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第十二話(奉仕作業。カレー専門店)
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(さて、午後に俺と慈愛が向かう奉仕作業場所はっと……)
一騒動あった後に十分間の短い休憩時間となって、席から立ち上がり奉仕作業先が記載されているであろうホワイトボードに目を通す。
(ほうほう。カレー専門店ね……)
どんな仕事をするにしても小学生の慈愛に任せられる作業など限られてくるし、なるべくなら一人分の体力だけでも一日維持できるような内容の仕事がいいのだが……、カレー店だと何を手伝って貰えるだろう?
年齢的にまだ接客は難しそうだから、注文品を客の座るテーブルに運ぶことくらいか。
一人ボードの前で考え込んでいたら慈愛が隣にやって来て、
「今日のお仕事は何ですか?」
「カレー専門店みたいだな。ちなみにつるぎとデブは配達業。けっ、デブの癖に楽しやがって」
飲食店や清掃業より配達関係の仕事の方が日影は気楽だと思っている。
ナビを見ながらお届け先に荷物を運ぶだけだしな。
トラックに荷物の積み込みとその重さには多少なりとも苦戦はさせられるが、他の社員と関わり合う時間が少ない分面倒ごとに巻き込まれるようなことも特にない。
「お兄ちゃんは配達の仕事の方が良かったんですか?というより自動車免許持ってましたっけ?」
「此処ではそういう奉仕作業に必要不可欠な資格は取らせてくれることになってんだよ。ほら、これが証拠さ」
そう言って日影は取得したばかりの運転免許カードを自慢気に手渡した。
俺はまだ一つしか取得していないが、資格を二つより多く手に入れた囚人は何人もいて、あのデブちゃんは運転免許の他にフォークリフト、調理師免許まで所持している。
日影より一年も長く此処に居れば、それくらい所持していても当然と言えば当然のことだが、その中でもずば抜けて凄いのはあのルナだ。
あいつは短期間で介護士やら保育士。調理師に気象予報士。最後には教員免許まで揃えてしまった。
あんな化け物クラスの頭脳を持った奴とペアだったとか信じられねぇんだけど。俺のよく知るあいつは何もない所で転ぶようなぽんこつ系外国人何ですけど。
「おお……免許証の写真はよく悪人風に映ると聞きますが、あの噂は本当だったんですね。囚人服を着ているので悪い人にしか見えません」
「ま、実際悪人ですからね。俺は」
ロリコンと間違えられて捕まった紛れもない囚人野郎だ。
心中で自分を自虐し暗い気持ちになっていた日影へ、慈愛はフォローの言葉をかける。
「大丈夫です。お兄ちゃんが悪人じゃないことを私は知っています。世間が何と言おうと、お兄ちゃんはお腹を空かせて泣いていた女の子にご飯を食べさせてくれた正義のヒーローです」
慈愛の慰めの言葉はいつも俺を絶望の淵から救い出してくれる。
こんな優しい妹がずっと欲しかった。
「ありがとよ。そろそろ席に戻ろうぜ。刑務作業再開の時間だ」
初めて会ったあの日同様に小さな手を引いて歩き出す。捕まったことを後悔していながらも無意識にこんな行為をしてしまっている自分に、一度出所してもまた同じような容疑で捕まることになりそうだと少しだけ不安に思った。
人助けをしたつもりが誤認逮捕されるとか二度と御免だぞ。
「デブちゃんよぉ。お前調理師の免許持ってんだよな。俺等と午後の作業先変わってくれよ。デブ何だからカレー大好物だよな。デブにとってカレーは飲み物何だろ」
日影の脳内はカレーが大好きと噂の戦隊物のイエローで一杯だった。
こいつがヒーローに慣れるとしたらあれくらいしか思いつかない。
「てめぇ……デブがどいつもこいつもカレー大好きだと思うなよ。そりゃただの偏見だ」
デブちゃんは「デブ」という言葉に敏感に反応し、眉を吊り上げた。
本当に短気な奴だといつも思う。
「我慢は体に毒だぜ。本当は変わりたくてうずうずしてんだろ」
「変わってあげたらいいじゃない。おデブちゃんは料理人目指してるだけあって料理の腕だけは一流でしょ」
「だけって言うなよ……まあな」
つるぎが吐いた毒の混ざった褒め言葉に、満更でもなさそうに首肯する。
その通りで、本気でデブちゃんはプロの調理人を目指しているのだ。きっと此処を出社したらその道に進んでいくんだろうな。
どうせまかない目当てだろ。食い意地の張った男だ。
「別に俺は変わってやってもいいんだけどよ。本当にそれでいいのか?」
此処では両者が同意し認めていれば、奉仕作業先の交換は可能だ。別に禁止はされていない。
何処の職場に向かおうが、作業をサボっている訳ではないからな。
「何遠慮してんだよ。気持ち悪いな。俺等の仲だろ?」
何を気にしているのかは、デブの視線の先を追ってみたらすぐに理解した。
「カレー……楽しみだな……」
ーー心ここに在らず。
慈愛の呟きがカレー店に行ってみたい。美味しいカレーが食べたいと俺に訴えているように感じた。
この子は刑務所に入る以前にひもじい生活を送ってきたせいか、食事時は毎回嬉しそうに、幸せそうに食べるんだ。
ーー他の誰よりも、目を輝かせて。
専門店のカレーはおそらく、というか絶対に刑務所で提供されるカレーより遥かに美味いだろう。飲食店で働く日は高い確率で賄いを食べさせて貰えることは今までの経験上すでに分かっている。慈愛が食べたいって楽しみにしてるなら、仕事を態々トレードする必要はないか。
とまあ、そういうことで俺と慈愛は目的地を変更しないでカレー店へと向かった。
「噂には聞いていましたが……玉ねぎって切ると本当に涙が出るんですね。身を持って知りました。目が痛いです……」
「が、頑張れ慈愛。俺もだ」
最初こそ慈愛はホールで席の案内やお冷や出し、オーダーを取っていたものの、昼時を過ぎて客が少なくなってきた今は、俺が厨房で一人黙々と進めていた仕込み作業を手伝ってくれている。
開始から何十個の玉ねぎを切っただろう。目が痛過ぎて数えている余裕などない。
この後じゃがいもと人参も切らにゃならんと考えると辛過ぎてマジもんの涙が出そうだ。
「慈愛、目が痛いならお前はそっちの人参さん切ってていいぞ。残りの玉ねぎさんは俺に任せろ」
「いえ……平気です。それに、お兄ちゃんの方は大丈夫何ですか?目が赤いです。充血してます。見ているだけで痛そうです」
目の痛さにはもう慣れた。今更何個切ろうがどうせ同じだ。
アホみたいに大きなボールの中に大量に入っていた玉ねぎは見た限りじゃ三十個から四十個の山盛りに積まれていたが、慈愛の手助けもあって残りは六個だ。どうやらこの店の店長は木ノ下日影を失明させたいらしい。
「お前まで目が逝かれちゃ可哀想だからな。残りは一人で何とかする」
「二人で切れば一人が切るのは三個ずつです。一緒に頑張ります」
目が痛いのを我慢して俺を手伝ってくれる小さな少女を眺めて今更ながらに思う。
この子はまだ小学生だってのに、遠慮ばかりするよく出来た子だなぁと。
俺が同じくらいの歳の頃とはまるで正反対だ。俺だったら迷うことなく歳上の好意に甘えているぞ。
「木ノ下、デリバリーの注文が入った。配達頼む」
免許持ちだと口走って墓穴を掘った。
店長の男に配達を頼まれた日影は、ようやく全ての野菜を切り終わって一息付けると思っていたのに、地図と出前のカレーを持たされ休憩も取らずに外に出なくちゃならなくなった。
バイトの少年に雑用ばかりを押し付け奴隷のように使う。これが飲食店の裏の顔と断言しても間違っちゃいない。経験上痛いほど思い知らされた結果だ。
「へいへい……」
地図みて行けと簡単に言ってくれるが、普通分からない内はベテランが同伴してくれるんじゃねぇのかよ。
「あれ…………どこだ。此処?」
カレーをお客に届けて来た帰り道、慣れない道に暫くの間彷徨うことになったのは言うまでもない。
ようやく店に辿り着いた時間はその日の奉仕作業終了時刻だった。
**********************
「慈愛、カレーは食べさせて貰えたのか?」
帰りの護送車の薄暗い車内の中、日影は慈愛にそんなことを尋ねていた。
「はい。美味しかったです。お兄ちゃんがお仕事中に頂きました……えっと、その、ごめんなさい」
「いいよ。今回は慈愛の為にあそこに行ったんだから」
ーー良かった。
慈愛に賄いを食べさせてなかったら、カレー店の店長の顔面をぶん殴ってやろうかと考えていたとこだ。
一騒動あった後に十分間の短い休憩時間となって、席から立ち上がり奉仕作業先が記載されているであろうホワイトボードに目を通す。
(ほうほう。カレー専門店ね……)
どんな仕事をするにしても小学生の慈愛に任せられる作業など限られてくるし、なるべくなら一人分の体力だけでも一日維持できるような内容の仕事がいいのだが……、カレー店だと何を手伝って貰えるだろう?
年齢的にまだ接客は難しそうだから、注文品を客の座るテーブルに運ぶことくらいか。
一人ボードの前で考え込んでいたら慈愛が隣にやって来て、
「今日のお仕事は何ですか?」
「カレー専門店みたいだな。ちなみにつるぎとデブは配達業。けっ、デブの癖に楽しやがって」
飲食店や清掃業より配達関係の仕事の方が日影は気楽だと思っている。
ナビを見ながらお届け先に荷物を運ぶだけだしな。
トラックに荷物の積み込みとその重さには多少なりとも苦戦はさせられるが、他の社員と関わり合う時間が少ない分面倒ごとに巻き込まれるようなことも特にない。
「お兄ちゃんは配達の仕事の方が良かったんですか?というより自動車免許持ってましたっけ?」
「此処ではそういう奉仕作業に必要不可欠な資格は取らせてくれることになってんだよ。ほら、これが証拠さ」
そう言って日影は取得したばかりの運転免許カードを自慢気に手渡した。
俺はまだ一つしか取得していないが、資格を二つより多く手に入れた囚人は何人もいて、あのデブちゃんは運転免許の他にフォークリフト、調理師免許まで所持している。
日影より一年も長く此処に居れば、それくらい所持していても当然と言えば当然のことだが、その中でもずば抜けて凄いのはあのルナだ。
あいつは短期間で介護士やら保育士。調理師に気象予報士。最後には教員免許まで揃えてしまった。
あんな化け物クラスの頭脳を持った奴とペアだったとか信じられねぇんだけど。俺のよく知るあいつは何もない所で転ぶようなぽんこつ系外国人何ですけど。
「おお……免許証の写真はよく悪人風に映ると聞きますが、あの噂は本当だったんですね。囚人服を着ているので悪い人にしか見えません」
「ま、実際悪人ですからね。俺は」
ロリコンと間違えられて捕まった紛れもない囚人野郎だ。
心中で自分を自虐し暗い気持ちになっていた日影へ、慈愛はフォローの言葉をかける。
「大丈夫です。お兄ちゃんが悪人じゃないことを私は知っています。世間が何と言おうと、お兄ちゃんはお腹を空かせて泣いていた女の子にご飯を食べさせてくれた正義のヒーローです」
慈愛の慰めの言葉はいつも俺を絶望の淵から救い出してくれる。
こんな優しい妹がずっと欲しかった。
「ありがとよ。そろそろ席に戻ろうぜ。刑務作業再開の時間だ」
初めて会ったあの日同様に小さな手を引いて歩き出す。捕まったことを後悔していながらも無意識にこんな行為をしてしまっている自分に、一度出所してもまた同じような容疑で捕まることになりそうだと少しだけ不安に思った。
人助けをしたつもりが誤認逮捕されるとか二度と御免だぞ。
「デブちゃんよぉ。お前調理師の免許持ってんだよな。俺等と午後の作業先変わってくれよ。デブ何だからカレー大好物だよな。デブにとってカレーは飲み物何だろ」
日影の脳内はカレーが大好きと噂の戦隊物のイエローで一杯だった。
こいつがヒーローに慣れるとしたらあれくらいしか思いつかない。
「てめぇ……デブがどいつもこいつもカレー大好きだと思うなよ。そりゃただの偏見だ」
デブちゃんは「デブ」という言葉に敏感に反応し、眉を吊り上げた。
本当に短気な奴だといつも思う。
「我慢は体に毒だぜ。本当は変わりたくてうずうずしてんだろ」
「変わってあげたらいいじゃない。おデブちゃんは料理人目指してるだけあって料理の腕だけは一流でしょ」
「だけって言うなよ……まあな」
つるぎが吐いた毒の混ざった褒め言葉に、満更でもなさそうに首肯する。
その通りで、本気でデブちゃんはプロの調理人を目指しているのだ。きっと此処を出社したらその道に進んでいくんだろうな。
どうせまかない目当てだろ。食い意地の張った男だ。
「別に俺は変わってやってもいいんだけどよ。本当にそれでいいのか?」
此処では両者が同意し認めていれば、奉仕作業先の交換は可能だ。別に禁止はされていない。
何処の職場に向かおうが、作業をサボっている訳ではないからな。
「何遠慮してんだよ。気持ち悪いな。俺等の仲だろ?」
何を気にしているのかは、デブの視線の先を追ってみたらすぐに理解した。
「カレー……楽しみだな……」
ーー心ここに在らず。
慈愛の呟きがカレー店に行ってみたい。美味しいカレーが食べたいと俺に訴えているように感じた。
この子は刑務所に入る以前にひもじい生活を送ってきたせいか、食事時は毎回嬉しそうに、幸せそうに食べるんだ。
ーー他の誰よりも、目を輝かせて。
専門店のカレーはおそらく、というか絶対に刑務所で提供されるカレーより遥かに美味いだろう。飲食店で働く日は高い確率で賄いを食べさせて貰えることは今までの経験上すでに分かっている。慈愛が食べたいって楽しみにしてるなら、仕事を態々トレードする必要はないか。
とまあ、そういうことで俺と慈愛は目的地を変更しないでカレー店へと向かった。
「噂には聞いていましたが……玉ねぎって切ると本当に涙が出るんですね。身を持って知りました。目が痛いです……」
「が、頑張れ慈愛。俺もだ」
最初こそ慈愛はホールで席の案内やお冷や出し、オーダーを取っていたものの、昼時を過ぎて客が少なくなってきた今は、俺が厨房で一人黙々と進めていた仕込み作業を手伝ってくれている。
開始から何十個の玉ねぎを切っただろう。目が痛過ぎて数えている余裕などない。
この後じゃがいもと人参も切らにゃならんと考えると辛過ぎてマジもんの涙が出そうだ。
「慈愛、目が痛いならお前はそっちの人参さん切ってていいぞ。残りの玉ねぎさんは俺に任せろ」
「いえ……平気です。それに、お兄ちゃんの方は大丈夫何ですか?目が赤いです。充血してます。見ているだけで痛そうです」
目の痛さにはもう慣れた。今更何個切ろうがどうせ同じだ。
アホみたいに大きなボールの中に大量に入っていた玉ねぎは見た限りじゃ三十個から四十個の山盛りに積まれていたが、慈愛の手助けもあって残りは六個だ。どうやらこの店の店長は木ノ下日影を失明させたいらしい。
「お前まで目が逝かれちゃ可哀想だからな。残りは一人で何とかする」
「二人で切れば一人が切るのは三個ずつです。一緒に頑張ります」
目が痛いのを我慢して俺を手伝ってくれる小さな少女を眺めて今更ながらに思う。
この子はまだ小学生だってのに、遠慮ばかりするよく出来た子だなぁと。
俺が同じくらいの歳の頃とはまるで正反対だ。俺だったら迷うことなく歳上の好意に甘えているぞ。
「木ノ下、デリバリーの注文が入った。配達頼む」
免許持ちだと口走って墓穴を掘った。
店長の男に配達を頼まれた日影は、ようやく全ての野菜を切り終わって一息付けると思っていたのに、地図と出前のカレーを持たされ休憩も取らずに外に出なくちゃならなくなった。
バイトの少年に雑用ばかりを押し付け奴隷のように使う。これが飲食店の裏の顔と断言しても間違っちゃいない。経験上痛いほど思い知らされた結果だ。
「へいへい……」
地図みて行けと簡単に言ってくれるが、普通分からない内はベテランが同伴してくれるんじゃねぇのかよ。
「あれ…………どこだ。此処?」
カレーをお客に届けて来た帰り道、慣れない道に暫くの間彷徨うことになったのは言うまでもない。
ようやく店に辿り着いた時間はその日の奉仕作業終了時刻だった。
**********************
「慈愛、カレーは食べさせて貰えたのか?」
帰りの護送車の薄暗い車内の中、日影は慈愛にそんなことを尋ねていた。
「はい。美味しかったです。お兄ちゃんがお仕事中に頂きました……えっと、その、ごめんなさい」
「いいよ。今回は慈愛の為にあそこに行ったんだから」
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