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第十話(無尽蔵の菜園)
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いくら収穫しようが次から次へと野菜が生成される夢のような畑がオーガニックの近辺にある。
そこへ一日の始まりに野菜を採りに行くのが、俺とタルトの日課だったりするのだが、ここのところタルトに任せっきりにしててしばらく足を運んでなかったな。
ここで採れた野菜は自分等で食べるのはもちろん、お客に提供する料理にも使用している。
野菜食べ放題のため、うちで作った野菜炒めは基本無料の設定だ。
「今日も大漁ですね。キャベツにナスにピーマン、カボチャに白菜も」
「おっ、トマトがこんなにいっぱい。最高じゃねぇか」
「うえ……最悪です」
「何が「うえ……」だ。こんなにも美味い食いもんにケチつけよってからに。こりゃ朝飯は是が非でもトマト尽くしにするしかねぇな」
トマトたっぷりのカプレーゼとか食わせよう。
作ったところでチーズだけ食べてトマトは残しそうだが。
「嫌がらせです。お兄ちゃんは妹を平然といじめて喜ぶサディストだったんですね。心から軽蔑します」
「しっかし……なんでこうトマトばっかり長年放置された雑草みたいに場所取ってんだろうな。まるで何日も前からこいつ等だけ収穫されなかったみたいな……」
「ほう。それはそれは不思議ですね……学校の怪談ならぬ畑の怪談でしょうか。なんだか寒気がします。野菜も軒並み収穫しましたし、風邪を引かないうちに戻りましょう」
「さてはおまえ、トマトが嫌いだからって故意に収穫を見送ってやがったな」
「な、なんのことだか私にはわかりかねます。収穫を妹に押し付けて惰眠をむさぼっているお兄ちゃんに正当なことを主張する資格はないと思いますが」
ま、言われてみりゃもっともな話だ。
これ以上詮索するのは野暮ってやつだろう。
こいつに任せっきりにしてた俺も悪いしな。
幸運にもここで生成された野菜は達は収穫しない限りは腐らない仕様になっている。いくらタルトが長年にかけてほったらかしにしようが無傷のまま。焦って消費する必要はない。
「これ使ってトマトジュースでも作るかな。タルトも飲むよな」
「それ本気で言ってるんですか?私のお兄ちゃんの癖に妹の嫌いな食べ物も把握してないんですね。色々と終わってます」
無論、わかっていてわざと言ってるんだけどな。
「トマトってのは健康にいい食べ物なんだが?」
「鬼ヶ島にいる時点で健康ってなに?美味しいの?って感じなので結構です」
そう。こいつは俺の妹だというのに、兄貴ととことん食い物の好みが違っている。それに意外と好き嫌いが多い。
トマトが苦手だから俺が日課のように飲み下すトマトジュースを滅法嫌うし、辛いものが食べられないからカレーは甘口しか食べようとしない。
辛さ最強のグリーンカレーとか食いたい時は、わざわざ二種類のカレーを用意しなければならないのだから面倒だ。
「さて、野菜たんまり持って帰ってきちまったからなぁ。今日の日替わりメニューは野菜カレーにでもするか。鬼子が絶対野菜炒め作り出すだろうから、あれに耐性ないお客のためにも別の物を用意しといてやらんとかわいそうだしな」
畑からオーガニックへ戻ってきた俺達は、さっそく今日提供する日替わりメニューの準備を始めた。
いくら野菜炒めが無料でも、鬼子が作った野菜炒めでは罰ゲームにしかならないからな。
辛さ最強のグリーンカレーですらあれには及ばない。
「いいですね、野菜カレー。賛成です」
「こらこら、何故トマトをしまおうとする?それ使おうと思って出しといたんだぞ」
……こいつ、冷蔵庫の奥底にトマト隠そうとするぐらいイヤなのか。
どれだけ奥の方にしまおうと、俺が取り出して使ったらなんの意味も無いのにな。
「カレーに必ずしもトマトは必要ないですしいいじゃないですか。私はトマト無しの野菜カレーが食べたいです」
「これから作るのはお客用であって、別におまえに食べさせるカレーを作るんじゃないんだがな。まかないにはトマト入れねぇでおいてやるから安心しろ」
「ほんとうですか?嘘ついたら生きのいい膨らんだハリセンボン飲ませますからね」
「そんなもん飲まされたら俺死んじまうよ!?そもそもあんなもんデカすぎて口に入らんわ!」
ハリセンボンってそっちかよ。
あの歌って「針千本」の方が正しいんじゃなかったか?
どちらにしても、ハリセンボンでも針千本だろうと飲んだら死ぬわな。
「うぅ……まんまと騙されました」
仕事終わりにみんなでまかないのカレーを食していたそんな中、タルトがため息をついてポテトサラダに恨めしそうな視線を送っていた。
理由は言わずもがな。すでにわかっている。
「はあ?なにがだよ」
「してやられたって言ったんです。まさかサラダの方にトマトをのせてくるなんて……」
「ミニトマトの一つくらい我慢して食え」
ラスクみたいなちっちゃな子が好き嫌い一つせず食べてるってのに、なんでタルトにはこうも嫌いなものが多いのか。
「私、サラダは遠慮しておきます。いらないです。カレーだけいただきます」
『それ嫌いなの?食べてあげようか』
「え!ユキミさんが代わりにサラダ食べてくれるんですか?ありがとうございます!」
テレパシーによるユキミの問いかけに、タルトはあからさまに喜んでみせる。
「ユキミ、甘やかすのはよくないぞ。ミニトマトすら碌に食えないんじゃ、こいつはいつまでもトマトが食えないまんまだ。このままだとトマトの美味に気付くこともなく虚しく死んでいくんだろうなぁ。ああ、嘆かわしいったらありゃしない。ま、鬼ヶ島にいる時点で死んでるけどね」
「別にずっと食べられないままでもいいんですけどね。いくら頑張ろうと好きになれる自信とか皆無ですし」
「いや、だめだ。食え食え。おまえが意地でも食わないなら無理矢理にでも食わす。嫌がって泣き出しても食わす!」
「そんな虐待みたいなことしたら鬼子さんに報告して、お兄ちゃんには金棒の餌食になってもらいます。それでもよければどうぞ」
「ぐっ……こいつめ、俺の弱みを悉く理解してやがる……」
ユキミはなぜか席に座らず、宙に浮いたまま食事をしている。
本人が言うにはこの態勢のほうが座るより楽なんだそうだ。
自分のぶんを早々に平らげたユキミは、タルトが躊躇しているポテトサラダにまで手をつけ、実に美味そうにむしゃむしゃと食べ始めた。
そこへ一日の始まりに野菜を採りに行くのが、俺とタルトの日課だったりするのだが、ここのところタルトに任せっきりにしててしばらく足を運んでなかったな。
ここで採れた野菜は自分等で食べるのはもちろん、お客に提供する料理にも使用している。
野菜食べ放題のため、うちで作った野菜炒めは基本無料の設定だ。
「今日も大漁ですね。キャベツにナスにピーマン、カボチャに白菜も」
「おっ、トマトがこんなにいっぱい。最高じゃねぇか」
「うえ……最悪です」
「何が「うえ……」だ。こんなにも美味い食いもんにケチつけよってからに。こりゃ朝飯は是が非でもトマト尽くしにするしかねぇな」
トマトたっぷりのカプレーゼとか食わせよう。
作ったところでチーズだけ食べてトマトは残しそうだが。
「嫌がらせです。お兄ちゃんは妹を平然といじめて喜ぶサディストだったんですね。心から軽蔑します」
「しっかし……なんでこうトマトばっかり長年放置された雑草みたいに場所取ってんだろうな。まるで何日も前からこいつ等だけ収穫されなかったみたいな……」
「ほう。それはそれは不思議ですね……学校の怪談ならぬ畑の怪談でしょうか。なんだか寒気がします。野菜も軒並み収穫しましたし、風邪を引かないうちに戻りましょう」
「さてはおまえ、トマトが嫌いだからって故意に収穫を見送ってやがったな」
「な、なんのことだか私にはわかりかねます。収穫を妹に押し付けて惰眠をむさぼっているお兄ちゃんに正当なことを主張する資格はないと思いますが」
ま、言われてみりゃもっともな話だ。
これ以上詮索するのは野暮ってやつだろう。
こいつに任せっきりにしてた俺も悪いしな。
幸運にもここで生成された野菜は達は収穫しない限りは腐らない仕様になっている。いくらタルトが長年にかけてほったらかしにしようが無傷のまま。焦って消費する必要はない。
「これ使ってトマトジュースでも作るかな。タルトも飲むよな」
「それ本気で言ってるんですか?私のお兄ちゃんの癖に妹の嫌いな食べ物も把握してないんですね。色々と終わってます」
無論、わかっていてわざと言ってるんだけどな。
「トマトってのは健康にいい食べ物なんだが?」
「鬼ヶ島にいる時点で健康ってなに?美味しいの?って感じなので結構です」
そう。こいつは俺の妹だというのに、兄貴ととことん食い物の好みが違っている。それに意外と好き嫌いが多い。
トマトが苦手だから俺が日課のように飲み下すトマトジュースを滅法嫌うし、辛いものが食べられないからカレーは甘口しか食べようとしない。
辛さ最強のグリーンカレーとか食いたい時は、わざわざ二種類のカレーを用意しなければならないのだから面倒だ。
「さて、野菜たんまり持って帰ってきちまったからなぁ。今日の日替わりメニューは野菜カレーにでもするか。鬼子が絶対野菜炒め作り出すだろうから、あれに耐性ないお客のためにも別の物を用意しといてやらんとかわいそうだしな」
畑からオーガニックへ戻ってきた俺達は、さっそく今日提供する日替わりメニューの準備を始めた。
いくら野菜炒めが無料でも、鬼子が作った野菜炒めでは罰ゲームにしかならないからな。
辛さ最強のグリーンカレーですらあれには及ばない。
「いいですね、野菜カレー。賛成です」
「こらこら、何故トマトをしまおうとする?それ使おうと思って出しといたんだぞ」
……こいつ、冷蔵庫の奥底にトマト隠そうとするぐらいイヤなのか。
どれだけ奥の方にしまおうと、俺が取り出して使ったらなんの意味も無いのにな。
「カレーに必ずしもトマトは必要ないですしいいじゃないですか。私はトマト無しの野菜カレーが食べたいです」
「これから作るのはお客用であって、別におまえに食べさせるカレーを作るんじゃないんだがな。まかないにはトマト入れねぇでおいてやるから安心しろ」
「ほんとうですか?嘘ついたら生きのいい膨らんだハリセンボン飲ませますからね」
「そんなもん飲まされたら俺死んじまうよ!?そもそもあんなもんデカすぎて口に入らんわ!」
ハリセンボンってそっちかよ。
あの歌って「針千本」の方が正しいんじゃなかったか?
どちらにしても、ハリセンボンでも針千本だろうと飲んだら死ぬわな。
「うぅ……まんまと騙されました」
仕事終わりにみんなでまかないのカレーを食していたそんな中、タルトがため息をついてポテトサラダに恨めしそうな視線を送っていた。
理由は言わずもがな。すでにわかっている。
「はあ?なにがだよ」
「してやられたって言ったんです。まさかサラダの方にトマトをのせてくるなんて……」
「ミニトマトの一つくらい我慢して食え」
ラスクみたいなちっちゃな子が好き嫌い一つせず食べてるってのに、なんでタルトにはこうも嫌いなものが多いのか。
「私、サラダは遠慮しておきます。いらないです。カレーだけいただきます」
『それ嫌いなの?食べてあげようか』
「え!ユキミさんが代わりにサラダ食べてくれるんですか?ありがとうございます!」
テレパシーによるユキミの問いかけに、タルトはあからさまに喜んでみせる。
「ユキミ、甘やかすのはよくないぞ。ミニトマトすら碌に食えないんじゃ、こいつはいつまでもトマトが食えないまんまだ。このままだとトマトの美味に気付くこともなく虚しく死んでいくんだろうなぁ。ああ、嘆かわしいったらありゃしない。ま、鬼ヶ島にいる時点で死んでるけどね」
「別にずっと食べられないままでもいいんですけどね。いくら頑張ろうと好きになれる自信とか皆無ですし」
「いや、だめだ。食え食え。おまえが意地でも食わないなら無理矢理にでも食わす。嫌がって泣き出しても食わす!」
「そんな虐待みたいなことしたら鬼子さんに報告して、お兄ちゃんには金棒の餌食になってもらいます。それでもよければどうぞ」
「ぐっ……こいつめ、俺の弱みを悉く理解してやがる……」
ユキミはなぜか席に座らず、宙に浮いたまま食事をしている。
本人が言うにはこの態勢のほうが座るより楽なんだそうだ。
自分のぶんを早々に平らげたユキミは、タルトが躊躇しているポテトサラダにまで手をつけ、実に美味そうにむしゃむしゃと食べ始めた。
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