41 / 48
第四十一話(ラアルの職場体験二日目)
しおりを挟む
「今更ですが、ラアルさんのメイド服姿可愛らしいですね」
「ほんとうに今更だな。今日で二日目だぞ。昨日飽きるほど目に入ったわ」
しかし……メイド服が可愛いねぇ。
もしや、タルトもあれを着てみたいとか思っているのだろうか。こころなしかラアルを羨望の眼差しで見つめているような、そんな気もするぞ。
「なんですかお兄ちゃん……私の顔に何かついてます?長い間見つめられると非常に気持ちが悪いんですが」
「……いや、お前もあれが着てみたいのかと思ってな。なんなら俺が生成スキルでーー」
「作らなくて結構です。もしかしてお兄ちゃんメイドさん萌えですか?私に同じ格好をさせて目の保養にし尚且つ今晩のおかずにするつもりなんですね。汗顔の至りです」
こいつ、段々とユキミと発言が似てきてないか?
誰が妹なんておかずにするかよ。
「俺は妹萌えでもメイド萌えでもねぇんだがなぁ……」
てっきり一日だけで終わるものだと思っていたオーガニックの手伝いだが、ラアルは未だここにいた。
一応は天国へ繋がる門を守護しているこいつが、こんな場所で働いていて大丈夫なのだろうか。
ラアル本人にそこらへん聞いてみたところ、何やらこういうカラクリだったようだ。
「ぼくが三日間罰を受けてるあいだはユッキーが代わりに門の監視してくれるから問題無いんだってー。暴君がそー言ってたよ」
ユキミにとっては毎度のことで日課みたいなもんだから、何の手間にもならないだろうしな。納得納得。
いっそのこと門の監視係はユキミに兼任しちまってラアルは解雇でもよさそうだ。
「また懲りずに暴君とか言ってるけど、それ鬼子に聞かれたらまずいだろ。フルスイングされて痛い目にあうのはおまえなんだぞ。ほどほどにしとけよ」
「えー、だって今更なんて呼んだらいいかわっかんないんだもん。若作り鬼とか老害鬼とかでいいのかな?」
「めっちゃ悪口満載だな、それ。その通り過ぎて反論のしようがねぇが」
おっと、こんな賛同するような返ししてたら俺が鬼子に殴られかねない。
万が一やつの耳に入ったら、久しぶりにホームラン食らって海にドバーンだ。
最近はめっきり空を飛ばなくなったからなぁ。
鬼子を怒らせたって痛い思いを味わうだけで碌なことがないと学んだ成果かね。
「老害や若作りなんて呼んだら暴君以上にブチギレると思うぞ。ふつうに鬼子でいいだろ」
いや待てよ。この「鬼子」って呼び方も元々は俺があいつに付けたあだ名に過ぎないんだよな。
今じゃすっかり定着してタルトやユキミにまで同じように呼ばれてるが、別に不快感をあらわにしている様子は見られない。
案外呼ばれ慣れてしまえば、暴君と呼ばれようが鬼ババアと呼ばれようが耐性がついて平気になったりして……。
「鬼子かー。なんかフツーだなー。やっぱり暴君が一番しっくりこない?だって実際そのとおりだし」
「ふつうでいいんだよ。ふつうで」
「それよりももたろうくん、今日は何を作ってお客さんにてーきょーするの?」
いきなり話を変えやがった……。
鬼子を今後どう呼ぼうかなどラアルにとっては瑣末な問題だったってことだな。
そんなことより本日の仕事の内容のほうが気になると。
「そうだな。今日はコロッケバーガーでも作ろうと思ってたんだ。たまにはパン系でもいいかなって」
「コロッケバーガーかー。なんかおいしそーな響き。ぼくは何をお手伝いすればいいのかな?またホールってやつ……?」
ほんとうはもうホールとか任せたくないんだが、しばらく様子を見てみようと思う。これといって他に頼みたい仕事もないからな。
一日や二日じゃ上達しそうもないが、またラアルが手伝いに駆り出される可能性もある。
今後のためにも慣れさせておいて損はない筈だ……多分。
「そうだな。とりあえずはホールを引き続き頼む」
「うん!大船に乗ったつもりでまかせておいて!なんてったってぼくがいれば百人力なんだからさ!」
この自信たっぷりな発言からして、こいつは昨日起こした数々の失敗を屁とも思ってないんだろうなぁ……なんて楽観的なやつなんだ。
自信喪失してもおかしくないくらいのダメダメっぷりだったってのに。
さて、コロッケバーガーの作り方はいたって簡単だ。
生成スキルで作ったコロッケにソースをかけて千切りキャベツと一緒にバンズで挟むだけだからな。
これだったらアホでドジなラアルでも簡単にできる。それを考慮して今回はこれにした。ホールで失敗を繰り返すようなら厨房側を手伝ってもらおうというわけだ。
「よし、コロッケバーガーできたぞ。運んでくれ」
「はーい!ぼくが運ぶ!ぼくが運ぶー!」
「ラアルさん、やる気十分ですね」
「ああ。やる気だけはあるみたいだな。これでドジらなきゃ完璧なんだがーーって、またかよ!?」
これから客のところへ運ぼうって商品(コロッケバーガー)を、またも俺の目の前で堂々と食べ始めやがった。
昨日の失敗が何も生かされてやしねぇ。
「あ、そっか……毒味したらダメなんだっけ……ついうっかり」
「からあげは一つ食ったとしてもごまかしが効いたが、ハンバーガーはどう頑張ってもごまかしきれそうにないわなぁ……こりゃ作り直しか」
俺は半分近くまで減ったハンバーガーを観察し、これをどうしたら提供できるのかを考えていた。
「あたりまえです。食べかけをどうにか提供しようと考えてる時点でおかしいですよ。ちゃんと作り直してください」
「ちっ、しかたねーか……ラアル、毒味は禁止だ。二度とやるなよ。そもそも毒なんざ入ってねぇんだからやる必要がねぇ」
「ごめんなさーい……てへへ。今度こそ忘れないようにするよ~」
ほんとだろうな……また明日になったらすっかり忘れてんじゃねぇのか?
二度あることは三度あるとか言うしな。なんかいまいち信用できねぇ。
「コロッケバーガーお待たせしましたー」
「おお、ついにラアルがやり遂げたぞ」
「そうですね。やっとお客さんにお料理を届けられましたね」
昨日はアホみたいに何度も何度も転けたりひっくり返ったりしてたのにな……よもやわざとやってるんじゃないかと思うほどの回数だった。
「やったよ!ももたろーくん!ぼくお客さんに渡せたよ!コロッケバーガー渡せた!」
「こんなことで馬鹿みたいに喜んでんのは世界中探してもお前くらいのもんだろうな。だがここは素直にグッジョブと言っておこう。よくやった」
「やっぱりぼくって天才だね。凡人なら一ヶ月はかかるところを最短の二日でマスターしちゃうんだからさ。もっと褒めてもいいよ!ところでさ、ぐっじょぶってなに……?それって褒め言葉?」
「いや、お前は天才じゃない。究極のバカの間違いだ」
俺は、はっきりとラアルに対してそう言い放った。
客に注文品を届けるなんざそんな簡単なことが一日かかってもできねーやつ、これまでお前以外に見たことも聞いたこともねぇわ。
そして、度を過ぎたアニメばりのドジっ子を見るのもお前が始めてだ。
ドジっ子ってのは実際に目の当たりにすると惨め過ぎて引くもんなんだな。
昨日と今日の二日間で嫌という程痛感したぜ。
あんなの現実にいたらすぐにお払い箱だろうと。
「ほんとうに今更だな。今日で二日目だぞ。昨日飽きるほど目に入ったわ」
しかし……メイド服が可愛いねぇ。
もしや、タルトもあれを着てみたいとか思っているのだろうか。こころなしかラアルを羨望の眼差しで見つめているような、そんな気もするぞ。
「なんですかお兄ちゃん……私の顔に何かついてます?長い間見つめられると非常に気持ちが悪いんですが」
「……いや、お前もあれが着てみたいのかと思ってな。なんなら俺が生成スキルでーー」
「作らなくて結構です。もしかしてお兄ちゃんメイドさん萌えですか?私に同じ格好をさせて目の保養にし尚且つ今晩のおかずにするつもりなんですね。汗顔の至りです」
こいつ、段々とユキミと発言が似てきてないか?
誰が妹なんておかずにするかよ。
「俺は妹萌えでもメイド萌えでもねぇんだがなぁ……」
てっきり一日だけで終わるものだと思っていたオーガニックの手伝いだが、ラアルは未だここにいた。
一応は天国へ繋がる門を守護しているこいつが、こんな場所で働いていて大丈夫なのだろうか。
ラアル本人にそこらへん聞いてみたところ、何やらこういうカラクリだったようだ。
「ぼくが三日間罰を受けてるあいだはユッキーが代わりに門の監視してくれるから問題無いんだってー。暴君がそー言ってたよ」
ユキミにとっては毎度のことで日課みたいなもんだから、何の手間にもならないだろうしな。納得納得。
いっそのこと門の監視係はユキミに兼任しちまってラアルは解雇でもよさそうだ。
「また懲りずに暴君とか言ってるけど、それ鬼子に聞かれたらまずいだろ。フルスイングされて痛い目にあうのはおまえなんだぞ。ほどほどにしとけよ」
「えー、だって今更なんて呼んだらいいかわっかんないんだもん。若作り鬼とか老害鬼とかでいいのかな?」
「めっちゃ悪口満載だな、それ。その通り過ぎて反論のしようがねぇが」
おっと、こんな賛同するような返ししてたら俺が鬼子に殴られかねない。
万が一やつの耳に入ったら、久しぶりにホームラン食らって海にドバーンだ。
最近はめっきり空を飛ばなくなったからなぁ。
鬼子を怒らせたって痛い思いを味わうだけで碌なことがないと学んだ成果かね。
「老害や若作りなんて呼んだら暴君以上にブチギレると思うぞ。ふつうに鬼子でいいだろ」
いや待てよ。この「鬼子」って呼び方も元々は俺があいつに付けたあだ名に過ぎないんだよな。
今じゃすっかり定着してタルトやユキミにまで同じように呼ばれてるが、別に不快感をあらわにしている様子は見られない。
案外呼ばれ慣れてしまえば、暴君と呼ばれようが鬼ババアと呼ばれようが耐性がついて平気になったりして……。
「鬼子かー。なんかフツーだなー。やっぱり暴君が一番しっくりこない?だって実際そのとおりだし」
「ふつうでいいんだよ。ふつうで」
「それよりももたろうくん、今日は何を作ってお客さんにてーきょーするの?」
いきなり話を変えやがった……。
鬼子を今後どう呼ぼうかなどラアルにとっては瑣末な問題だったってことだな。
そんなことより本日の仕事の内容のほうが気になると。
「そうだな。今日はコロッケバーガーでも作ろうと思ってたんだ。たまにはパン系でもいいかなって」
「コロッケバーガーかー。なんかおいしそーな響き。ぼくは何をお手伝いすればいいのかな?またホールってやつ……?」
ほんとうはもうホールとか任せたくないんだが、しばらく様子を見てみようと思う。これといって他に頼みたい仕事もないからな。
一日や二日じゃ上達しそうもないが、またラアルが手伝いに駆り出される可能性もある。
今後のためにも慣れさせておいて損はない筈だ……多分。
「そうだな。とりあえずはホールを引き続き頼む」
「うん!大船に乗ったつもりでまかせておいて!なんてったってぼくがいれば百人力なんだからさ!」
この自信たっぷりな発言からして、こいつは昨日起こした数々の失敗を屁とも思ってないんだろうなぁ……なんて楽観的なやつなんだ。
自信喪失してもおかしくないくらいのダメダメっぷりだったってのに。
さて、コロッケバーガーの作り方はいたって簡単だ。
生成スキルで作ったコロッケにソースをかけて千切りキャベツと一緒にバンズで挟むだけだからな。
これだったらアホでドジなラアルでも簡単にできる。それを考慮して今回はこれにした。ホールで失敗を繰り返すようなら厨房側を手伝ってもらおうというわけだ。
「よし、コロッケバーガーできたぞ。運んでくれ」
「はーい!ぼくが運ぶ!ぼくが運ぶー!」
「ラアルさん、やる気十分ですね」
「ああ。やる気だけはあるみたいだな。これでドジらなきゃ完璧なんだがーーって、またかよ!?」
これから客のところへ運ぼうって商品(コロッケバーガー)を、またも俺の目の前で堂々と食べ始めやがった。
昨日の失敗が何も生かされてやしねぇ。
「あ、そっか……毒味したらダメなんだっけ……ついうっかり」
「からあげは一つ食ったとしてもごまかしが効いたが、ハンバーガーはどう頑張ってもごまかしきれそうにないわなぁ……こりゃ作り直しか」
俺は半分近くまで減ったハンバーガーを観察し、これをどうしたら提供できるのかを考えていた。
「あたりまえです。食べかけをどうにか提供しようと考えてる時点でおかしいですよ。ちゃんと作り直してください」
「ちっ、しかたねーか……ラアル、毒味は禁止だ。二度とやるなよ。そもそも毒なんざ入ってねぇんだからやる必要がねぇ」
「ごめんなさーい……てへへ。今度こそ忘れないようにするよ~」
ほんとだろうな……また明日になったらすっかり忘れてんじゃねぇのか?
二度あることは三度あるとか言うしな。なんかいまいち信用できねぇ。
「コロッケバーガーお待たせしましたー」
「おお、ついにラアルがやり遂げたぞ」
「そうですね。やっとお客さんにお料理を届けられましたね」
昨日はアホみたいに何度も何度も転けたりひっくり返ったりしてたのにな……よもやわざとやってるんじゃないかと思うほどの回数だった。
「やったよ!ももたろーくん!ぼくお客さんに渡せたよ!コロッケバーガー渡せた!」
「こんなことで馬鹿みたいに喜んでんのは世界中探してもお前くらいのもんだろうな。だがここは素直にグッジョブと言っておこう。よくやった」
「やっぱりぼくって天才だね。凡人なら一ヶ月はかかるところを最短の二日でマスターしちゃうんだからさ。もっと褒めてもいいよ!ところでさ、ぐっじょぶってなに……?それって褒め言葉?」
「いや、お前は天才じゃない。究極のバカの間違いだ」
俺は、はっきりとラアルに対してそう言い放った。
客に注文品を届けるなんざそんな簡単なことが一日かかってもできねーやつ、これまでお前以外に見たことも聞いたこともねぇわ。
そして、度を過ぎたアニメばりのドジっ子を見るのもお前が始めてだ。
ドジっ子ってのは実際に目の当たりにすると惨め過ぎて引くもんなんだな。
昨日と今日の二日間で嫌という程痛感したぜ。
あんなの現実にいたらすぐにお払い箱だろうと。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる