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第四十三話(変人の味覚)
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「ラアル、そこに大量のおにぎりがあるだろ。全部やる。持って帰れ」
「こんなにいっぱいもらっちゃっていいの?大っきな袋ぱんぱんに入ってるよ。20個近くありそう」
コンビニのおにぎりって、たまに無性に食べたくなる時あるよな。
トマトジュースをちびちび飲みながら食うと、これがまた美味い。
相変わらず、タルトには変人を見る視線を向けられるが……。
「今回は特別だ。手違いでちと生成し過ぎてな。ちなみに賞味期限は限界まで引き延ばしておいたから一週間はもつぞー」
オーガニックの手伝いという罰を受けて以来、ラアルがちょくちょく下界に降りてくるようになった。
休日になると決まってオーガニックに遊びに来てメシを集りやがるんだ。
今日もちょっと前に昼飯をごちそうしてやったばかりだったりする。
「ここで一つ食べてこー。ももたろーくん、どれが一番おいしーの?」
「コンビニのおにぎりで一番美味しいのはどれかって?そりゃ梅干しだな。あれが苦手ってやつは騙されたと思ってマヨネーズをかけて食ってみろ。中々美味いもんだぞ」
「私思うんですけど、調理師がマヨラーって色々と終わってませんか。食べる物なんでもつけて食べないと気が済まないんですよね。そんなの味覚も何もあったものじゃないです」
タルトが尤もなことを言うが、俺ってマヨラーだったのか?
自分じゃ自覚無いんだがな。まあ否定する気はない。
「俺はそこまで酷くないぞ。食べる物なんでもつけるやつは重症かもな」
「お兄ちゃん、コンビニのおにぎり全種類にマヨネーズかけて食べてました。十分に重症だと思います。高菜、こんぶ、シーチキン、明太子、赤飯。梅干しに限った話じゃないです」
「ねぇねぇ、たるたる。それなに食べてるの?」
今更ではあるが、ラアルがタルトを呼ぶ愛称が、俺にはタルタルソースの略称にしか聞こえなくて、笑いをこらえるのに必死だったりする。
「シュークリームです。急に食べたくなったのでさっきお兄ちゃんに生成してもらいました。クリームが甘くて美味しいですよ」
「おまえもいるか?ついでに親しい奴らにもやろうかと思って人数分生成しといたんだ」
「うん!ほしい!」
タルトが食べてるのと同じ物をラアルにくれてやった。
生成スキルは本当に便利だ。
食いたいと思った物を、いつでもすぐに簡単に生み出すことができる。
正直、このスキルを使うだけで商売は可能だが、楽しようとすると鬼子がうるさいからな。
「お兄ちゃんは食べないんですか?」
「シュークリームは皮が美味いんだ。どら焼きもからあげも皮だけでいい。皮だけ食うからクリームおまえにやるな」
最近、アメリカンドッグも皮が美味いんじゃないかと気付き始めた。俺にとって、中に隠れてるソーセージはおまけみたいな感じだな。
「かわかわうるさいです。変人のお兄ちゃんにシュークリームを食べる資格はありません」
「誰が変人だ!?俺は一応調理師で食のプロフェッショナルなんだぞ!」
調理師専門学校さえ卒業すりゃ誰だってなれちまうんだけどな。
それでも俺は一応調理師だ。これだけは譲れねぇ。
「イミフな料理を作る人がプロフェッショナルなんですね。色々と終わってます」
「はて……イミフな料理とはなんぞや」
「意味不明な料理の略です」
「意味不明な料理ってなにー?」
「食ってみたいか?」
「気にはなるかな」
ラアルははっきりと口にした。
気になると。
よし、ならばお見せしよう。俺が一度本気を出せばどんなすごい料理が生まれるのかを。
「ラアルさん。知らない方が身の為ですよ。あとできっと後悔しますから」
「たるたる大げさだよ。ももたろーくんの作る食べ物はおいしーしだいじょぶでしょ」
「お兄ちゃんの腕を絶賛するなんて、ラアルさんもヒスイさんと同じですか。やっぱり鬼ヶ島の人達の味覚っておかしーーなんでもないです」
「そこまで口走っちまったら、今更取り繕っても意味ないけどな」
ヒスイにラスクにユキミに続いて、まさかラアルまでもが俺の料理を認めてくれるとは。段々と味方が増えてきて嬉しい限りだ。
「というかお兄ちゃん、さっきからなにをにやにやしているんですか?度を過ぎる思い出し笑いは気持ち悪いだけですよ」
「いや、なんでもないから気にすんな……タルタルソースって美味いよね」
「美味しいですけど……それがどうかしましたか。もしかして晩御飯の話でしょうか。タルタルソースとエビフライの組み合わせは最強だと思います」
「ぷぷっ……!ダメだ、おまえがタルタルソースって言うとなんか笑っちまう……!」
タルトがタルタルソースと声を発した瞬間、俺はとうとう噴飯した。
こんなもん堪えきれるわけがねぇ。
「しつれーな!?どうせまた響きが似ているからとかそんなくだらない理由ですよね?にやにやしてたのがやっとわかりました!」
「うるさいタルトは放っておいて、意味不明な料理とやらを作り始めるとしますか」
「わーい!どんなのができあがるのかなー。楽しみー!」
「私のことは無視ですか、そうですか……もういいです。お兄ちゃんが名前のことで馬鹿にしてくるのなんて日常茶飯事ですからね。いちいち気にしてたらキリがありません」
昼飯を食ったばかりではあったが、追加でおにぎりやシュークリームを食ってるラアルならまだまだ余裕でいけるだろ。
これから俺が作るのは、タルタルソースを使った一品だ。
ふと思ったんだが、マヨラーやケチャラーの他にタルラーってのもあるんかな?
「ようし、まずは炊きたてほかほかご飯を茶碗にたんまりとよそってだな……」
「うんうん!それでそれで!」
「最後にあらかじめ用意しておいた大量のタルタルソースをぶっかけたら完成だ」
「…………え?これで完成…………?」
山のようにチューブから絞られたタルタルソースは、完全に真下の白米を覆い隠している。
この見た目と完成の早さには、アホなラアルでさえ驚愕するレベルだった。
「ん?おう。これで完成だ。名付けてタルタルソース丼ってところか」
まんまだが、それ以外に名付けようがない。
眼に映るのはタルタルソースのみという奇っ怪な料理だからな。
「タルタルソース丼……これがイミフな料理……なんか、すごい見た目……」
「うわ……これは酷い……いえ、いつもだいたいが酷い料理なんですが、今回はそれらを遥かに凌駕して酷い料理です」
「これがまた美味いんだよなー」
食ったことねぇからわからんけど、タルタルソース大好きな奴ならきっと美味いって言うんだろうなぁ。
「またまたご冗談を……もはや料理とは呼べないようなレベルですよ。これはさすがに怖いもの知らずなラアルさんもドン引き……」
「ほんとだー!これおいしー!」
「でもなかったみたいですね……」
タルトは確信した。
鬼子にヒスイと続いて今度はラアル。
やっぱり鬼ヶ島の管理者達の味覚は変わっているのだと。
「こんなにいっぱいもらっちゃっていいの?大っきな袋ぱんぱんに入ってるよ。20個近くありそう」
コンビニのおにぎりって、たまに無性に食べたくなる時あるよな。
トマトジュースをちびちび飲みながら食うと、これがまた美味い。
相変わらず、タルトには変人を見る視線を向けられるが……。
「今回は特別だ。手違いでちと生成し過ぎてな。ちなみに賞味期限は限界まで引き延ばしておいたから一週間はもつぞー」
オーガニックの手伝いという罰を受けて以来、ラアルがちょくちょく下界に降りてくるようになった。
休日になると決まってオーガニックに遊びに来てメシを集りやがるんだ。
今日もちょっと前に昼飯をごちそうしてやったばかりだったりする。
「ここで一つ食べてこー。ももたろーくん、どれが一番おいしーの?」
「コンビニのおにぎりで一番美味しいのはどれかって?そりゃ梅干しだな。あれが苦手ってやつは騙されたと思ってマヨネーズをかけて食ってみろ。中々美味いもんだぞ」
「私思うんですけど、調理師がマヨラーって色々と終わってませんか。食べる物なんでもつけて食べないと気が済まないんですよね。そんなの味覚も何もあったものじゃないです」
タルトが尤もなことを言うが、俺ってマヨラーだったのか?
自分じゃ自覚無いんだがな。まあ否定する気はない。
「俺はそこまで酷くないぞ。食べる物なんでもつけるやつは重症かもな」
「お兄ちゃん、コンビニのおにぎり全種類にマヨネーズかけて食べてました。十分に重症だと思います。高菜、こんぶ、シーチキン、明太子、赤飯。梅干しに限った話じゃないです」
「ねぇねぇ、たるたる。それなに食べてるの?」
今更ではあるが、ラアルがタルトを呼ぶ愛称が、俺にはタルタルソースの略称にしか聞こえなくて、笑いをこらえるのに必死だったりする。
「シュークリームです。急に食べたくなったのでさっきお兄ちゃんに生成してもらいました。クリームが甘くて美味しいですよ」
「おまえもいるか?ついでに親しい奴らにもやろうかと思って人数分生成しといたんだ」
「うん!ほしい!」
タルトが食べてるのと同じ物をラアルにくれてやった。
生成スキルは本当に便利だ。
食いたいと思った物を、いつでもすぐに簡単に生み出すことができる。
正直、このスキルを使うだけで商売は可能だが、楽しようとすると鬼子がうるさいからな。
「お兄ちゃんは食べないんですか?」
「シュークリームは皮が美味いんだ。どら焼きもからあげも皮だけでいい。皮だけ食うからクリームおまえにやるな」
最近、アメリカンドッグも皮が美味いんじゃないかと気付き始めた。俺にとって、中に隠れてるソーセージはおまけみたいな感じだな。
「かわかわうるさいです。変人のお兄ちゃんにシュークリームを食べる資格はありません」
「誰が変人だ!?俺は一応調理師で食のプロフェッショナルなんだぞ!」
調理師専門学校さえ卒業すりゃ誰だってなれちまうんだけどな。
それでも俺は一応調理師だ。これだけは譲れねぇ。
「イミフな料理を作る人がプロフェッショナルなんですね。色々と終わってます」
「はて……イミフな料理とはなんぞや」
「意味不明な料理の略です」
「意味不明な料理ってなにー?」
「食ってみたいか?」
「気にはなるかな」
ラアルははっきりと口にした。
気になると。
よし、ならばお見せしよう。俺が一度本気を出せばどんなすごい料理が生まれるのかを。
「ラアルさん。知らない方が身の為ですよ。あとできっと後悔しますから」
「たるたる大げさだよ。ももたろーくんの作る食べ物はおいしーしだいじょぶでしょ」
「お兄ちゃんの腕を絶賛するなんて、ラアルさんもヒスイさんと同じですか。やっぱり鬼ヶ島の人達の味覚っておかしーーなんでもないです」
「そこまで口走っちまったら、今更取り繕っても意味ないけどな」
ヒスイにラスクにユキミに続いて、まさかラアルまでもが俺の料理を認めてくれるとは。段々と味方が増えてきて嬉しい限りだ。
「というかお兄ちゃん、さっきからなにをにやにやしているんですか?度を過ぎる思い出し笑いは気持ち悪いだけですよ」
「いや、なんでもないから気にすんな……タルタルソースって美味いよね」
「美味しいですけど……それがどうかしましたか。もしかして晩御飯の話でしょうか。タルタルソースとエビフライの組み合わせは最強だと思います」
「ぷぷっ……!ダメだ、おまえがタルタルソースって言うとなんか笑っちまう……!」
タルトがタルタルソースと声を発した瞬間、俺はとうとう噴飯した。
こんなもん堪えきれるわけがねぇ。
「しつれーな!?どうせまた響きが似ているからとかそんなくだらない理由ですよね?にやにやしてたのがやっとわかりました!」
「うるさいタルトは放っておいて、意味不明な料理とやらを作り始めるとしますか」
「わーい!どんなのができあがるのかなー。楽しみー!」
「私のことは無視ですか、そうですか……もういいです。お兄ちゃんが名前のことで馬鹿にしてくるのなんて日常茶飯事ですからね。いちいち気にしてたらキリがありません」
昼飯を食ったばかりではあったが、追加でおにぎりやシュークリームを食ってるラアルならまだまだ余裕でいけるだろ。
これから俺が作るのは、タルタルソースを使った一品だ。
ふと思ったんだが、マヨラーやケチャラーの他にタルラーってのもあるんかな?
「ようし、まずは炊きたてほかほかご飯を茶碗にたんまりとよそってだな……」
「うんうん!それでそれで!」
「最後にあらかじめ用意しておいた大量のタルタルソースをぶっかけたら完成だ」
「…………え?これで完成…………?」
山のようにチューブから絞られたタルタルソースは、完全に真下の白米を覆い隠している。
この見た目と完成の早さには、アホなラアルでさえ驚愕するレベルだった。
「ん?おう。これで完成だ。名付けてタルタルソース丼ってところか」
まんまだが、それ以外に名付けようがない。
眼に映るのはタルタルソースのみという奇っ怪な料理だからな。
「タルタルソース丼……これがイミフな料理……なんか、すごい見た目……」
「うわ……これは酷い……いえ、いつもだいたいが酷い料理なんですが、今回はそれらを遥かに凌駕して酷い料理です」
「これがまた美味いんだよなー」
食ったことねぇからわからんけど、タルタルソース大好きな奴ならきっと美味いって言うんだろうなぁ。
「またまたご冗談を……もはや料理とは呼べないようなレベルですよ。これはさすがに怖いもの知らずなラアルさんもドン引き……」
「ほんとだー!これおいしー!」
「でもなかったみたいですね……」
タルトは確信した。
鬼子にヒスイと続いて今度はラアル。
やっぱり鬼ヶ島の管理者達の味覚は変わっているのだと。
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