なんちゃって調理師と地獄のレストラン

SAKAHAKU

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第三十七話(お仕事はゲームをやりながら)

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「今日はなんのゲームやってるんだ?」

「ぷよんぷよんだよ。ユッキーに貸してもらったんだー」

ユキミと引き合わせて以来、ラアルが門番の役目を放棄することはほぼ無くなった。
今現在も門の前に座り込んで、ゲームをプレイしながら仕事に精を出している。
それにしても、なんて楽な仕事なんだ。
いや、これはそもそもまじめに働いていると言えるのか?俺には遊んでいるようにしか見えない。オーガニックの仕事と交換してほしいわ。

「ゲームを楽しむのもけっこうだが、くれぐれも仕事のほうも頭に入れとけよ。つうか、そっちがメインだからな」

「わかってる!わかってるよー!いまいいところだから話しかけないで!」

すっかり邪魔者扱いだな。
ここ最近は仕事中に居眠りもしなくなったし、もう俺が様子を見に来る必要もないだろ。やり方はともあれしっかりやれてるよ。

「そう。ユキミとラファエルを会わせたのはあんたの作戦だったわけだ」

あの日、鬼子はフルスイングでラアルを手早く懲らしめ標的は透かさずユキミに変わった。
ユキミの方は鬼子の怒りが収まるまで行方をくらませていたようで、どうにか難を逃れたようだ。
こうなってくると、一人痛い目を見たラアルが哀れだな。

「作戦というかなんというか、単純にゲーマーのユキミにゲームでも借りてそれで遊ばせてりゃなんとかなると思ったんだ。ゲームってのは一度やり始めると切りのいいところを見つけるのが難しいくらいのめり込んじまうもんで中毒性があるからな。気付いたら一日中プレイしてたなんて話もザラだ。みんながみんな寝る時間を惜しんでまで遊び続けるくらいだから、ラアルもハマっちまえばそうなるんじゃないかって考えただけだ」

「ゲームについてはよくわからないけど、なんにしてもあたしが頼んだ依頼は達成されたってことね」

「案外大変だったんだぜ。法外の報酬の件、まさか忘れちゃいねぇだろうな」

「ええ。もちろん。報酬なら必ず用意しておくから安心して。約束はきっちり守るから」

鬼子はそれだけ言ってオーガニックを後にした。午後から仕事があるらしい。
どうやら法外の報酬とやらをくれるのは今日ではないみたいだ。

「法外の報酬っていったいなんなんでしょうね」

「さあな。俺にもさっぱりだ。何をくれるのやら……その日が来るまで気長に待つとするか」

「らっちゃんは何だと思いますか?」

「ごはんとおかし一年分がいい」

ごはんとお菓子なら俺が生成スキルでいくらでも出せるからあんまし貰っても嬉しくねぇなぁ。ラスクらしいと言えばらしいが。

ーーしかしそう考えると、

俺って欲しいと思った物を何だって生成スキルで出せちまうから、今のところ特に欲しい物って無いんだよな。
働かないで好きなだけぐうたらしてていいよって言われるのが一番いいかも……それだけは絶対に無いだろうが。

『鬼子もう行った……?』

ユキミがこそこそと店内の様子を伺いながらホールへ入ってきた。
あれから何日か経っているというのに、鬼子に金棒で打擲されないか不安のようだ。
鬼子だっていつまでも過ぎたことを気にしちゃいないだろうさ。
仕返しがそんなに怖いなら、わざわざ怒らせるような悪口言わなきゃよかったのに。こいつは後先考えないタイプっぽいからな。

「あいつなら仕事に向かったぞ。もういねぇよ」

『ふう……いつ襲われるか心配で落ち着いて眠れやしない』

「自分で蒔いた種だろ。仮にまだあいつが怒ってたとしたら、お前がゲームに現を抜かしてる最中にでも奇襲をかけてくるんじゃないか?」

幽霊相手でも金棒による攻撃が当たるんだからすごいよな。
そんなに痛いのが嫌なら常時姿を消してりゃいいのに。

『クスクス。奇襲をかけられても即座に透明化すればなにも問題ない。我最強』

「自分を最強とか言い切れる幽霊さんが、どうして鬼子相手に怯えて生活せにゃならんのかねぇ……」

『それよりお腹が空いた。調理師さん、何か作ってはくれんかね。数少ない腕の見せ所ですぞ』

「数少ないは余計だ。そういやお前に昼飯持ってくの忘れてたな。わりい」

「だからユキミさんホールまで来たんですね。お兄ちゃん、ごはん運ぶの忘れるとかサイテーです」

なるほどね。それでホールまでわざわざ催促しに来たってわけか。
来てみりゃ鬼子がいたもんで一旦は引き返したと……まあそんなところだな。
タルトの言う通り、忘れてた俺が一番悪いが。

「悪かったって言ってるだろ。さて、何を作ったものかな……」

ユキミのおかげでラアルの件が片付いたのは紛れもない事実だからな。
あの時は無理に付き合わせちまったし、せめてものお詫びに昼飯は好きなもんを食わしてやりたい。

「何が食いたいとかリクエストあるか?言われたとおりのものを極力作るよう努力はするぞ」

俺には作れない聞いたこともないような外国産の料理名とか言われても無理だが、大半のものは作れると思う。

『特にリクエストはない。お腹が満たされればそれで』

「なんだかえらく素っ気ない返答だな。なにが食いたいとか言ってくれたほうがこっちも楽なんだが」

『旦那。何をお客に出せばいいか吟味するのもプロの調理師の責務だと思いますぜ』

「お前の喋り方はほんとうに変わってんな。まあいいや。俺に任せるって抜かしやがったんだ、あとで後悔してもしらねーからな。ふざけて変なもん作るかもしんねーぞ」

『どんとこい。何を出されようと食べ切ってみせる』

そうかそうか。どうやら何を出されても文句はないみたいだな。
さあて、腹が満たされればそれでいいと豪語するユキミにはあれの実験台になってもらうとするか。


『こ、これはいったい……』

「お兄ちゃん……これって確か、未だ嘗て誰も口にしたことのないあのクレープ丼じゃないですか。どうしてこれがいま出てくるんです?」

「いや、ユキミがなんでもいいとか言うからこれでも出してみるかと」

「なんでもいいって言葉は、おいしく食べられるならなんでもいいって意味だと思います。本来食事の時間は美味しいごはんを味わって楽しむ時間ですよね。こんな不味そうなごはん出されたらユキミさんでも泣いてしまうかもしれませんよ?」

とは言うがこのクレープ丼、俺なりに改良した点が一つある。
いちごのクレープは以前となんら変わってはいないが、ごはんの方をただの白米から酢飯に変更してみたのだ。
ほら、いなり寿司とか玉子の寿司とか甘い寿司が何種類かあるだろ?
だったらただの白米よりかは酢飯の方がいちごやクリームの甘さが気にならなくなるんじゃないかってさ。
……とは言っても、今回も味見とかしてないし、美味しいか不味いかどうかはやっぱり未知数なんだけどな。

「食べ物で遊ぶお兄ちゃんはほんとうにダメダメですね。ユキミさん、代わりに私がお昼ごはんを作ります。なるべく早く用意するのでちょっとだけ待っていてください」

『クスクス……大丈夫。このクレープ丼、誰も食べたことないんでしょ。どんな味するのか無性に気になる』

「ユキミさん、ほんとうに食べるんですか。痩せ我慢ならやめておいたほうがいいですよ。こんなの誰が見たって正気とは思えませんから」

『いざ、勝負』

俺は目の当たりにした。
ユキミが何の躊躇いもなくクレープ丼を口にし味わい飲み込む瞬間を。
きっとここにいる全員が味の感想を待ち望んだだろう。
この奇怪な料理の挑戦者の第一声を。






























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