポーツ選手でもやらせたら莫大な金が入ってきそうだな。
けれども俺のそんな野望は叶わないだろう。このアンドロイドちゃんは嫌なことは素直に嫌と言える嘘のつけない子だ。きっとこんな欲にまみれた誘いは断るに違いない。
「主、ボーリング飽きた。他のとこ行きたい」
「ボーリングじゃなくてボウリングな。可愛い奴め」
「どっちでも一緒。早く行こ」
人目を気にすることなく、俺の手を握って連れて行こうとする深紅たんの強引さにマジで萌死にしそうだ。こんな積極的な無表情少女はアニメでも見たことねぇ。
「深紅たん、次はもしかしてカラオケか?俺の為に歌ってくれるのか?」
「主、サッカーやろ」
「え、サッカー?別に良いけど……」
「けど?」
深紅たんは制服だし、そんなんでボール蹴ったら大変なことになるぞ。
「ぱんつ見えるかもだぞ。それでも良いのか?」
「良い。主にはいつも見られてる。というか覗かれてる」
深紅たんがパジャマから制服へ着替えるシーンを覗いていたことはモロバレしていたか。
気付かれていないと思っていたが、こりゃもう流石としか言いようがない。気付いていたのなら隠せば良いのでは?
「良いぜ。深紅たんがどうしてもやりたいと言うのなら俺も付き合おう」
次にやって来たのはスポーツ専門のグラウンド。
そこはサッカー、テニス、野球、バスケットにバトミントンと、他にもいろいろなスポーツで楽しめる場所なのだが、その中の一つバスケットのコートを一組の団体が占領しているようで順番待ちをしている家族連れが何組か列を作っている。
他に使いたい人だっているだろうにな。小さい子供がバスケットボールを持って遊びたそうにお前等を見ていることに気付いていない訳ではないのだろう。
まあ、あんな連中に関わるとろくなことにはならない。あそこのコートにはなるべく近寄らないようにしておこう。深紅たんのやりたかったサッカーのコートは空いているみたいだし良かった、良かった。
「深紅たん、ボール持って来たぞ」
「…………」
「深紅、たん?」
深紅たんは学生と思われるバスケットコートを占領している連中が気になっているようで、俺の声に反応してくれない。
バスケットをやりたそうにしていた子供の親が彼等に順番を代わって貰えるよう交渉に行ったみたいだが、
「君達はいつまでこの場所を占領し続けるつもり何だ?もうとっくに交代の時間は過ぎているぞ」
「てめぇ、俺達に何か文句でもあんのか?満足するまで此処を退く気はねぇ。他のスポーツで遊んでな」
見事に撃沈したようだ。
ううむ。あのままでは折角遊びに連れて来て貰った子供達が可哀想だな。
かと言って、俺にはどうすることも出来んが。
「退かないと言うのなら店員を呼んで対応して貰うことになるが?」
「ああ?そんなことしやがったらどうなるかわかってんだろうな?」
学生と思われる体格の良い男が子供の父親の胸倉を掴んで脅しにかかる。
このままでは警察沙汰になりそうだ。周りがざわつき始めたそんな時、
「……あれ、深紅たん?何処に行くんだ?」
深紅たんがバスケットコートの方へとゆっくり歩き始めたのだった。
慌てて腕を掴んだね。
「コートを皆に交代するよう伝えてくる」
「やめとけ。見ただろ。大人が対応してもあの様だ。深紅たんが行ったって同じだよ」
「主、子供達が可哀想」
「そりゃ俺だってそう思うけど……あっ!」
深紅たんの奴、俺が中々腕を放さないからってテレポーテーションすることないだろ。
もう俺にはどうすることも出来ねぇ。
このまま知らない振りをしてやろうかと迷ったが、やっぱそんなことはしたくない。
無敵のアンドロイドとはいえ見た目は普通の可愛い女の子何だからな。俺が守ってやらなきゃと思うのは当然のことだ。向こうは六人。数的に喧嘩には勝てる気がしない。
こりゃ、ぼこぼこにされる覚悟を持って向かう勇気が必要だな。
「皆に交代してあげて欲しい。順番はちゃんと守るべき」
「あん?何だこの小学生は?どうして高校の制服何か着てんだ?」
ああ。とうとう声掛けちまった。
身長も低く胸も無い深紅たんがそう思われるのは仕方が無い気がするが、そもそもアンドロイドに年齢など存在するのだろうか。
「ガキが生意気に歳上に指図するんじゃねぇよ」
「どうすれば退いてくれる?」
「そうだな。ガキの体には興味なんざねぇが、この場で全裸になって見せな。それが出来たら退いてやるよ」
「わかった」
「ああ?」
わかったじゃねぇ!何そんなこと簡単にOKしてんだ!深紅たん、お前の裸何かご主人様の俺だってほとんど見たことねぇんだぞ!
当然、制服のボタンに指が触れたところで止めに入ったね。
もうぼこぼこにされるとか、そんな些細なことを心配している暇はねぇ。この子なら、言われた通りにすることは目に見えてる。
「脱ぐな、深紅たん。こいつ等の相手は俺に任せろ」
「ああ、何だてめぇ」
「主、平気。この人達深紅の裸見たらこの場所皆に譲ってくれるって」
「全然平気じゃねぇ。俺は深紅たんの恥ずかしさの基準が解らん。なぁアンタ等、俺達とバスケで勝負しないか」
「はは。馬鹿か、お前。俺達と勝負だって?勝てると思ってんのか?その小学生とタッグを組むつもり何だろ?」
「ああ、そうだ。俺達が勝ったら此処を退いてくれ」
「ふ。おもしれーじゃねぇの。どうせ勝てねぇだろうし相手してやるよ。ただし、お前等が負けたら俺達は此処を退かないし、そのガキには全裸になって貰う。それで良いな」
「深紅たん、大丈夫だよな」
「わかった」
交代でゴールにシュートを打って先に外した方を敗者にすると相手が勝手にルールを決めたようだ。人数はお互い一人ずつだということなので、俺は当然のことながら深紅たんをシューターに推薦した。
「ひゃはははは。お前正気かよ。そんなちびっ子にやらせるつもりか?俺は高校三年間バスケやってたんだぜ?こりゃ良いや。すぐに勝負がつきそうでよ」
「アンタもすぐに思い知ることになるさ。深紅たんがどれだけすごいのか」
「へへ。そうかよ。さあ、早く打ちな。お嬢ちゃんが先行だぜ」
「深紅たん、とりあえずあのゴールにボールを入れさえすれば良いから」
「平気。了解した」
「おい、ちょっと待て。その位置から飛ばすつもりか?嬢ちゃんじゃそんな所からゴールに入れられねぇよ。自殺行為だ」


























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