なんちゃって調理師と地獄のレストラン

SAKAHAKU

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第二十五話(管理する者達)

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「そういやさ、ユキミのやつも鬼子に協力して鬼ヶ島を管理してる一人なんだよな。ヒスイと同じで」

「そーだよ。ユキちゃんのスキルは役に立つから鬼ちゃんすっごーく信頼してるんだー」

「へぇ。どんなスキルを使うんだ?ほら、アイツっていつも部屋にこもってゲームばっかやってんじゃん。精力的に働いてるとこ見たことないからさ」

一度店を手伝ってもらった時は、幽霊らしい能力をふんだんに使っていたな。
料理を空中に浮かせて運んだりして、確かに便利なやつだと思ったわ。

「それはね、動く必要がないからなんだ。ユキちゃんの役割はこの地獄全体の監視で、そのスキルは部屋にこもりながらでも十分に発揮できる。何か異常を察知したときは、あたしと鬼ちゃんにテレパシーで詳細を知らせてくれるからほんとーに助かってるよ。確か、未来予知とかも使えたかな」

「なんかすげーな。雲の上でぐうたらしてる天使様とは大違いだ」

「あー……あの子はいっつも寝てるもんね。天国行きのゲートを守ってるって偉そうなこと言っても、ユキちゃんがそっちもカバーしちゃってるからあんまり役に立ってないのは困りものかな」

あいつだけ楽してるのはそこはかとなく納得できないな。
ヒスイが別の地獄からの脱獄者の説得役を務めているのは最近知った。
辛い環境に耐えられずに海を渡って鬼ヶ島に逃げてくる者がけっこうな数いるみたいで、そいつらが巨大なメガロドンに食われないようご丁寧に引き返すよう忠告している。
海に潜むメガロドンに食われた者は完全消滅し、永久に生まれ変わることはできないという。
……何とも恐ろしい話だ。
俺はそんなやばい場所で陽気に泳いでいたんだな。実際今もヒスイと一緒に海の上に浮かんでいるわけだが。
普段はヒスイが抑えているため滅多に海上には出てこないらしいが、海を無理に渡って鬼ヶ島に入ろうとする者は発見次第容赦なく飲み込んでしまう。
ヒスイ自体がか弱い女の子の見た目なためか、ナメられ全く抑止力にならず仕方なくと鬼子が配置した苦肉の策みたいだが、メガロドンの餌食になる結末は防げるものなら防いであげたいというヒスイの温情がひしひしと伝わってくるな。

「……やっぱりこちらにいましたか。探しましたよ」

タルトは乱れた呼吸を整え、優雅に遊んでいる兄を軽蔑の眼差しで見ていた。
それにはちゃんとした理由がある。

「お仕事の時間ほっぽって遊んでちゃダメだって再三注意してますよね。お兄ちゃんはあれですか、バカですか」

「バカじゃねぇよ。天才だよ。まあ、なんだ……忙中閑ありってやつかな」

「それ、全部私に押し付けてるから成り立ってるだけですよね!?偉そうに言わないでください」

水面にぷかぷかと浮かぶ浮き輪の上でぐだーっとしている兄。横のものを縦にもしない桃之介に妹は大層閉口していた。
かきいれどきのこの時間は決まって海に赴き人魚のヒスイと遊ぶ。これがすっかり日課となって定着してしまっているのだから困ったものだ。

「ご注文はグラタンライスですね。かしこまりました。あの、先に断っておきますが、たとえ不味くてもどうか穏便にお願いします。私が知る限りこのお料理はまだマシな方なんです」

桃之介を何とか連れ帰っていつもどおりに調理を任せる。
タルトは客の相手に徹した。
今日のメニューはグラタンライスとカレーライスの二択。
調理と言っても皿に平たく盛ったライスに生成スキルによって作り出したマカロニグラタンやレトルトカレーを注ぐだけの簡単な作業でしかない。
鬼子が本職の仕事で店に来られないときは、人手不足のため勝手ながらメニューを限定している。

「今日はお客の入りがいいな。こりゃ大変なわけだ」

「だから連れ戻しに海まで行ったんですよ。忙しい時にサボりに行くのは本当にやめてほしいです」

俺が遊びに行く前はガラガラで片手の指で数えられる人数しかいなかったんだけどな。
鬼ヶ島のやつらにカレーライス(レトルト)にグラタンライス(出来合いのものをよそっただけ)は割と人気のようだ。

「お兄ちゃん、グラタンライス三つご注文です」

「あいよ。すぐできるから待ってな」

なんてったってあっためてよそるだけだからな。
こんな簡単な作業はない。
いくら注文が立て続けに畳み掛けるように来ようが楽チンだ。
さすがに一人で注文取って料理の準備してレジやってってのはキツイわな。
今日は鬼子もいないみたいだし、それなりに混んでるし、現場に来てタルトの気持ちがやっとわかった。

「できたぞ。お客のとこへ運んでくれ」

「もうできたんですか。不真面目なお兄ちゃんでも居ればそれなりに使えますね」

「おまえ、自分で酷いこと言ってるって自覚あるか……?」

「これでも褒めてるんですよ。これだけ料理の提供が早いと私の方も楽ですからね」

まったく褒められてる気がしないんだが?
まるで妹から「お前、少しは使えるんだな」とか言われたような気分だったぞ。

「それよりまた注文が入りましたので、聞いてもらってもいいですか?」

「お、おう……任せとけ」

なんか納得できんが今は仕事中だからな。
タルトに軽く見られている感は否めないが、深く考えるのはよそう。
思えば、四六時中きつめの毒を吐かれている時点で呆れられているのは明白か。

「カレーライス四つにグラタンライス三つお願いします」

「四つに三つだな。了解」

「一つにつき三秒でお願いします」

「そりゃさすがに無理だろ……」

タルトがむちゃくちゃな要求をしてきやがったが、それなりにはその時間に合わせたつもりだ。
あまりにも簡単な作業故に、俺自ら注文品をホールに運ぶことすら可能に思える。
なんなら自分の昼飯用にも頂戴して、仕事の合間に食うのも容易い。

「ほらよ。カレー三つ、グラタン四つだ」

「私がお願いしたのはカレーライスが四つでグラタンライスが三つですが」

「ありゃ……そうだったっけか?数が逆になっちまったな」

「カレーライスが一つ足りなくてグラタンライスが一つ多いです」

「わかってるよ。足りない分ならすぐに用意するから安心しろ」


タルトに急かされるが、そこまで急ぐ必要もない。調理時間は対してかからないからな。
しばらくの間混雑は続いたが、それほど辛いと感じることもなく今日の営業は終了した。









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